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なぜ、クマの出没頻度が増加しているのか?現役のマタギに聞く「クマと人間との正しい付き合い方」

2026.08.02

ここ数年、市街地でのクマ目撃件数が増加。人身被害のニュースも頻繁に目にするようになった。

これからの時期はツキノワグマの交尾期にあたり、特にオスの行動範囲が広がるという。

また、成長した子グマは夏頃に親離れし、人里へ姿を現す可能性が高くなるらしい。

クマ対策センター(REVA JAPAN株式会社)が全国100名を対象に「クマ出没・人身被害に関する意識調査」を実施したところ、95%が「クマ問題は社会問題である」と回答。88%が「今後5年間でクマ被害はさらに増える」と回答したという。

クマ被害が深刻化する今、山間に暮らしクマやシカなどを狩猟して生きる「マタギ」はこの状況をどう感じているのか?

クマから身を守る術、クマとの正しい付き合い方を現役マタギに聞いた。

訪れたのは山形県の南西部に位置する小国町。

東京23区とほぼ同じ広さの町土はブナ林を中心に9割以上が森で覆われている。

マタギ文化が息づく町の中でも、400年以上の歴史を持つといわれる小玉川地区に11代続く現役マタギがいた。

民宿を営む本間義人さん(50歳)。マタギの家に生まれ、30歳の頃からマタギとして山に入ってきた。

その傍ら、約40年続く「民宿の越後屋」を今年父親から受け継ぎ、奥様と切り盛りしている。

宿泊はもちろん、人気の食事処では実際にマタギ仲間と捕らえた熊肉を存分に味わえる「熊そば」が楽しめる。

開業以来の名物メニューは「熊の手そば」。

お値段10万円ながら、度々注文が入るという。

「クマを獲った時に熊の手だけ優先して分けてもらえるようにお願いしています。手のひらの硬めのゼラチンが美味しいんですよ」

マタギにとってクマは山の神からの授かり物。店で提供する熊肉以外の部位はマタギ仲間たちと残すことなく美味しくいただく。

「クマを獲った時は脳みそもいただきます。その日のうちに頭の後ろから穴を開け、鍵状の器具で取り出し、新鮮な脳みそを酢味噌和えで食べます」

長年、マタギとして生きてきた者は、ここ数年急増しているクマ出没についてどう感じているのか?

巷では山の食料不足が原因と言われているが、現役マタギの本間さんに聞くとこんな答えが返ってきた。

「本当のところ、山には食べ物がいっぱいがあります。クマは食べ物に困っているわけじゃない。それよりも人間が作った作物の方が美味しいとクマが覚えてしまい、それを目当てに降りてくるんじゃないでしょうか」

「人里に降りれば畑のスイカやさくらんぼ、とうもろこしなど、木に登らなくても簡単に美味しいものが食べられる。手軽に食料を確保できる術をクマが知ってしまったのかもしれません」

この状況でクマ被害を防ぐためにはどうすればいいのか?

マタギの世界を知ることでクマとの正しい付き合い方が見えてきた。

クマと人間の生きるべき境目を作る

今なおマタギ文化が残る小国町小玉川地区。現在マタギとして活躍する方はどれくらいいるのだろうか?

「今は5、6軒ですかね。マタギ専業の人はもういないです。毛皮や熊肉の需要がそこまでないのでマタギだけでは暮らせないですから」

具体的にマタギの仕事とは?

「仕事というよりは生活の一部なんですが、この辺には7つぐらいの班があって、年に2度の狩猟期間に山に向かいます」

「一つは、11月半ばから2月半ば。この時期はクマを何頭でも仕留めていい期間なんですが、紅葉が終わって山が黒くなると見つけづらいので獲れる確率は低い。なのでここ数年はほとんど行ってないですね」

「一番捕獲できるのはもう一つの期間、4月上旬から5月上旬です。山にはまだ雪があるため、白い雪の上を歩くクマを見つけやすいんです。基本的にこの時期は捕獲制限があるんですが、去年はクマが多く、制限もありませんでした」

クマを目にする頻度は確実に高まっているという。その原因とは?

「人間の怖さを知らないクマが増えてきているんだと思います。それは、マタギが減ってきていることも一つの要因かと」

「私は、人間の怖さをクマなどに覚えさせるためにマタギが存在していると思っています。私たちが山に行くとクマは逃げます。たとえ一発で仕留められなかったとしても、銃声の音や匂いが恐怖として記憶に残り、植え付けられるはず。それがその子や孫へと代々伝わっていく。しかし今の時代はマタギの数が圧倒的に足りず、それができていない」

「昔は20~30人で狩りに行っていたので思い通りの場所にマタギを配置し、クマを追い込むことができました。ですが今はMAXでも10人ぐらい。本当に狭い範囲でしかクマを見つける作業ができず、逃す確率も上がっているのが実状です」

このままでは衰退しかねないマタギ文化。それに反するようにクマの脅威は増すばかり。現役マタギが提唱する、これからのクマ対策とは?

「改めて、クマと人間の境目を作った方がいいと思っています。たとえば、雑草だらけの場所をそのままにはせず、定期的に草刈りをやるなど人間の存在を示す。人間が暮らすエリアの景色の変化をクマに認識させることでその違和感が恐怖になると思うんです。ここは立ち入れないエリアであることをハッキリ示すことが大切なのかなと思っています」

同時に、マタギの未来も考えなくてはならない。「あと20年経ったらマタギはいなくなってしまうかも」と話す本間さんだが、そうならないために今すべきことがある。

「マタギ文化は映像情報で保存して次の世代へ残すべきだと考えています。いま、これだけクマが下界に出て世間を騒がせていますが、一旦、落ち着く様な気がしています」

「オオカミみたいに絶滅に追い込む様なやり方ではなく、ゆっくり、その土地に合ったクマ捕獲の術を各々の土地でやる気のある人達に伝授すれば良いのではないかと、私は思っています」

取材協力
民宿の越後屋
山形県小国町小玉川456
TEL 0238-64-2430

文/太田ポーシャ

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