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過度なUVケアも原因?日本人の9割以上が足りない「ビタミンD欠乏」の実態

2026.08.04

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

全国的に連日猛暑が続いており、必要のない外出は極力控えているという人も多いだろう。

しかし日光を浴びないことで影響を受けるのがビタミンDの欠乏だ。ビタミンDは食事摂取に加え、皮膚が紫外線を浴びることで体内で生成されるが、日光を避ける行動や魚食の減少など、昨今のライフスタイル変化により、日本人の90%以上がビタミンD不足に陥っているというデータもある。

日本人のビタミンD欠乏の実態やリスク、対策について、大阪公立大学 大学院生活科学研究科教授でビタミンに関する研究を行っている桒原晶子氏、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩氏による「猛暑と過度なUVケアが招く“ビタミンD欠乏”対策セミナー」(主催:大塚製薬栄養素カレッジ)の様子を紹介する。

ビタミンD栄養状態はすべてのライフステージに影響を及ぼす

ビタミンDは皮膚が紫外線B波(UVB)を浴びることで生成される皮膚由来と、魚類・卵類(ビタミンD3)、きのこ類(ビタミンD2)などの摂取によって蓄えられる食事由来で得られるビタミン。

皮膚と食事から取り込まれたビタミンDは肝臓で「25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D]」に代謝される。25(OH)Dは血中で安定して存在し栄養状態の指標として用いられ、血中の25(OH)D濃度は、過去のビタミンD摂取や産生の履歴を反映する残高指標となる。

ビタミンD栄養状態の決定要因は、皮膚での産生では、天気、大気汚染、緯度、季節、時間帯(10時~15時がピーク)などの環境要因や、肌の色(メラニン色素の量に依存)、肌の露出度、日光浴習慣などの個人要因が影響する。食事からの摂取では ビタミンDを含む食品の摂取量で左右される。

また、ビタミンDは脂肪組織に蓄えられることから、脂肪吸収不良は濃度低下の要因となり、肥満の場合はビタミンDが希釈され脂肪細胞への取り込みが低下しリスク要因となる。また、BMIが18.5未満の低体重も、総摂取エネルギー不足に伴いビタミンD摂取量が少なくなる可能性がある。

ビタミンD栄養状態の評価は、25(OH)D濃度が20g/mL以下が欠乏、30ng/mL以上が充足とされる。

「近年、世界的に血中25(OH)D濃度は低下傾向にあり、日本や韓国などアジアで顕著となっています。韓国の国民健康栄養調査では多くの季節、年代で経年的に低下、特に20代、30代で著しい傾向がありました。

逆に緯度が高く紫外線を浴びる時間が少ない北米・北欧で濃度が高いのは、サプリメント普及や食品のビタミンD強化政策が背景にあるといえます。

アジアでの25(OH)D濃度低下の背景としては、都市化や屋内での職業の増加で日光浴機会が減り、紫外線を回避行動が増加している社会的要因や、肥満人口の増加、高齢化に伴う皮膚での産生能力低下といった身体的要因が考えられます。

また、食生活の変化では、日本での魚介類摂取量が減少していること、アジアではサプリの利用や食品強化が十分に進んでいないという背景もあります。

近年は猛暑で屋外活動が減り紫外線回避が増えるため、皮膚での産生が大幅に低下すると予測され、室内中心のライフスタイルへの移行、食習慣の変化が、ビタミンD状態を悪化させている状況です」(桒原氏)

ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進し、血中カルシウム維持を通じて骨形成を助けるため、ビタミンD不足により、くる病、骨軟化症、骨粗しょう症のリスクが上昇。近年はフレイルや筋肉との関係も指摘されている。

新型コロナ流行を機に、感染症や免疫系との関わりも注目されており、ビタミンD不足は皮膚バリア機能低下や免疫調節不全を招き、アトピー性皮膚炎重症化の可能性もあるといわれている。

さらに、2型糖尿病、高血圧症、心血管疾患リスク、妊娠中ではビタミンD不足が妊娠高血圧腎症などのリスクを高め、生まれてくる子どものSGA(妊娠週数に対して、体重と身長が標準より小さく生まれること)リスクと関連するという報告もある。

こうしたことからもビタミンDは、胎児期から小児期、成人期、高齢期に至るまで、すべてのライフステージで重要な栄養素といえる。

日焼け止めを塗ったらダメ?サプリメントはどうなの?

