恋愛成就を願って結ぶミサンガ。放課後に友達と囲んだこっくりさん。幸運が訪れると噂された待ち受け画像や、開けば不幸になると拡散されたチェーンメール──。
時代は変わっても、「願いをかなえたい」「少しだけ運を味方につけたい」という思いは、さまざまな〝お呪い(おまじない)〟を生み出してきた。
そんな昭和・平成のおまじないから、令和のSNS時代に生まれたものまで、100種類のお呪いを紹介する体験型展示『超ヤバイお呪い展』が、7月25日(土)から8月24日(月)まで西武渋谷店で開催されている。
今回は、本展を監修した霊視芸人・シークエンスはやともさん、都市伝説YouTuber・たっくーさん、そして企画・制作を担当した株式会社Meetsの藤原遼さんに、おまじないが人を惹きつける理由や、時代とともに変化する〝願いのかたち〟について話を聞いた。
なぜ人は〝お呪い〟を信じるのか?監修者が語る〝お呪い〟とは?
誰もが子どもの頃、一度は試したことのある「おまじない」。
恋愛成就を願うおまじないから、こっくりさん、待ち受け画像まで、その形は時代とともに変化しながらも受け継がれてきた。本展を監修したはやともさんと、たっくーさんは、おまじないを迷信だけではなく、人の願いや心理を映し出す文化だと捉えている。

はやとも
「今回監修を担当するにあたって、おまじないの歴史も調べてみたんです。すると、その多くは『こうなってほしい』という願いから生まれていることが分かりました。
願い事って、頭の中で考えているだけよりも、口に出したり紙に書いたりしたほうが、人の行動は変わるんですよね。書いたからには頑張ろう、人に言ったからには実現しようという気持ちが生まれる。そう考えると、おまじないは願いをかなえるための『行動を後押しする仕組み』として、とても理にかなっている。本当に不思議な力があるかどうかは別として、心理的な意味では十分に効果があるのではないかと思いました。
結局、人は未来が分からないからこそ不安になり、何かに背中を押してほしくなる。その思いが形になったものが〝おまじない〟なんだと思います」

たっくー
「今回、監修のお話をいただいた時は、子どもの頃にやった恋のおまじないをイメージしていました。だから最初は、自分が普段扱っている都市伝説や怪談とは少し違うジャンルなのかなと思っていたんです。
でも改めて考えてみると、幽霊や都市伝説にも『姿の見えない何かが現れる』『特定の日に何かが起こる』といった、おまじないに通じる要素がたくさんあります。広い意味では、同じ文化の延長線上にあるんだと感じました。
展示には、撮影禁止の『禁断エリア』もあり、おまじないを題材にしたホラー映画や怪談も紹介しています。一方で、恋愛成就のような明るいおまじないもある。ひとつのテーマの中に、楽しいものから怖いものまで幅広い世界が広がっているのが、この展示の魅力だと思います」

また、平成から令和へと時代が移り変わるなかで、おまじないにも変化が生まれているという。
はやとも
「意外だったのは、今の小学生がやっているおまじないが、30〜40代の人たちが子どもの頃にやっていたものと、ほとんど変わっていないことなんです。
スタッフからは『スマホが普及していない子どもたちの間では、おまじないの文化が今も受け継がれているのではないか』という話も聞きました。それを聞いて、人間の遊びや願いの形は意外と変わらないんだなと感じました。
新しいおまじないはいくらでも生まれそうなのに、昔と同じものが残り続けている。それは口伝えで受け継がれてきた文化だからなのか、それとも『これは効く』という実感があるからなのかもしれません。
一方で、おまじないの〝願い方〟は変わってきているとも感じます。昔のおまじないは、消しゴムに好きな人の名前を書いても誰にも見つかってはいけないなど、『秘密にすること』が前提でした。
でもSNS時代のおまじないは、むしろ色んな人に見てもらうことが前提になっています。昔は『自分を変えたい』という願いが強かったのに対し、今は『ありのままの自分を見つけてほしい』という願いへと変わってきた。その気持ちが、SNSで発信するおまじないにつながっているのではないかと思います」

