「パスポートの発給手数料が大幅に引き下げられる」――。そんなニュースが世間を賑わせている。
2026年7月1日の手数料改定に伴い、10年用パスポートの手数料は従来の電子申請1万5900円、窓口申請1万6300円から、改定後は電子申請8900円、窓口申請9300円へと値下げされた。
これまで旅費から捻出していた邦人保護経費の一部を国際観光旅客税で充当する形へと見直し、コロナ禍以降長らく低迷している日本人のパスポート保有率(約17~18%)を押し上げたいという国側の狙いがある。
一見すると、海外旅行へのハードルが下がったお得な法改正に思える。だが実は、このパスポート値下げと同じ26年7月1日から、日本から出国する際にかかる「国際観光旅客税(出国税)」が、従来の1000円から3000円へと3倍に値上げされたのだ。
パスポートの取得時に一度だけ7000円が浮いたとしても、海外へ行くたびに3000円を徴収される。海外に行けば行くほど費用がかかる構造になったというわけだ。
B級グルメで3500円。「節約したつもり」が3万円弱の衝撃
だが、そんな日本国内での「数千円の損得勘定」は、海外に到着してすぐに消し飛ぶことになる。
今年6月、筆者は両親と3人でハワイ・オアフ島を訪れた。渡航前に覚悟はしていたものの、円安や物価高は想像を超えるものだった。
例えば、ワイキキのど真ん中にある「サムズキッチン」では、名物のガーリックシュリンプが今や日本円で3000円程度する。かつては円換算で約1500円で食べられた時期もあるローカルフードだが、気軽に立ち寄れる店ではなくなった。
ガイドブックの常連、ワイキキビーチ沿いにある「ステーキシャック」では、ステーキとライスに少しのサラダがついた商品が3500円だった。水着のままプラスチックのフォークで食べられるようなカジュアルなグルメだったが、日本の高級ホテルにおけるランチ並みの価格となっている。
さらに強烈だったのは、ホテルのプールサイドにあるオープンエアのレストランに家族3人で出かけたときのこと。旅費を考慮し、注文は意識的に控えめにした。
まずは父親がハワイの地ビールを2杯、母親と私が1杯ずつ注文。アルコールドリンクの中ではこのビールが1番低価格だった。料理はメインのロコモコやステーキなどを避け、前菜メニューであるマグロのナチョス、マッシュルームの肉詰め、イカのフリット(カラマリ)を頼み、3人でシェアした。
それでも、チップを加算した合計金額は3万円弱。量が多くお腹はいっぱいになったし、天気の良い日にテラス席で食事ができてとても気持ちが良かった。ただ、味はいかにもアメリカらしいダイナミックな大味だったことを考えると、コスパの面ではなんとも言えないディナーとなった。
職場への「ばらまき土産」にも容赦ないインフレの波
インフレを感じたのは外食費だけではない。旅行中の会社員にとって隠れた鬼門となる「職場へのばらまき土産」を選ぶのも、ハワイでは特に金銭的に難しい。
そもそも個包装のお菓子をなかなか見つけられず、少ない選択肢や限られた時間の中で選んだ結果、1つ約300円という、ばらまき土産としてはかなりの高コストになってしまった。20人程度に配るとすると、お土産代だけで6000円近くが消し飛ぶ。
そんなハワイでも、せめてもの節約術はある。ハワイのドラッグストアやスーパーでは、一般価格と会員価格が明確に分かれていることも多い。そのため、店内ですぐに会員になれる場合は、その場で登録するのが良いだろう。
筆者は現地で、定番のドラッグストア「ロングスドラッグス(Longs Drugs)」の会員になってみた。カウンターでメールアドレスと電話番号を紙に書き、店員さんに渡すだけでいとも簡単に登録できる。これだけで数ドル安くなることが頻繁にあるため、できるだけ費用を抑えたい人にはおすすめしたい。筆者はドライマンゴーとマカダミアナッツを、かなりお得に購入できた。
快適なタッチ決済の裏で抜かれる手数料の落とし穴
ハワイにおいて、せめて現地での決済の手間だけでも減らそうと、多くの日本人旅行者が使用するのがクレジットカードだ。
