日本におけるプリンの歴史は、明治維新前後にまでさかのぼる。当初は、高級西洋料理店などで提供され、一般庶民には縁遠いものであった。
プラカップ入りのプリンが市販され始めたのは、ずっと後の1960年代のこと。時代とともに商品が増え、「国民的デザート」としての地位を確立した。21世紀に入ると、素材や容器にこだわったものも出てきた。今では、百花繚乱といったかんじで、全国津々浦々にご当地プリンがある。
先日、そうしたプリンが一堂に会した「プリン博覧会2026神戸」が開催されたので探訪した。
開店まもなく売り切れる商品も
場所は、神戸市営地下鉄の名谷(みょうだに)駅前の大丸須磨店1階。10時の開店ジャストに到着すると、既に数十人の行列が並んでいた。百貨店のスタッフに誘導された人の列は、食品売り場そばの特設会場へ。開店後も続々と人が加わり、人気の高さが窺える。来場者は、老若男女問わずだが、この日は平日ということもあってか、やや年長の女性の比率が高め。
会場自体は広くはないが、冷蔵ショーケースが並び、その向かいにはイートインスペースが設けられている。ショーケースを覗くと、筆者が初めて見るプリンが並んでいる。このエリアは、「おとりよせ プリンコレクションブース」と呼び、全国各地からやってきたプリン約50種が販売されている。
一列になった人たちが、買い物かごにお目当ての商品を入れるのを見ていると、1人で同じ商品を複数個買っているパターンが多いのに気づく。そうした売れ筋は、見る間に在庫を減らしていき、開店15分で売り切れたものが出始めた。
イベントを主催する(株)ご当地グルメ研究会の代表、松本学さんによれば「おとりよせ プリンコレクションの商品の多くは13時頃に完売する毎日」だという。
奇をてらいつつもしっかり美味
松本さんは、記事の種にといくつかをピックアップしてくれた。その1つが、北海道の天塩郡で誕生した「てしおchuchuプリン」だ。なんと、マヨネーズチューブに似た容器に入っている超変わり種。そのまま吸うようにして食べるだけでなく、クレープのソースやホットケーキのトッピングとしても使えるそうだ。北海道産の良質な卵と牛乳を使っているだけあって、甘すぎない上品な味わいであった。
一方でこちらは、「恐竜発掘プリン」。恐竜の化石の聖地、福井県の菓子工房「永平寺 井の上」発の商品。地層を模した2層構造となっており、上(地表)はクランチチョコ、下層はプリンとなっている。チョコとプリンの組み合わせが絶妙で、いくらでも食べたいくらいのおいしさ。
ぱっと見、畜産業の盛んな北海道の商品が目につくが、他の都府県も健闘している。筆者の地元京都府からは「むらちゃプリン」などが出品。「むらちゃプリン」は、「道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村」の商品で、春摘みの抹茶をフレーバーに使用している。こうした日本の伝統素材を活用したプリンは、意外と最近のトレンドである。
全国でも屈指の名店も参加
「おとりよせ プリンコレクションブース」とは別に、岐阜県の「岐阜川辺アイスクリーム牧場」と千葉県の「ショコラティエ・ろまん亭」の単独出店もあった。どちらも作る工程を実演しており、興味をそそられる。
「岐阜川辺アイスクリーム牧場」は、トルコアイス発祥の地から日本にやってきたアイス職人が運営する牧場。「プリンのソフトクリーム」(下写真)やクレームブリュレを包んで揚げた「プリンフライ」などが提供されていた。
「ショコラティエ・ろまん亭」は、全国で唯一、札幌ろまん亭の暖簾分けを許された夛田(ただ)俊之シェフの店。これまで、他店にはない独創的なスイーツを送り出してきたが、プリンのジャンルにおいては「炎のプリン」を手がけている。これは、プリンの上に、イチゴなどのフルーツをトッピングして、さらにその上にカスタードパウダーを振りかけてから、バーナーであぶった豪快なもの。
いわば、クレームブリュレのプリン版といった感じだが、多少かきまぜて食べてみると、プリン、フルーツ、焦がしたカスタードが重層的なハーモニーを奏でる、不思議な味のとりこになった。
血糖値が気になる筆者は、日ごろはコンビニのプリンをたまに食べる程度。それで、知らぬ間にプリンの食文化が、ここまで豊かな沃野を形成していたことに一種の驚きを覚えた。年に1回開催のこの催し、プリン好きなら、絶対おさえておきたい祭典である。
文/鈴木拓也
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