たっくー
「今回の展示では、世代ごとにおまじないを分類しているのですが、調べてみると、昭和から平成、特に平成後期にかけて新しいおまじないが一気に増えているんです。
一方で、令和に入ってからは、新しいおまじないはそれほど生まれていません。その背景には、若い世代がSNSをコミュニケーションや願掛けの場として利用するようになったこともあるのではないかと感じています。
ただ、興味深いのは、令和の子どもたちも平成時代のおまじないを今でもやっていることです。どこで知ったのか分からないものも多いのですが、世代を超えて受け継がれているんですよね。
人は『面白い』『やってみたい』と感じるものを自然と次の世代へ伝えていく。そう考えると、人の心を引きつけるものの本質は、時代が変わっても意外と変わらないのだと思います」
指切りげんまん、縁切り…監修者が思わず足を止めた〝お呪い〟
恋愛成就から縁切りまで、おまじないは人々のさまざまな願いや不安、祈りを映し出してきた。
今回の展示に並ぶ数々のお呪いの中で、はやともさんと、たっくーさんが特に印象に残ったものとは何だったのだろうか。

はやとも
「たくさんあるのですが、強いて挙げるなら『縁切りのおまじない』が印象に残りました。好きと嫌いは正反対の感情のように思われますが、僕は実はとても近い感情だと思っています。これらの逆の位置にあるのは『興味や関心がないこと』なんですよね。
だからこそ、人との縁を切るのは簡単ではありません。もちろん相手がいなくなるわけではないので、現実には自分の気持ちを整理するしかない。そのために、相手の名前を書いて紙をちぎるという行為には、『自分の中で区切りをつける』という心理的な意味があるのではないかと感じました。
逆に言えば、直接的に手を加えていなくても、人は意識の中で簡単に誰かを葬ることができてしまう。そう考えると、人間って怖い生き物ですよね。でも、それだけ意識が人に与える影響は大きいということでもある。だから僕は、お呪いにも実際に効果はあると思っています」
たっくー
「展示の中で特に印象に残ったのは、『指切りげんまん』ですね。子どもの頃によく歌っていましたが、『針千本飲ます』という歌詞は、ただの言い回しだと思っていたんです。
でも実は、本当に〝針1000本〟を意味していた。展示では、その1000本の針が実際にジョッキに入れて再現されていて、『これが針1000本なんだ』と初めて実感しました。実際に目の前で見ると想像以上の量で、とても驚きましたね」

懐かしいおまじないから、思わず背筋が寒くなる展示まで幅広く楽しめる『超ヤバイお呪い展』。監修を務めた二人に、来場者にぜひ注目してほしいポイントを聞いた。
はやとも
「怖いものが好きな方はもちろんですが、それだけではなく、幅広い世代に楽しんでいただける展示になっています。
実際に知人に見てもらうと、多くの人が最初に『懐かしい』と言っていました。子どもの頃に何気なくやっていたおまじないを思い出すきっかけにもなると思います。
今は何かを信じるにも、つい根拠を求めてしまう時代です。でも、この展示では、おまじないがどんな歴史や背景の中で生まれたのかも紹介しています。
その由来を知ったうえで、一度くらいは理屈ではなく、自分の願いを信じておまじないをやってみる。そんなきっかけになればうれしいですね」
たっくー
「展示には100種類のおまじないがありますが、見どころは数の多さだけではありません。
子どもの頃に何気なくやっていたお呪いが、実はどんな由来を持ち、どういう意味があったのかまで知ることができます。『そういうことだったんだ』という発見もあって、大人でも楽しめる内容になっています。
体験コーナーもたくさん用意していますし、小学生以下は無料なので、お子さんはもちろん、大人の方にも『昔やっていたおまじないには、こんな意味があったんだ』と懐かしみながら楽しんでもらえたらうれしいです。
世代を問わず楽しめる展示になっているので、ぜひ体験してみてほしいですね」


「怖い」だけじゃない。〝お呪い〟がカルチャーとして愛され続ける理由
告知直後からSNSで話題を集めている体験型展示『超ヤバイお呪い展』。
恋愛成就や縁切り、幸運を願うものまで、おまじないは時代や場所を超え、人々の不安や願いに寄り添いながら受け継がれてきた。そうした昭和から令和までの100種類のお呪いを集めたのが、本展である。
今回は、本展の企画・制作を担当した株式会社Meetsの藤原さんに、展示が生まれた背景や、100種類のお呪いを通して伝えたかったメッセージについて話を聞いた。

