日本の自動車販売台数のうち、約3割を占める軽自動車。通勤、通学や買い物、ちょっとしたお出かけに重宝する日本独自の規格だ。
BYD(ビー・ワイ・ディー)はご存じのとおり、BEVの世界市場で大活躍しているブランドだ。世界累計販売台数は1700万台を超え、さらにハイブリッド車も展開するなどバリエーションを増やすことで、影響力を増し続けている。
そんなBYDがついに、日本の軽自動車規格でBEV(Battery Electric Vehicle:電気モーターのみで走行するクルマ)の販売を開始した。それが「BYD RACCO(ビーワイディー ラッコ)」だ。
BYDは日本で1万台の販売を達成している。しかし、日本は圧倒的にハイブリッド車の販売が多く、BEVの国内販売は好調とは言い難い。
一般社団法人 日本自動車販売協会連合会の統計によると、2026年6月における乗用車の燃料別登録台数24万7956台のうち、ガソリン車が7万1942台、ハイブリッド車が15万345台、プラグインハイブリッド車が4558台、ディーゼルが8853台、BEVが1万2225台、FCV(燃料電池自動車)33台となっている。
ガソリン車が約30%、ハイブリッド車が約62%、BEVは約5%の割合だ。
BEVの販売はやや苦戦している。この状況が大きく変化するかもしれない。「BYD RACCO」の登場で、軽EVの〝爆売れ〟が期待できそうだからだ。
爆売れしそうな理由1.走行距離が長い!
「BYD RACCO」が爆売れしそうな理由の一番目に、走行距離の長さがある。
「BYD RACCO」には3車種が用意されている。
近距離利用をメインとするユーザーにぴったりな「200」。航続距離を伸ばした「300Plus」と、さらに装備を充実させた「300Premium」がラインアップする。
カタログデータによると、「200」の一充電走行距離は210km、「300Plus」と「300Premium」は320kmとなっている。駆動用バッテリー容量はそれぞれ、22.4kWh、35.84kWhだ。
■走行距離とバッテリー容量をライバル車と比較
では、乗用タイプのライバル軽EVと航続距離やバッテリー容量を比較してみよう。
比べてみたのは、日産自動車「サクラ」、ホンダ「N-ONE e:」、三菱自動車「eKクロス EV」だ。
なお、ホンダ「N-VAN e:」は軽商用車だが、参考データとして併せてご紹介する。
BYD「RACCO 200」は、日産自動車「サクラ」、三菱自動車「eKクロス EV」との比較、BYD「RACCO 300Plus/300Premium」は、ホンダ「N-ONE e:」との比較で優位性を見せている。
トールボーイスタイルのホンダ「N-VAN e:」には、BYD「RACCO 200」が後述するプライス面でのアドバンテージを持っている。
爆売れしそうな理由2.実質100万円台から買えるお手頃な価格
続いて、BYD「RACCO」の価格をライバルとなる各ブランドの廉価グレードと比較してみよう。三菱自動車「eKクロス EV」の「Gビジネスパッケージ」は法人・自治体向け販売のため除外している。
国の補助金については、一般社団法人 次世代自動車振興センターの「令和7年度補正CEV補助金 銘柄ごとの補助金交付額」を参照とした。また、自治体の補助金などは考慮していない。
国の補助金を受けた参考価格で比較すると、日産自動車「サクラ」の「S」グレードが186万8600円で最廉価となった。BYD「RACCO」は、「200」が199万5000円と200万円を切る価格となった。
そして、一充電走行距離300kmクラスで価格を比較すると、ホンダ「N-ONE e:」の「e:G」グレードが参考価格で211万9400円と最安値。BYD「RACCO」は、「300Plus」が224万8000円となっている。
補助金を受けた後の価格は、日産自動車「サクラ」の「S」グレードとホンダ「N-ONE e:」の「e:G」グレードにアドバンテージがある。
しかし、補助金を除くメーカー希望小売価格では、日産自動車「サクラ」の「S」グレードが244万8600円なのに対して、BYD「RACCO 200」が214万5000円、ホンダ「N-ONE e:」の「e:G」グレードが269万9400円なのに対してBYD「RACCO 300Plus」が239万8000円となっており、それぞれ30万3600円、30万1400円と、それぞれ約30万円低く設定された戦略価格なのがわかるはずだ。
