韓国の自動車ブランドKiaが上陸した。Kiaとはどんな自動車会社なのか?
アウトラインを簡単に説明すると、創業は1944年に前身の京城精工という会社でスタートし、1952年に起亜産業に改称。1962年に初めて三輪トラックの生産を行っている。この時の車両はマツダのオート三輪のノックダウン生産から始まっている。
そして1998年に現在のヒョンデグループに参入した歴史があり、現在はヒョンデグループのブランドではあるが、規模はブランドを超える自動車産業になっている。2025年の販売実績ではグローバルで300万台以上あり、2030年目標では400万台を掲げており4兆ウォンの投資をして新工場建設を進めているのだ。また乗用車以外では、今回日本に投入するPBV事業で23万台をグローバル目標にも置いている。
このPBVとは、Platform Beyond Vehicleの略で、「車両の先へ、クルマの存在を超えた」といった意味を持ち、これまでの常識にとらわれない新しい価値、概念の車両事業を意味している。
だから、国内に投入する「PV5」は、商用にも乗用にもなりえるキャラクターをもったモデルなのだ。実際の登録は3、5ナンバーか、1、4ナンバーのどれかになるのだろうが、車両の個性としては既存車とは異なる概念であり、これまでにない新しい価値をもったヴィークルというわけだ。
トヨタ・ハイエースの牙城を崩せるのか?
今回韓国で見たPV5は乗用の場合、2列シートの5人乗りと2名乗車のカーゴだったが、9月からは3列シートの生産も始めるというので7人乗りのミニバンになる。また運転席から後ろにバルクヘッドを設け平台トラックにしたモデルや、5人乗りだが商用バンのごとく工具類を満載した仕様なども展示されていた。もちろん、カーゴでバルクヘッドなしも9月から生産される。
ボディはフレキシブル・ボディシステムと名付け、モジュラー式の車両設計を可能とし、最大16種類の派生モデルを製造することができるのだ。カーゴや乗用はもちろん、ハイルーフモデルも可能だという。この車両は全てBEVで作られE-GMP.Sで、Electric-Global Modular Platform for Serviceの略。フラットな床にバッテリーを搭載し、車体構造の一部を担う役目をもったプラットフォームだ。
国内にはまずPV5、全長4.7mのモデルから輸入され、その後状況次第でPV7全長5m+α、PV9全長6m超の3モデルが準備される。このPV5のターゲットとしては物流業界や送迎用といったビジネス利用と、一般ユーザーの乗用ミニバン利用もターゲットだ。こうした利用を振り返ればトヨタ・ハイエースが強みを持つカテゴリーだと思うが、その牙城を崩せるのか?という興味もある。
とりわけ、韓国車は不人気になりがちで、性能は良くとも敬遠する人が多い。とくに中高年の男性に多いと言われているが、若年層は逆に韓国LOVEな人が多い。K-POPや美容人気といった韓国カルチャーもウケがいい。
そうした国内背景の中で販売をどうしていくのか。先行して事業展開しているヒョンデはディーラーを持たずネットでの販売を中心とし、一部エクスペリエンスセンターで試乗するといった形態だが、正直、うまくいっているとは言い難い。
KiaのPV5はどう販売するのか?じつは、グローバルで見るとKiaの販売を総合商社大手の双日がすでに取引を行っている。現在はパナマが大きな市場だということだが、その双日が国内での販売を手がけるのだ。双日は100%子会社の「KIa PBVジャパン株式会社」を設立し、ディーラー展開で販売を行っていくという気合いの入れようなのだ。2026年6月の時点で7店舗のディーラーがあり、全国で52箇所の整備工場と契約ができているという。また直営のディーラーもあり、今後は全国へディーラー網を拡大していく予定なのだ。
ひとつ特徴的なのは、いわゆる販売整備だけのディーラー形態とは少し異なり、カスタムができる事業者になっている様子だ。PV5をどのように自分カラーにしていくのか、そうした楽しみを持った車両だけに、カスタムは必須案件ということだろう。だから既存のハイエースのカスタム事業者、例えばキャンピングカーに設えるとか、車中泊仕様に改造する、あるいは移動オフィスにするといったカスタム可能なディーラーもあるようだ。
じつは、このタイミングではハイエースの供給が滞っており、そうした事業者はデモカーすらも製造できないという窮地にいて、このKia PV5は大きなビジネスチャンスと考えている可能性が高い。それだけに販売に苦戦する韓国車ではあるが、大きなビジネスチャンスをつかむのかもしれないのだ。また双日の自動車部では、こうした販売店、サービス拠点、そしてファイナンス、インフラ、フリート(事業者)との協業にも携わるので、ユーザーのアフターサービスも含めて、十分なサービス体制が築かれていると言っていいだろう。ちなみに、初年度の販売目標台数は1000台だ。
さて、そのPV5に、エクスペリエンス・センターの敷地内を少しだけ試乗することができた。試乗したのは商用仕様だったが、ファーストインプレッションはボディの剛性が高く、しっかりとした印象だ。長方体は車内の空間が広く、ねじれに弱いとされるが、逆にしっかり感があるといった印象だ。そして車速は高くないが走行音も静かで商用車のイメージはなかった。風切り音も全くなくEVらしい静粛性がある。さらにインバータやモーターの音も侵入してこないので、乗用であれば会話明瞭度も高そうな印象を受けた。
そのPV5のバッテリーは3タイプの容量があり、LFP(リン酸鉄系)43.3kWhがカーゴ専用、パッセンジャー用がNMC(ニッケル、マンガン、コバルト系)51.5kWh、そしてロングレンジ用は71.2kWhでNMCとなっている。航続距離は72.1kWhでパッセンジャーモデルが521km、カーゴが528km(WLTCモード)となっている。また出力120kW(160ps)/250Nmのモーターをフロントに搭載している。もちろんCHAdeMOに対応し、100Vのアウトレットも装備している。
KiaではこのPV5を事業の中核モデルに位置付けており、日本専用の部品も数多く装備していている。気合いは十分に伝わってくる。気になる車両価格は、パッセンジャー用が679万円~、カーゴが619万円~となっている。果たしてKiaブレークが起きるのか、興味津々だ。
取材・文/高橋アキラ




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