藤原さん
「これまで『視てはいけない絵画展』や『視える人には見える展』といった展示を手がけてきました。その制作を進めるなかで、『おまじない』と『呪い』が同じ漢字を使うことに改めて気づいたんです。
遊びとして親しまれてきたおまじないも、一歩間違えれば〝お呪い〟にもなり得る。その背景には、古くから受け継がれてきた呪術や儀式の考え方があると知り、とても興味を惹かれました。
そこで、平成世代には懐かしく感じられ、同時に『実は少し危ういものだったのかもしれない』という新たな視点でも楽しめる展示にできたら面白いのではないか――。そう考えたことが、本展の出発点になりました」
会場には、昭和から令和まで、さまざまなおまじないが展示されている。その数々はどのような視点で選ばれたのだろうか。
藤原さん
「展示するおまじないを選ぶ際は、監修のはやともさんやたっくーさん、スタッフと相談しながら、呪術や風習として背景のあるものをできるだけ取り上げました。
その一方で、『おまじない』と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるものも欠かせないと考えました。実際に調べてみると、おまじないは地域や年代によって流行したものや呼び方が大きく異なっていたんです。
その中から、多くの人の記憶に残っているものや、当時夢中になった人が多かったものを中心に展示しています」

時代によって形を変えてきた〝おまじない〟。その変化には、人々が願いと向き合う姿勢や価値観の移り変わりも表れている。
藤原さん
「昭和・平成からSNS時代までのおまじないを調べてみると、大きな転換点は、やはりスマホの普及でした。逆に言えば、スマホを持たない子どもたちの間では、昔ながらのおまじないが今も受け継がれているそうなんです。
昭和から平成のおまじないには、『この手順を守れば願いがかなう』『何日間続ける』といったように、願いをかなえるためのルールや儀式性がありました。手間や条件そのものが、おまじないの一部だったんです。
それに対して令和のおまじないは、そうした〝お作法〟のような要素が薄くなっています。伝承や儀式としての側面は以前ほど強くなくなり、おまじないとの向き合い方も時代とともに変化しているのだと感じました」

また今後は、『超ヤバイお呪い展』に続き、8月末から同会場で『視える人には見える展』を開催する予定だ。
藤原さん
「ありがたいことに、『超ヤバイお呪い展』の会場で、8月末から『視える人には見える展』を開催する予定です。
今回は、日本だけでなくアメリカやタイ、中国など海外にも足を運び、それぞれの国で『見えない存在』がどのように捉えられているのかを取材してきました。国や文化によって信じるものや死生観が異なり、その違いはとても興味深かったですね。
僕自身は、人と〝目に見えない存在〟との向き合い方に強い関心があります。おまじないもそのひとつですが、今後も心霊や都市伝説、物に宿る思いなど、さまざまなテーマを通して、人が何を信じ、どう向き合ってきたのかを伝えていきたいと思っています。
オカルトや心霊は、今ではひとつのカルチャーとして根付いています。これからも展示を通じて、そうした文化の面白さを伝えていけたらと思っています」
昭和・平成の懐かしいおまじないから、SNS時代の〝願いのかたち〟まで――。時代とともに姿を変えながらも、おまじないはいつの時代も、人々の不安や願いに寄り添ってきた。
懐かしい記憶を呼び起こすだけでなく、その背景にある人々の心理や時代ごとの価値観まで浮かび上がらせる。それこそが、『超ヤバイお呪い展』の魅力なのかもしれない。
取材・文/Tajimax 撮影/小倉雄一郎
なぜ、日テレは謎解き事業に参入したのか?テレビ局が本気で仕掛ける新感覚エンタメ「ARG」
日本を代表するテレビ局が、ARG事業に本格参入した。代替現実ゲームとも呼ばれるこのゲームジャンルは、フィクションと現実の境界を意図的に曖昧にすることで、極めて没…




DIME MAGAZINE