補助金を受けた車両は、原則4年または3年の保有が求められる「処分制限期間」が設定されている。期間内に処分する場合は、財産処分承認手続きや補助金返納が必要なことは意外と知られていない。
たとえば、事故などで車両を処分する場合、補助金は残存期間に応じて返納が必要で、完済するまで新たな車両への補助金の交付を受けられないことは留意しておくべきであろう。
そのため、「BYD RACCO」のように新車価格が下げられていることは、将来の安心にもつながる。
さらに、「BYD RACCO」は新車保証が充実している。たとえば駆動用バッテリーの容量保証については、8年/16万km未満であれば、初期容量70%以上の保証が受けられる。
さらに、据え置き型ローンの設定により、月々1万9300円で買えるプランも用意されている。
爆売れしそうな理由3.サイズが日本にぴったり
「BYD RACCO」は、日本向けに完全新設計。軽自動車規格に適合した車両だ。
ボディサイズは全グレード共通で、全長×全幅×全高:3395×1475×1800mmの〝スーパートール〟スタイルを採用。
ホイールベースは2520mmとされ、車両重量は「200」が1160kg、「300Plus」は1220kg、「300Premium」は1230kg。最小回転半径は4.8mと小回りが効く。
「BYD RACCO」のアンバサダーでCMにも出演する女優の広瀬アリスさん。「犬を三匹飼っていますし、移動する時に必要なアイテムも多いのですが、『RACCO』なら荷物をたくさん積めるし、ドライブの選択肢が増えました」と言う。
そして、インテリアのクオリティはBYDらしく上質なものとなっている。
ドアの操作部分の質感は軽自動車とは思えないレベル。
リアハッチは開口部が広く使い勝手に優れ、シートアレンジも多彩で操作しやすい。
荷室やシート背面のカーペットの質にもこだわっており、細部まで抜かりはない。
爆売れしそうな理由4.快適な走り
そして、「BYD RACCO」はBEVならではの快適な走行が楽しめる。
バッテリーにはリン酸鉄リチウムイオンを採用し、最高出力47kW(64ps)、最大トルクは160N・mを発生する駆動モーターを搭載。
電動モーターは動き始めから最大トルクを発揮することが多く、また、160N・mはガソリンエンジン車の1600ccクラスに匹敵するトルクであることから、「スムーズな加速に思わず、『うぉ~っ!』って声が出てしまいました」(広瀬アリスさん)というのも納得だ。
爆売れしそうな理由5.安全性能もしっかりカバー
「BYD RACCO」は日本市場専用に開発した車両。専用のプラットフォームにより、軽自動車規格に収まりながらも高い安全性能を持つ。
BYDが新たに設計した「X-PACK」は、駆動用バッテリー、電子制御ユニット、DC-DCコンバーターと車載充電器、高電圧配電ユニット、バッテリーコントローラー、車両コントロールユニットなどをバッテリーユニット内に統合したもの。
前方クラッシャブルゾーンを拡大し、さらに歩行者の安全性向上にも寄与する。
また、ペダル踏み間違い時加速抑制装置や車線逸脱防止支援装置、アクティブクルーズコントロール、自動緊急ブレーキなどを装備し、全グレードで4輪ディスクブレーキを採用するのも見逃せない。
さらに、幼児置き去り検知など、ユーザーに寄り添う安全機能も充実している。
「BYD RACCO」が日本の軽EV普及を加速しそう
筆者は軽自動車こそBEVがフィットすると考えている。それはユーザーの使用状況とコンパクトなサイズに起因する。
一般社団法人 日本自動車工業会の「2025年度軽自動車の使用実態調査について」によると、主な運転者は平均51歳で、女性が6割超となっている。
また、高齢者の免許自主返納についても、「車に代わる代替移動手段がない」が6割。公共交通機関が不便な地域では「生活が不便になる」が9割と保有中止をためらわせる原因となっている。
一方で、軽自動車を購入した理由には「経済面」が6割弱で最多となっており、コスパを求める向きは多い。
「BYD RACCO」が加わったことで、日本の軽EVのラインアップが増えた。また、メーカー希望小売価格が214万5000円からと、ガソリンエンジンの軽自動車との価格差も縮まってきた。
今後、軽EVの販売台数が増えれば、量産効果で価格の低下も期待できるだろう。「BYD RACCO」が日本の軽EV普及を加速し、市場を活性化することに期待したい。
取材・文/中馬幹弘




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