タミヤの「ミリタリーミニチュア(MM)」シリーズと聞けば、戦車や兵士のプラモデルを思い浮かべる人が多いだろう。2028年に60周年を迎える同シリーズは、数々の名キットを生み出してきた。
そんなラインナップの中で、ひときわ異彩を放つ存在がある。それが「土のう」だ。戦車でも兵士でもなく、ただ土のうだけを48個収録したプラモデル。「誰が買うのだろう…」と思ってしまうほど地味なキットだ。
しかし、この「1/35 土のうセット」は1973年の発売から50年以上経った今も現役で販売され続け、多くのモデラーに支持されている。しかも、その造形には思わず唸るような工夫が詰め込まれていた。さらに近年発売されたキットに収録された「土のう」と比較すると、半世紀にわたるタミヤの造形技術の進化も見えてくる。
50年以上、販売されている「土のうセット」
1973年にMMシリーズから発売されたタミヤ「1/35 土のうセット」(770円)。50年以上前のキットながら、今でも普通に購入可能だ。いざ購入してみると箱には「情景用」と書かれている。ちなみに同じ情景用キットには「バリケード」「レンガ」などが発売されている。土のうと同じく、これらも現役の商品だ。

内容物はいたってシンプル。注意書きが書かれた一枚の紙と土のうがみっちりと並んだランナーが2つだ。ランナーには各24個の土のうが並び、合計48個が組み立てられる。
華やかさなど皆無のキットだが、造形のこだわりは徹底している。実はこの「土のうセット」には2種類の「土のう」が収録されている。上積み用土のうと下積み用土のうだ。
下積み用は上に積まれた土のうの重みで押しつぶされた形状になっており、一方で、上積み用は重みがかからないため袋がふっくらとしていて、四隅だけが少し垂れ下がった形状になっている。戦車や兵士で見ることのできるMMシリーズ特有の精密さやストーリー性は土のうであっても妥協しない。たかが土のうと侮れない。

もっとも、これは1973年時点の土のうである。50年以上を経た現在、タミヤの土のうはさらに進化を遂げていた。
まだ見ぬ「土のうの表情」を求めて3Dスキャンを繰り返したどり着いた土のう
近年、タミヤMMシリーズは3Dスキャンを使い、より精密で完成度の高いキットを生み出している。それは土のうであっても例外ではない。それが感じられるのが2021年に発売された『ドイツⅣ号戦車G型初期生産車』(4620円)だ。
タミヤ企画開発部 二課 主任・藤田祐樹さんは『DIME』2026年9・10月合併号のタミヤ特集で次のように語っている。
「『ドイツⅣ号戦車G型 初期生産車』モデル化(2021年)の際に車輌の設計者から『土のうを付けたい』と相談されました。そこで珈琲専門店でもらった麻袋にタミヤサーキットの砂を詰めて、「まだ、僕の知らない土のうの表情があるはずだ!」ってつぶやきながらスキャンしました(笑)」(引用元:『DIME』2026年9・10月合併号「僕らのタミヤ再入門」)

1973年の土のうセットから約50年後に発売された『ドイツⅣ号戦車G型 初期生産車』では本物の土のうを3Dスキャンしてさらなる表情を追求する。主役ではない「土のう」にまで妥協しない姿勢こそが、半世紀以上にわたりMMシリーズが世界中のモデラーに愛され続ける理由なのかもしれない。
58年の歴史を持つタミヤ「MM」シリーズ、3Dスキャンの導入で進化が止まらない!
タミヤの名を世界に轟かせたシリーズこそミリタリーミニチュア(MM)。華々しいのは精巧な車輌群だが、その1/35「MM」ワールドを形づくる上で欠かせない要素にして…
「DIME」最新号の特集はプラモデルからRCカー、ミニ四駆、工作まで僕たちを夢中にさせてきたタミヤ製品の魅力を約40ページのボリュームで特集!

常に僕らにワクワクと夢を与えてくれる模型メーカー・タミヤ。実物を取材した上での製品づくりがファンの心を掴んで離さないが、その後もRC、ミニ四駆、工作シリーズなど「エポックメイクな名作」を生み出しつづけている。技術への執念と飽くなき挑戦が紡いだ、同社の魅力に迫る。
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文/峯亮佑




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