猛暑の中、汗だくで入った飲⾷店で、キンキンンに冷えたおしぼりや熱々のおしぼりで顔を拭いて、生き返った気持ちになった経験を持つ人は多いだろう。「あの快感をいつでも味わえたらいいのに」と思っている人に朗報。いつでもどこでもおしぼり感覚でリフレッシュでき、サウナ後のような“ととのい”体験ができるというモバイル型リフレッシュガジェット「テックオシボリ」が、2026年5⽉12⽇に発売されたのだ。
いつでもどこでもおしぼり体験ができるリフレッシュガジェット「テックオシボリ」
半導体のテクノロジーから生まれた最新素材「クレマタッチ」を使用
「テックオシボリ」に使用されている新素材「クレマタッチ」を開発したのは、「水滴ストレスをなくす」をコンセプトにした家庭用吸水スポンジブランド「STTA(スッタ)」を2022年2月から展開しているアイオン株式会社。同社は液晶テレビなどの洗浄用に使われる超微細気孔スポンジの分野で国内トップクラスのメーカーで、クレマタッチはその中でも肌ざわりを追求し、3年がかりで開発した新素材だという。
「テックオシボリ」を共同で開発したのが、“ヒット商品を次々と生み出すデザイン会社”としてテレビ番組「カンブリア宮殿」でも紹介された株式会社kenmaだ。
いったいどんなものなのか。本当に“顔サウナ”体験ができるのか。さっそく購入し試してみた。
軽く絞るだけで見る見る乾いていく速乾性に驚愕!
タオルは乾いた状態では硬いが、水を通すと一瞬でやわらかくなる。驚いたのは、軽く絞っただけで、絞った部分が見る見る白っぽくなり、乾いた状態になること。これほど乾燥スピードの速い素材を見たのは初めて。これなら繰り返し濡らして使っても、不衛生になる不安は少なそうだ。
顔に乗せただけで、吸い付くように包み込む
説明書には「60度以上のお湯には浸さないように」と注意書きがあったので、まずは手で触れられる熱めのお風呂のお湯くらいの温度でも試してみた。暑い時に熱いおしぼりはNGのように思えるが、これがむしろ、気持ちがいい。オルにはないなめらかさとやわらかさで、まるで顔に吸い付くように包み込んでくれる。ポットの残り湯などのやや温かめのお湯を使うと、まさに“顔サウナ”。最近のオフィスはエアコンの設定温度が低く、冷えすぎることがあるので、冷え対策にもいいかもしれない。
メイクをしている女性は顔には使えないが、暑い日に外を歩いて汗だくになった時に、このタオルを水で濡らして首もとなどを拭くだけで、かなりすっきりリフレッシュできる。
素材もユニークだが、さらにユニークなのは容器の形状。細長いバケツ型でちょうどテックオシボリが浸る量の水や湯を入れることができ、使わない時は取っ手部分にテックタオルをかぶせて干しておくこともできる。ちょうどバッグのサイドポケットに入るサイズなので、取り出しやすい…と、使えば使うほど、よく考えられたデザインだと感心する。
このユニークなデザインはどのようにして生まれたのか。開発背景を、株式会社kenma代表取締役の今井裕平氏に話を聞いた。
アイデアに行き詰った時は、「逆から考えてみる」
――新素材を、「持ち運べるおしぼり」という使い方にしようと考えたきっかけは?
