フランスのプレミアムSUVとして「5008」が登場したのは、2017年のこと。「3008」と同じプラットフォームを延ばして、3列シート7人乗りにしている。フランス車の3列シート、7人乗りというのは歴史が古く、1920年代からカタログモデルとして存在していた。「5008」もその伝統を踏襲したモデルといえる。
新型での変更点は?
「5008」は2016年にグローバルでローンチして以来、30万台以上生産され、欧州を中心に世界各地で販売され続けている。2021年にデザインを含めたビッグマイナーチェンジを実施。その後、ディーゼル/ガソリンエンジンを搭載したモデルをラインアップしていたが、2026年2月にハイブリッド専用モデルとして、フルモデルチェンジをし、現行モデルになった。
新型は先代に対してホイールベースが60mm、全長が170mm、全幅が55mm、全高が85mm大きくなり、アッパーミドルクラスの上級SUVへと進化した。パワーユニットも3気筒1.2Lガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車だけの設定となっている。1.2Lのガソリンターボエンジンは136PS、230Nm。モーターは22PS、51Nm、総電力量0.9kWhなのであくまでもアシスト用のモーターと思ったが、実際に試乗してみると、エンジンが停止し、モーターで走るシーンが多い印象だ。
新型「5008 HYBRID」のスタイリングは「3008」と共通のアイデンティティだが、ルーフレールを備え、7人乗りのロングルーフを強調したデザインを採用している。とはいえ、その魅力はなんといっても広くなった室内空間にある。フロントシートは21インチのパノラミックカーブドディスプレイと、それを小径異形ハンドルの上から見るドライビングポジション。やや高めの着座位置からの見晴らしはよい。
6速ATは電動モーターを内蔵した新開発のデュアルクラッチトランスミッションを採用。操作はセンターコンソール上の小さなツマミを前後に動かす方式だ。ドライブモードもスイッチでスポーツ/ノーマル/エコが選べる。どちらも使いやすいレイアウトだった。
2列目は4/2/4の独立可倒式で、それぞれ前後に150mmほどスライドさせることができ、リクライニングもする。座席は後方にスライドさせれば、足元は広く、足も組めるが前方にすると、ドア開口部から足を出し入れするのがむずかしいほど狭くなってしまう。
このシートは6/4でシート全体をナナメ前方に大きく傾けることができる。こうすることで3列目への出入りがラクになる。3列目シートは2分割の独立可倒式。2列目を前方にスライドさせれば、身長150cmクラスでも着座できる。2列目シートの下につま先が入るので、足元のスペースは確保できるが、あくまで+2か、子供用のスペースと考えたほうがよさそうだ。
装備も2列目までは、独立した温度設定が可能な3ゾーンエアコンと操作パネルが設置されており、後席からでも温度や風量が調整できるようになっている。リアドアウインドにはロールアップ式のサンシェードが備わっている。さらに、アンビエントライトがフロントインパネからリアドアトリムまでつながっているという色の演出も行われている。2、3列目ともに背もたれは前倒式なので、倒すとフラットなスペースになる。マットレスを敷けば、大人2人が快適に寝られる広さだ。
大人数で長距離走る人にはぴったりのクルマ
1.2Lのガソリンターボとモーターによる走りだが1740kgという車重に対して、力不足もなく、6速ATは軽快に加速を行なう。0→100km/hの加速は10秒台なので、けっして速いわけではないが、スタートからモーターのアシストもあり、スムーズに加速する。直3、1.2Lターボは5500回転まで回る。
走っていてユニークだと思ったのは、電池に充電するタイミングや、モーターのみでの走行が、すべてクルマまかせである点だ。デジタルのエンジン回転計を見ていると、高速道路で時速100km走行中でもエンジンが停止し、モーター走行になることもあった。しばらく走ると、エンジンが始動し、6速2200回転で巡行するという感じだ。印象的だったのは高速走行での安定性だ。100km/hから120km/hと車速が上がると安定感が増してくる。高速道路を大人数で長距離走る人にはぴったりのクルマだ。
乗り心地もノーマルモードは低速でもしなやかさがあり、かつてのプジョー車のような”ネコ足サス”も少し感じられた。ロングホイールベースと多人数乗車という条件を考慮して、チューニングも変化しているのかもしれない。スポーツモードは細かいゴツゴツ感や高速走行での上下動の硬さが感じられた。スポーツモードは直進性が強く、コーナーでの戻しも強いという前輪駆動車の特徴が強い印象だった。
もうひとつ印象に残ったのは、静粛性に関する点。1.2Lガソリンエンジンは、始動中は常に作動音を放っていたが、エンジンが停止し、モーターでの走行になっても室内に侵入してくる音がEVのように皆無になることはなかった。デュアルクラッチの変速機を含めて、何らかのメカニカルノイズが室内に侵入していた。ガソリン車やディーゼル車から乗り換えれば、たいして気にならないレベルだが、開発陣が静粛性に関してあまり関心がないのかもしれない。この点を除けば、「5008 HYBRID」は、多人数家族にとって楽しいファミリーカーになることは間違いない。
■関連情報
https://www.peugeot.co.jp/range/new-peugeot-5008/hybrid.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博




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