2026年7月30日、ドル円相場で円が急騰。一時157円台をつけたことから、財務省による為替介入が実施されたとの推測が広まった(※)。
為替介入の目的は為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることで、日本では財務大臣の権限において実施される。その正式名称は「外国為替平衡操作」で、実務は特別会計に関する法律および日本銀行法に基づき、日本銀行が財務大臣の代理人として行なう。その資金には、財務省所管の外国為替資金特別会計(外為特会)が使われる。
今回は、そんな為替介入の目的と今後の影響に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏から届いているので概要をお伝えする。
※8月3日に財務省が為替介入を発表。以下、本稿は財務省の発表前に執筆されたものです。ご留意ください。
円急騰で為替介入の観測が浮上、今回は過去の介入時に比べボラティリティが低いなかでの動き
ドル円は、日本時間7月30日の午後10時半頃、1ドル=162円78銭水準で推移していたが、その後、急速にドル安・円高が進行。午後11時22分頃には一時157円98銭水準をつけた。
円急騰の動きを受け、市場では政府・日銀によるドル売り・円買いの為替介入が実施されたのではないかとの観測が浮上。日本経済新聞社は、米通貨当局が為替介入の前段階である「レートチェック」を行ったと報じている。
2022年以降の為替介入を振り返ると、162円台は為替介入が実施されても違和感のない水準と思われる(図表)。

ただ、通貨オプション市場での予想変動率(ボラティリティ)に目を向けると、今回の円急騰直前時点で、期間1週間、1か月のボラティリティは、ともに6%台前半と、過去の介入が行なわれた際に比べ、低い水準(最も低い水準で1週間は7%台前半、1か月は7%台後半)だった。
■仮に介入であれば、政府・日銀は想定し得る大幅な円安の進行を事前に抑制することを狙ったか
なお、高市早苗首相は7月30日に、食料品の消費税率を2027年4月から2年間限定で現行の8%から1%に引き下げる意向を表明しており、7月31日の日銀金融政策決定会合では、政策金利の据え置きが大方の見方となっている。
そのため、市場で財政悪化懸念と日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」への懸念が強まった場合、165円を超えて一気に円安が進むことも予想される。
仮に、今回の円急騰が為替介入によるものとすれば、政府・日銀は、想定し得る大幅な円安の進行を事前に抑制することで、円相場の安定化を図ったのではないかと推測される。
また、一般に、ボラティリティが落ち着いているなかでの為替介入は、市場の不意を突くという点で、米通貨当局のレートチェックは、米国の理解を得ているということを市場にアピールできる点で、それぞれ為替介入の効果を高めると考えられる。
■介入の目的は急激な円安進行を抑制して相場を安定させることであり、円安トレンドの転換ではない
最後に、為替介入の効果と円相場の今後の見通しについてまとめておきたい。
為替介入の効果については、一般に、為替レートの過度な変動を一時的に抑制できても、相場のトレンド自体を変えることは極めて困難と解釈されている。
そもそも為替介入の目的は、今の局面であれば、急激な円安の進行を抑制して円相場を安定させることであり、円安トレンドを円高トレンドに転換させることではない。
ドル高・円安の材料としては、
(1)米利上げ観測の強まり、
(2)日銀のビハインド・ザ・カーブへの懸念、
(3)中東情勢の悪化と原油高、
(4)日本の財政悪化懸念、
(5)貿易赤字などの日本の国際収支構造
などが挙げられる。
いずれも状況が変化すれば、ドル高・円安の圧力は後退すると思われるが、少なくとも為替介入で対応できるものではなく、状況が変わらなければ、ドル高・円安の地合いも変わらない公算が大きいとみている。
構成/清水眞希




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