フリマサイトでタブレット端末が販売されていたところ、説明書きをよく読んでみると、売られているのは本物(本体)ではなく、その画像を印刷した紙だったという事案がSNS上で拡散されました。
何ともおかしな話ですが、本物だと思って実際に買ってしまう人がいるかもしれません。その人にとっては「詐欺だ」「騙された」と感じることでしょう。
「よく読めば分かる」「騙される方が悪い」といった意見もあるようですが、法的な観点からは出品者側にも問題があると考えられます。
1. 問題となった事案
今回SNS上で拡散された事案は、タブレット端末「Microsoft Surface Go 4」の写真(紙)を1万5000円で販売したというものです。
Microsoft Surface Go 4は、Microsoft社が製造・販売するタブレット端末で、日本国内では2023年10月3日に発売されました。
最新モデルではありませんが、現在(2026年7月末)でも新品は10万円前後で販売されています。
販売ページの説明書きには、次のような文言が記載されていました。
Surface Go 4の本体のスペックは以下の通りです。
商品自体は画像が届きます。
Microsoft Surface Go 4
OS:Windows 11 Pro
CPU:Intel Processor N200(4コア/4スレッド、最大3.7GHz)
GPU:Intel UHD Graphics
メモリ:8GB LPDDR5
ストレージ:64GB/128GB/256GB UFS
注意
写真を発送します。
何度も言いますがサーフェスが印刷された紙が届きます。
2. 「画像(紙)が届く」と書いてあれば、よく読まなかった側が悪いのか?
今回の事案では、商品の説明書きに「画像(紙)が届く」という趣旨の記載が複数箇所見られます。
そのため、よく読めばSurface本体ではなく、その画像が印刷された紙が届くことは分かったかもしれません。もし本体だと思い込んで購入したなら、購入者側にも一定の落ち度があると言わざるを得ないでしょう。
しかし、出品者側の悪意を感じる部分も認められます。
たとえば「1万5000円」という販売価格は、Surfaceの画像が印刷された紙の値段としては高すぎます。一方、Surface本体の値段だとすれば、新品価格に比べると大幅に安いものの、訳ありの中古品だと考えればあり得ないとは言えません。
また、Surfaceのスペックが具体的に記載されている点も気になります。
Surfaceの画像が印刷された紙だけを販売するなら、OS・CPU・GPU・メモリ・ストレージといった具体的なスペックを記載する必要はありません。
これに対して、Surface本体を販売するならば、このようなスペックの記載は必須です。
このような価格設定や商品記載は、「Surface本体が送られてくると誤解した人に買わせる」という出品者の意図を推認させる側面があると言えるでしょう。
3. 法的には「錯誤取消し」が認められる可能性が高い
今回のような事案では、説明書きに「画像(紙)が届く」と書いてあるので、詐欺罪によって刑事責任を問うことは難しいと思われます。
その一方で、商品の購入を「錯誤」に基づいて取り消せる可能性があります。
「錯誤」とは、契約などの法律行為に関する意思表示について、重要な事項を勘違いしていることを意味します。錯誤をした表意者は、重大な過失がある場合を除き、その意思表示を取り消すことができます(民法95条)。
Surface本体を買うつもりで購入を申し込んだものの、実際にはSurfaceの画像を印刷した紙が届いた場合、購入者は売買契約の目的物という重要な事項を勘違いしています。この場合、購入者に「錯誤」が認められると考えられます。
説明書きをよく読まなかったことについては、購入者には一定の落ち度があると言わざるを得ません。
しかし、紛らわしい価格設定や具体的なスペックの記載がなされていることなどを考慮すると、目的物を勘違いしたことについて、購入者に「重大な過失」があるとまでは言いにくいでしょう。
上記の理由から、購入者は出品者に通知して、売買契約を錯誤によって取り消せる可能性が高いと考えられます。
錯誤取消しが認められる場合、代金が未払いなら支払う必要はありません。すでに支払った代金は、出品者に対して返還を請求できます。
ただし、出品者が支払い済みの代金をすんなり返すとは限りません。もし返還を拒まれたら、和解交渉や法的手続き(少額訴訟や強制執行など)を通じて回収を図ることになります。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw
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