法改正による掛金上限の変更など、ここ数年で制度変更が相次いでいる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」。実は度重なるシステム改修の費用が膨らんだ影響で、2027年以降、加入者が負担する管理費用(事務手数料)が引き上げられることになった。
そこで今回は手数料改定の全貌を解説した上で、iDeCoとNISAのメリット・デメリットを徹底比較する。
意外と知らないiDeCoの手数料の仕組み
iDeCoは私的年金のひとつで、自分で決めた掛金を毎月積み立て、投資信託などを使って自主運用する制度を指す。
運用のプロに任せるため、元本保証ではないが、運用成績次第では掛金を上回る年金を受け取ることができる。
iDeCoへの掛金は、拠出できる金額に上限があるものの、拠出した掛金額の全額分の所得控除を受けることができるため、税制上の所得を減らすことができ、その分所得税と住民税を節税することができる。
しかし、iDeCoで預けた資金は、原則60歳まで引き出すことができず、掛金拠出中だけでなく、拠出をやめてもその間毎月手数料がかかり続けるというコストの壁がある。
iDeCoは基本的に投資信託に投資するため、投資信託自体に、信託報酬といって運用期間中にかかる手数料がある。これは、NISAでも投資信託に投資すれば同じことである。問題はiDeCoだけに発生する「管理手数料」だ。
iDeCoは、加入時に2829円、掛金を拠出期間中には、国民年金基金連合会へ月105円、信託銀行に月66円、運営管理手数料がかかる。したがって、掛金を拠出中は年間2052円かかる。
このうち、国民年金基金連合会へ支払う月105円の手数料が、2027年の掛金拠出から値上げされ月120円となり、年間1440円、信託銀行への手数料と併せると年間2232円と180円値上げとなる。
たった180円と思うかもしれないが、iDeCoは20代~50代まで30年といった長期で運用するものだ。
仮に30年間積み立てたとすると、支払う手数料の総額は約7万円にも達することになる。なお、途中で掛金の拠出を止めて運用だけを続ける場合でも、年間792円の手数料はかかり続けてしまう。
金融機関によって差が出る「運営管理機関手数料」は必ず無料を選ぼう
iDeCoの管理手数料のうち、先ほどの「国民年金基金連合会」と「信託銀行」へ支払う事務手数料は法律で一律に決められているため、どこの金融機関(銀行や証券会社)で口座を開いても同額がかかる。
一方、運営管理機関手数料は、金融機関が独自で決めており、以下のように無料としている金融機関もあり、手数料を節約するために、無料としている金融機関を選ぶのがおすすめだ。
iDeCoの運営管理機関手数料が無料の主な金融機関
・三菱UFJ銀行三井住友銀行(みらいプロジェクトコースに限る)
・みずほ銀行(※特定の条件を満たした場合に無料)
・りそな銀行
・SBI証券
・楽天証券
・松井証券
・マネックス証券
※みずほ銀行で無料にするための条件(以下のいずれかを満たす必要あり)
条件1:iDeCoの資産残高、または掛金の累計額が50万円以上であること
条件2:下記3つをすべて満たすこと
(1)毎月の掛金拠出がある (2)iDeCo専用Webサイトにメールアドレスを登録している (3)「SMART FOLIO<DC>」にて目標金額を設定している
iDeCoをこれから始める方は、知名度だけで選ぶのではなく、必ずこの運営管理機関手数料が無料になっているかを確認してから加入するよといいだろう。
どちらが本当におトク? iDeCoとNISAの決定的な違いを徹底比較
手数料の上がるiDeCoとNISAはどちらがおトクなのか。5つの視点から勝敗をジャッジしてみた。
(1) 掛金を出すとき(拠出時) ⇒ 【iDeCoの勝ち】
iDeCoは掛金を拠出時に所得控除を受けることができ、節税ができるが、NISAはそのような優遇はない。その一方で、(3)の引出時にiDeCoは課税される可能性がある。
(2)途中で売却したとき(運用時) ⇒ 【引き分け】
iDeCoで、投資信託により運用した売却益は非課税である。そして、NISAも、売却益や配当金など運用により得た運用益は非課税となる。
(3)お金を引き出すとき(受取時) ⇒ 【NISAの勝ち】
NISAは引き出すときに特に税金はかからないが、iDeCoは引出時に税金がかかる可能性があることに注意が必要だ。
iDeCoは拠出時に所得控除を受けられる反面、受取時に一括で受け取れば退職所得、年金形式で受け取れば雑所得として課税対象である。
退職所得は、所得から控除できる退職所得控除額が大きく、さらに控除後所得を1/2とするため、課税されない可能性が高いが、将来はその控除額が縮小される可能性に留意したい。
そして、年金形式での受け取りの場合は、他の年金とも合算されるため、厚生年金等で手厚い年金を受給できる人は課税される可能性がある。
(4)引き出しの制限(流動性) ⇒ 【NISAの勝ち】
iDeCoは原則60歳まで引出しできない。結婚資金、子供の教育資金、住宅購入の頭金などが必要になってもiDeCoの資金は使えないため、ライフイベントへの備えはNISAで行なうのが最適だ。
一方で、引出しできない分、老後のためにしっかり長期で積立て、資産形成をすることができる。老後資金はいつか必ず必要となってくるため、引出しできないことも一概にデメリットとはいえない。
(5)毎月の管理手数料(コスト) ⇒ 【NISAの勝ち】
前述の通り、iDeCoは毎月お金を出すだけで年間2052円(2027年からは2232円)の固定コストがかかる。これは運用残高が少なくても一律で引かれるため、少額投資の人ほど負担感が大きくなる。一方で、NISAは口座を維持するための管理手数料は一切かからない。
ここまでの特徴を総合すると、「引き出しやすさ」と「受け取るときに税金に悩まされないシンプルさ」の2点において、利便性はNISAの圧倒的勝利といえる。
【結論】私たちはiDeCoとNISA、どちらを「正解」とするべきか?
iDeCoは所得控除を受けられる反面、手数料が高く、原則60歳まで引き出すことができない、受取時に課税される可能性があるというデメリットもあり、NISAの方が圧倒的に勝ちのように見える。
しかしながら、老後資金の資産形成という目的に限っては、60歳まで引出しできないことから、iDeCoは最も最適だろう。
iDeCoに対して、掛金を上限いっぱいに拠出するというよりは、5000~1万円と、コツコツ長期で少額投資し、さらに、余裕資金があれば残りはNISAで運用するのが最適解だ。
文・大堀貴子
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