「日焼け止めを使うと血中25(OH)D濃度が下がると言われていますが、血中濃度に影響しない、あるいは上昇するといった報告もあります。理由としては、日焼け止め使う時は日光に浴びる時間が長くなりがちであること、また塗る量の不足で紫外線が透過する場合があることが考えられます。

日焼け止めは塗ったらダメということではなく、『常に日陰にいる』などの過度な紫外線回避が問題で、日焼け止めを使いつつも適度に日光を浴びるのが良いかと思います。過剰な日焼け止めの常用は避けつつも、皮膚が赤くなるほどの紫外線は不要なので、日常の買い物などで短時間、屋外に出る機会を増やす程度で十分だと思います」(桒原氏)

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、骨の健康維持の目安量として、ビタミンDの摂取量9μg/日を推奨しているが、国民健康・栄養調査では平均摂取量は約3μg/日で不足しているのが実態。また、日本人のビタミンD摂取源の約8割は魚介類で、魚の摂食の有無で摂取量が大きく変わる。

「食事からの摂取は変動要因が少なく確実性が高い方法です。ビタミンDはサケ、いわし、うなぎ、きのこ類、卵などに含まれますが、魚由来のビタミンD3はきのこ由来のビタミンD2より有効性が高いという報告があり、魚を食べることがおすすめです。魚は調理が大変と敬遠する方もいますが、ツナ缶やサバ缶など缶詰を使えば手軽に摂取できます。

日光と食事の両面でバランスよく補うのが理想ですが、特に日光を避けがちな女性は食事摂取を意識的に増やすようにしましょう。週2回以上の魚食を目標に、ビタミンD強化のヨーグルトや牛乳も補助的に活用するといいですね。ビタミンDは脂溶性のため、油を使った調理で吸収率を向上させるのもいいかもしれません。

サプリメントは不足者に有効ですが、全員に必須というものではありません。ドイツの研究では、1回に高用量のサプリを摂取すると転倒や心房細動リスクがあると指摘されており、20μg/日以下のサプリ摂取を推奨しています。

ビタミンDは骨の健康維持に不可欠であるだけでなく、糖尿病・認知症・免疫機能など全身の健康に関わる重要な栄養素です。栄養状態は日々の積み重ねが反映されるため、一度の大量摂取ではなく継続補給が重要です。

魚を食べる、日光を浴びる行動を『貯金』のように続けると血中濃度を安定維持でき、一定レベルを保てば一時的な摂取中断でも即欠乏には至りにくくなります。

特に今のような暑い時期は、紫外線を回避してビタミンD産生が低下しやすいため、魚介類中心の食事を心掛け、ビタミンD強化食品やサプリを適切に活用して『ビタミンD貯金』していきましょう」(桒原氏)

【AJの読み】日光を敵とみなしている人は魚を食べよう

健康医療ジャーナリストの西沢氏は、アメリカの国民健康栄養調査では、ビタミンDサプリメントの摂取率が1999年の約5%から2023年には約80%へと劇的に上昇したと指摘。多数の研究がビタミンDと健康の関連を示し、健康意識の高まりが背景にあるとした。

北欧など高緯度地域では冬季に日光でのビタミンD産生がほぼ不可能なため、国としてサプリ摂取や、ビタミンD強化食品を推奨しており、イギリスでは、妊婦などハイリスク層にビタミンDを配布する制度が確立しているという。

一方、日本では伝統的な魚食文化によりビタミンDを得ていたため、欧米ほど関心が高まらなかった背景がある。しかし近年は若者を中心に洋食化が進み、魚摂取が減少しており、ビタミンD不足への意識向上が課題と桒原氏は話す。

ビタミンDが足りているかどうかを知る目安としてぜひおすすめしたいのが、桒原氏が監修を行っている「ビタミンDレベルチェック」。

筆者も試してみたがスコアは24点。30点以下は現状の生活を維持すればよいとのこと。紫外線が強くなる4月以降は、外出時は全身を覆う完全防備で、日傘、日焼け止めは必須、常に日陰を選んで歩く生活なので、皮膚からの産生はほとんどないと思われるが、魚食は週2回以上なのでこの結果になったと推察。

今の時期は特に日光を敵とみなして徹底的に避ける人も多いが、そんな人は最低でも週に2回は魚食してビタミンD貯金を心がけよう。

取材・文/阿部純子

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