キオクシアの2026年4月~6月の最終利益は、前年同期間の46倍となる8421億円でした。2026年7月~9月の最終利益は同31倍の1兆2700億円になるとの見通しも発表しています。
半導体産業において後れを取っていたキオクシアは、なぜこれほどの高収益企業へと駆け上がることができたのでしょうか。
国内の製造業としては異例の営業利益率70%を突破
キオクシアの2026年4月~6月における売上収益は前年同期間比で約52倍の1兆7671億円、営業利益は同28.3倍の1兆2700億円でした。営業利益率は実に72%。IT企業で70%を超えるケースはあるものの、製造業でここまでの高収益体質は稀です。

※業績推移データより筆者作成
世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCでも営業利益率は60%程度。キオクシアの稼ぐ力は60%台後半のNVIDIAと肩を並べています。NVIDIAはAI領域で世界をリードしている半導体企業です。
キオクシアの売上収益の66%はSSD&ストレージ事業が占めています。特に需要が大きいのがデータセンター・エンタープライズ向けのもの。事業の売上全体の6割超を占めています。AIサーバー向け半導体の過熱感が高まっているのです。
コンピューターの半導体にはキオクシアが得意とする「NAND(ナンド)」と、サムスン電子とSKハイニックスなど韓国勢が高シェアを握る「DRAM(ディーラム)」の2種類があります。
DRAMは一時的なデータの保管場所のことで、主に短期的な情報を記憶する役割を担います。一般的に揮発性メモリなどとも呼ばれており、電源を切ると記憶したデータが消去されてしまいます。
サムスンなどの海外メーカーは利益率の高いDRAMの開発・生産に注力するようになりました。キオクシアも高密度・低消費電力3D DRAMの実用化に向けた研究開発を進めていたものの、海外勢に先を越されていました。
大量のデータを保存するのが得意なNAND
サムスンなどの海外メーカーは、AI向けの半導体「HBM」の開発に注力するようになりました。HBMはAIの高速演算に不可欠な高性能DRAMで、複数のチップを縦に積み重ねた3D積層構造をしています。従来の平面メモリよりもはるかに高い帯域幅(データ信号の数)を持たせました。
HBMの需要は急増、需給バランスが崩れて価格が高騰しました。しかも、HBMはDRAMを何層にも積み重ねる構造をしていたため、DRAMそのものの価格も上昇しました。
また、AIの用途は従来の学習から推論へとシフト。メモリの容量や動作速度が注目されるようになりました。DRAM価格上昇に合わせてNVIDIAがメモリ構成を見直すなど、NANDがAI領域の主役に躍り出ることとなりました。
AIの普及は半導体の常識を塗り替えてきました。PCやスマートフォンが注目されていた時代、コンピューターの頭脳はCPUが一般的でした。CPUが司令塔となって各部に指示を出していたのです。
NVIDIAのGPUはゲーム機などに用いられるのが一般的で、画像処理をするのに最適な装置でした。しかし、大量のデータ処理をするAI時代において、CPUは処理をするのに時間がかかります。大量の行列演算ができるGPUに注目が集まるようになったのです。
当初はあまり注目されていなかったNANDも似ています。キオクシアは2024年12月9日にプライム市場に上場していますが、初値は1440円。公募価格1455円を下回っての上場でした。当時は注目されていなかったのです。
しかし、2026年6月12日にキオクシア時価総額が44.3兆円となって国内トップに立ちました。
熱を帯びるテック大手のAI投資
キオクシアの好業績をけん引しているのは、NANDの市場価格。需給状況によって価格が変動しやすい点には注意が必要でしょう。
台湾の市場調査会社TrendForceによると、2026年7月~9月のNAND型フラッシュメモリの価格は前四半期比で10~15%上昇する見込み。
堅調に価格は上昇しているものの、キオクシアが発表した決算と同じ2026年4月~6月は価格が前四半期比で55~60%も上がっていました。
AI領域をけん引するマイクロソフト、アマゾン、メタ、アルファベットのテック大手は事業投資の手を緩めていません。ゴールドマン・サックスは、テック大手の設備投資額の合計が2030年までに5.3兆ドル(1ドル150円換算で795兆円)になると予想しています。
投資額は途方もない規模に拡大しており、データセンターに必要な半導体産業の更なる盛り上がりに期待ができます。
一方、テック大手の債務が膨らんでいるのも事実。これまでは手持ち資金の範囲内で設備投資をしていたものの、足元では外部から資金を調達するようになっています。また、リース契約で貸借対照表に計上されていない見えない債務も積み上がっていると見られています。
もし、各社が身の丈に合わない投資をしており、それが成長に結びつかなかった場合、AIバブルが崩壊する可能性もあるでしょう。
特にフェイスブックの運営会社であるメタはクラウドサービスを持っていません。これはマイクロソフトやアマゾン、アルファベットと明確に異なる点です。
テック大手の過熱する投資合戦が、半導体価格を押し上げている面もあるでしょう。その競争に急ブレーキがかかると、需給バランスが崩れることもあり得ます。
文/不破聡




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