今井氏 アイオン株式会社では、当初はタオルとして商品化する前提で企画を進めていましたが、この素材の特性は見た目や触った印象だけでは伝わりにくい。「百貨店などで普通のタオルと並べた時に、手にとってもらえない」と気づき、別の可能性も含めて検討することになったのです。
私も当初は、プールなどで家族が共用できるレジャータオルのような使い方も考えました。ただ、やはりそれは“タオルの延長”に過ぎず、かさばるという課題も解決できません。そこで、「これは発想そのものを変える必要がある」と考えました。私が行き詰まったときにいつも取るアプローチは、「逆から考える」ことです。世の中のヒット商品は、既存の常識とは異なる“新しい常識”を提示しているものが多いと感じています。そのためには、まず今の常識が何かを明確にし、それを疑うことから始めます。
今回で言えば、開発チームは“乾いた状態でいかに水を吸うか”という発想で吸水素材を追求していました。しかし、その土俵で勝負する限り、肌触りの良い従来のタオルには敵わない。そこで注目したのが、この素材の本質的な特徴である「乾きやすさ」でした。そこから発想を転換し、「タオル」という枠組み自体を見直しました。
一般的にタオルといえば乾いた状態で使う“ドライタオル”を指しますが、今回目指すのは“ウェットタオル”だと定義したのです。そして、その具体的な形として導き出したのが「おしぼり」でした。そう考えた理由のひとつは、居酒屋や美容室などでおしぼりが使用されることが多い=「おしぼりが好きな人は多い」という実感です。日常的に使うものではないからこそ、サービスとして価値があるわけですが、日常化できなかった理由は「濡れたタオルは不衛生だし持ち運びにくいから」。今回の素材はその課題を解決できているため、「日常的に使えるおしぼり」という新しい価値が成立するのではないかと考えました。
商品開発のポイントは、「使い方」と「見せ方」の設計
――「持ち運べるおしぼり」という概念を、このようなデザインに落とし込んだ理由は?
今井氏 一般的にこのような商品は、コンパクトに折りたたんでケースに収納する方向で考えがちですし、実際に社内のデザイナーからもそうした案が多く出てきました。しかし私は、「本当にそれが使いやすいのか」と疑問に感じていました。というのも、さまざまなシーンで気軽に使えることを目指すなら、むしろ“出しっぱなしでラフに扱える”手軽さこそが、継続的な使用につながると思いました。バッグの中にしまい込んでしまうと、出し入れが面倒になり、やがて使わなくなってしまいます。折りたたみケースやカプセル型、筒状に巻いて収納するなど、さまざまなアイデアも検討しましたが、「蓋を開ける」「畳む」といったワンアクションが増えるだけで、使うハードルは上がってしまいます。最終的には、くるっと巻いてそのまま入れるだけ、という現在のシンプルな形に落ち着きました。
また私が使いやすさと同じくらい重要だと感じているのが、「スクリーン上でどう見えるか」という点です。今の時代、商品はまずスマートフォンやパソコンの画面上で見られ、そこで興味を持ってもらえなければ手に取ってもらえません。いわば使いやすさという勝負の前に、“ディスプレイでの勝負”があるということです。そのために、パッと目に入った時に印象に残るデザインであることも重視しました。「テックオシボリ」は現段階で想定の約2倍を売り上げていると聞いていますが、この戦略も功を奏しているのではと感じています。
このプロダクトの価値は、「気分転換」にある
――「テックオシボリ」という商品名は、どのようにして決めたのですか?
今井氏 まず「濡れた状態で使うタオル」であることが直感的に伝わる言葉として、「おしぼり」というワードは外せないと考えました。そのうえで、単なるおしぼりではなく、新しいカテゴリーとして認識してもらうために、どんな言葉を組み合わせるべきかを検討しました。
私は新しいカテゴリーをつくる際、あえて少し意外性のある言葉の掛け合わせが重要だと考えています。今回の素材は明らかにテクノロジー由来の“化学素材”なので、そこに「テック」という言葉を組み合わせることで、「これまでにない新しいおしぼり」という印象を生み出せるのではないかと考えました。そうして生まれたのが、「テックおしぼり」というネーミングです。
さらに、「顔サウナ」というキャッチコピーも設定しました。これはターゲットであるビジネスパーソンとの親和性を意識したものです。開発期間が冬だったこともあり、私は50度を少し超えるくらいのお湯で試していたのですが、その使い心地が非常に良かったんです。普段、家庭で温かいウェットタオルを使う機会はあまりありませんが、これなら手軽に再現できます。使ったあとのすっきり感やリフレッシュ感が、サウナに入ったときの感覚にどこか似ていると感じ、「顔サウナ」という表現にたどり着きました。
このプロダクトの価値を端的に言うと、単なる清潔用途にとどまらず、「気分転換」にあると考えています。よく「顔を洗って出直してこい」と言いますが、顔を洗う行為には一度リセットして気持ちを切り替える効果があります。冷たい水でも気持ちいいですが、温かいタオルで顔を拭くことでも深いリフレッシュ感が得られます。サウナに行く時間がなくても、顔だけでも十分に気分転換になると思いますので、ぜひ一度試してみて欲しいですね。
取材協力/アイオン株式会社、株式会社kenma
取材・文/桑原恵美子




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