光の権威である東海大学名誉教授佐々木政子先生によると、光によるダメージは女性よりも男性の方が大きいという研究結果があると言う。「最近では男性も日傘をさして歩くようになっていますが、まだまだ少ないです。
紫外線や近赤外線によるダメージは年々増加しています。地球に届く太陽からの光を知って、対策することが大切です」と呼び掛けている。
紫外線だけでなく赤外線も危険
地上に届く太陽光エネルギー組成は大きく3つに分けられる。最も多いのが目に見える「可視光(VIS)」で全体の52.0%。次に多いのが熱として感じる「赤外光(IR)」の42.0%。最も少ないのが「紫外光(UV)」で6.0%となっている。夏の光対策としてはUVが注目されているが、光の量としてはIRの方が多かった。
人へのダメージが大きいのは、赤外線の中でも波長が短い近赤外線(NIR)で、太陽を浴びた時、ジリジリと焼けるような暑さを感じる光である。地上に届く赤外線のほとんどがNIRで、皮膚にあたると紫外線よりも深い層にまで届いてしまう。そのため、肌の弾力を保つコラーゲンを破壊したり、変質させることで、シワやタルミなどの原因となる。さらに目から入ったNIRは網膜にまで到達し、角膜炎や結膜炎、白内障の原因となってしまう。
赤外線をカットする新素材登場
住友金属鉱山(東京都港区、代表松本伸弘氏)では、この近赤外線を吸収する新しい素材SOLAMENT(ソラメント)を開発した。酸化タングステンを主原料とした素材である。フィルターとして使えば太陽からの近赤外線を吸収して通さず、可視光線だけを透過させることができる。
機能性材料事業本部イノベーション戦略統括部SOLAMENTプロジェクトリード兼戦略企画チームリーダー石橋佳祐さんによると、1)高い耐久性・安定性があり、2)代替がきかない唯一無二の素材であること、3)国内外で特許を取得している、という3つの特徴をあげていた。
「これまでも自動車のフロントガラスなどに使われてきましたが、今後はさらにこの素材の機能を活かして、建築物の窓などライフソリューション分野や、着ることで機能を発揮できるアパレル分野、さらに光合成に必要な可視光線を通しながら発熱・断熱できる素材特性を生かした農業分野へと展開していきたい」としている。
作業服やアパレルなどからも注目される近赤外線対策
フランスを代表するアルパインブランド「ミレー」(ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン、東京都品川区、代表ペア・ラスムセン氏)はこのSOLAMENTを使ったアパレルSOL SERIES(ソル シリーズ)を本格展開する。
「私どもミレーは屋外で着るアウトドアブランドで、キャンプ系、ファッション系などを展開し、登山系トレッキングを行う人たちが対象です。野外を歩くということは、自分の装備で自分を守るということなのですが、SOLAMENTを知って、私どものユーザーに貢献できる素材だと思いました。登山で行く標高2500メートル級の山々では、木も生えず、日陰もありません。ソラメントが着る木陰になってくれて、休むことができると好評です」と、ミレー・マウンテン・グループ・ジャパンのシニアブランドマネージャー櫻井久男さん。
SNIDEL(スナイデル)などのファッションブランドをもつマッシュスタイルラボ(東京都千代田区、代表近藤広幸氏)と繊維会社の瀧定名古屋(名古屋市中区、代表瀧健太郎氏)はSOLAMENTを使ったオリジナル素材「LUMISHADE by SOLAMENT(ルミシエード バイ ソラメント)」を開発した。
「黒い服は熱中症になりやすいの。モネの絵は日傘をして白いドレスを着ているでしょう?夏は黒じゃなくて白い服をもっと着て欲しいわね」と佐々木先生のアドバイス。
マッシュスタイルラボ取締役生産管理本部本部長 岩木久剛さんは「ファッション業界でも深刻化する酷暑対策は必須課題です。私どもでは太陽の光から肌と身体を優しくいたわるというコンセプトで、今春夏シーズンから7ブランドで商品展開します」と言う。
一方、住友林業住宅事業本部生産統括部シニアリーダー廣岡学さんは「弊社は木造建築が得意ですが、建設現場は特に労働環境が厳しい現場です。2025年、法改正で企業の熱中症対策が義務化されました。SOLAMENTの作業着、空調服は労働環境改善の一歩になりそう」と期待していた。
紫外線に対する注意喚起は広まったが、近赤外線の対策は始まったばかり。新たな酷暑マネジメントとして、近赤外線がビジネスチャンスにつながるかも。
文/柿川鮎子




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