JCBカードを見せるだけでワイキキ・トロリー(ピンクライン)に無料で乗れるため、移動費を浮かせるために持参する人も多いだろう。楽天やJCBカードを持参すれば無料で利用できるラウンジもある。
また、買い物や食事の際、サインレスで済む「タッチ決済」を活用するのも一般的になった。筆者は日本で普段から使用しているマルイの「エポスカード」を持っていき、ほとんどの支払いでスマホをレジの端末にかざしてタッチ決済をしていた。現金を両替する手間もなく、セント単位の小銭の計算に煩わされることもなくとても便利だ。
しかし、帰国後に明細を見て、多くの人が青ざめることになる理由がこの行動にある。
クレジットカードを海外で利用した際、私たちは単に為替レートの分だけを支払っているわけではない。各カード会社が設定している「海外事務処理手数料(外貨取扱手数料)」というコストが、すべての決済に上乗せされている。
実は、この数年で多くのクレジットカード会社がこの手数料を値上げしている。筆者が持つエポスカードもその1つで、かつては2.20%だった手数料が、25年7月1日の利用分から3.85%へと大幅に引き上げられている。
3.85%という数字は、一見小さく思えるかもしれない。しかし、例えば前述した1食3万円のプールサイドレストランであれば、自動的に約1155円の手数料が上乗せされて請求される計算になる。元値にチップを15%~25%程度上乗せした後、さらに手数料が乗っかるというわけだ。
「便利だから」「みんなやっているから」「ほかの支払い方法を考えるのは面倒だから」と何も考えずに数日間の滞在中に数十回、ショッピングや家族全員分の食事、ホテル、お土産の購入などでタッチ決済を繰り返せば、帰国後の請求額には、数千円から数万円の「見えない手数料」がずっしりと上乗せされることになる。
さらに気をつけたいのが、ワイキキのレジの決済端末の画面に「JPY(日本円)で支払いますか? USD(米ドル)で支払いますか?」という選択肢が表示されるケースだ。一見、慣れ親しんだ日本円を選んだ方が親切で安心できるように思えるが、これこそが「DCC(Dynamic Currency Conversion)」と呼ばれる仕組みの罠と言えよう。
ここで日本円を選んでしまうと、カード会社の手数料ではなく、現地の加盟店や決済代行会社が独自に設定した不利な為替レート(時には5%~10%もの上乗せ手数料が含まれる)で計算されてしまうことがある。ハワイのレジ前では、USD(現地通貨)で支払いたいところだ。
賢いビジネスパーソンが実践すべき「外貨防衛術」
では、私たちは物価の高い海外旅行先でどうサバイブすべきなのか。提案したいのは、クレジットカード決済一辺倒から脱却することだ。
まず、ソニー銀行やRevolut(レボリュート)などが提供している「外貨デビットカード」の活用をおすすめしたい。
例えばソニー銀行の「Sony Bank WALLET」の場合、円高のタイミングを見計らってあらかじめアプリ上で米ドルを購入して外貨預金口座に入れておけば、現地のタッチ決済の際、そのドル口座から直接引き落しが行われる。
クレジットカードのように決済ごとに高い事務処理手数料を抜かれることはなく、ショッピング手数料を一律0円に抑えることができる。
円からドルへと口座へ預け入れる際に1ドルあたり一律15銭以下(優遇ステージによっては最安4銭)の為替コストは発生するものの、通常のクレジットカードに比べればコストはほぼ無料レベル。これなら、手数料負担や為替変動を旅行中に気にすることなく、自分が納得して両替した時点のドルでスマートに買い物ができる。
パスポートの手数料が下がったことは、日本人が再び海外へ目を向ける良いきっかけにはなるだろう。しかし、本当に必要なのは、円安や物価高に対抗できるマネーリテラシーだ。
取材・文/田中節子
パスポートの申請手数料が安くなっても、海外は遠い?日本人は本当に海外へ行かなくなったのか
外務省は2026年6月10日、パスポートの申請手数料を改定すると発表した。 7月1日以降の申請分から新しい手数料が適用され、電子申請の場合は窓口申請よりも低い手…




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