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第3世代のe-POWERはどう進化した?日産の新型「キックス」試乗レポート、静粛性・燃費・乗り心地を検証

2026.07.18

2026年6月18日、2代目となるmade in JAPANのクロスオーバーSUVのキックスが発売された。SUVは今や日本で販売される新車の最大のシェアとなり、その半数が、キックスが属するコンパクトSUVなのである。つまり、新型キックスは売れ筋の土俵に真っ向から挑む待望の新型車と言っていい。

新型キックスは先代(初代)の新興国向けのVプラットフォームを改め、新たにルノーと共同開発した、日産ノートやルノー・ルーテシアにも使われているCMF-Bプラットフォームを採用。駆動方式は2WD、および4WDのキックスとして初採用となるe-4ORCE(ドライブモードにキックス初のスノーモードあり)を用意。パワーユニットは先代(初代)のガソリンエンジン転用の1.2Lエンジンから、HR14DDe、3気筒1.4L、98ps、11.7kg-mの発電特化型エンジンに換装。そして走行を担うフロントYM52、143ps、32.0kg-m、リヤ(e-4ORCE)MM48 68ps、14.3kg-mを発揮するモーターによる、モーター・発電機・インバーター・減速機・増速機の5つの主要構成部品を一体化した5-in-1電動ユニットを用いた最新の第3世代e:POWERへと進化。WLTCモード燃費は2WDが23.4~25.7km/L、4WDのe-4ORCEが20.1~21.5km/Lへと向上している。燃料タンクが先代(初代)の35Lから45Lに容量アップされたため、航続距離が大幅に延長されているのも見逃せないポイントである。

本記事では東京湾岸エリアの一般道、首都高を走った試乗記をお届けしたい。

デザインもプラットフォームも刷新、コンパクトSUVの本命へ進化

夏の青空の下で見る新型キックスは、アメリカンフットボールのヘルメットから着想を得たという水平基調のワイドグリルのダイナミックでクリーンなフロントフェイスや水平基調でリヤに向かってキックアップするサイドビュー、車幅いっぱいにロの字型に配したテールランプによって、コンパクトクロスオーバーSUVらしからぬ堂々感、サイズ感を漂わせる。が、ボディサイズは全長で75mm、全幅で40mm拡大された全長4365×全幅1800×全高1615(e-4ORCEは1610)mmと、日本の路上、駐車環境でも扱いやすいサイズにとどまっている。

クラストップレベルの室内空間を備えたインテリアも新鮮だ。12.3インチのデュアルディスプレイを途切れなく組み合わせた統合型インターフェース= Nissan Connectインフォテインメントシステムが用意され(グレード別)、ナビゲーションの使い勝手にも優れるグーグル搭載の「Nissan Connectインフォテインメントシステム」(Googleナビ含む)もOP設定されているのだ(X、X+で約30万円、Gで23万円のOP/ETC2.0ユニット、ドライブレコーダーなど込み。通信料別途)。

シフターは新型リーフや新型エルグランドにも採用されている横一列のボタン式シフターをセンターコンソール前端にすっきりと配置。シートは前後席ともに日産自慢のゼルグラビティシートが奢られているから嬉しい。運転席に着座すれば、かけ心地はソファのようにふんわり柔らかく、しかし背もたれの優しいフィット感、体全体を支える自然なサポート感が好ましい。インテリア全体のモダンなデザイン性の良さ、質感の高さも見どころで、ファブリックが貼られた部分が多く、そのファブリックが貼られたゴールドのトリムが走るインパネのテーブルトップはセンターディスプレイを操作するときのアームレストにもなる実用も兼ねた仕立てである。

あれれ、と思った点もあった。それはセンターコンソールにふたつあるUSB type-C。わざわざ1と2と表記されているのだが、こちらから見ると表記が逆なのである。どうやっても正位置側から見ることは難しく、ちょっと不思議である。

新型キックスはパッケージ面でも進化。とくにエアコン吹き出し口を備える後席のゆとりが増したのがポイントで、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で頭上に131mm(先代比+1mm)、膝回りに180mm(先代比+23mm)ものゆとりがあり、大人4人がリラックスして乗っていられる、USB type-C×2も備わる後席居住空間が実現されている。

第3世代e-POWERの実力は?まるでEVのような静かで滑らかな走り

さて、まず走らせたのが、新型キックスのメインカラーとなる鮮やかなレゾナンスブルー/スーパーブラックの2トーンカラーを纏った、19インチタイヤを標準装備するGグレード(2WD)だ。メーカーOPのBOSEパーソナルプラスサウンドシステム(10スピーカー)、AC100V/1500Wコンセント、ホットプラスパッケージ(ステアリンク―ヒーター、リヤヒーターダクト、ヒーター付きドアミラー)、クリアビューパッケージ(ワイパーディアイサー、リヤLEDフォグランプ)、インテリジェントルームミラー+Nissan Connectインフォテインメントシステム+前後ドライブレコーダー+ETC2.0ユニットを加えたモデルである。

シフターの左端、運転席からやや遠い位置にあるドライブモードはECO/STANDARD/SPORTの3種類。デフォルトのSTANDARDで街中を走り出せば、発電特化型1.4Lエンジンはなりを潜め、100%モーター駆動ならではのスムーズさ、遮音・吸音性能の強化による静かさに改めて感心させられる。モーター駆動によるアクセルレスポンスは極めていいのだが、過敏さがなく、じつに扱いやすく走りやすく、スピードコントロールがしやすい。もう、ほぼBEV(電気自動車)の走りそのものだ。

大径のパワーステアリンクは低速では軽く、しかも走りにキビキビ感、軽快感があり、扱いやすさ、走りの気持ちよさは文句なし。そして次なる感動は乗り心地だ。大径ショックアブソーバーはうねり路などでサスがゆっくりストロークするときに減衰力を上げ、段差など早いストロークを必要とするときには減衰力を下げる工夫、セッティングがなされ、ボディ剛性の高さもあってクラス最大の19インチタイヤを履いていながら欧州上級車に匹敵する、上質に引き締まっていながら段差などをしなやかにこなしてくれる、不快なショックなど皆無のフラットで快適感たっぷりの滑らかな乗り味を示してくれるのだ。2WDモデルは4WD=e-4ORCEに比べ締まったサスペンションセッティングが施されているというが、この乗り心地は、同クラス、その前後クラスの国産SUVの中でもピカイチと言っていいだろう。

市街地の低速域で感じられた、まるでBEV感覚の車内の静かさは、首都高に乗り入れて巡行状態に移っても変わらない。静粛性やジョイントをしなやかにこなすフラットに徹した乗り心地の良さもまたそのまま。ウェット性能に特化したハイパフォーマンスタイヤであるDUNLOP SP SPORT MAXX 060からのロードノイズも見事に抑えられ、発電特化型1.4Lエンジンが始動してもその巧みなノイズ制御、振動制御によって車内の静かさが保たれる。先代キックスのe:POWERはモーター走行時の静かさと1.2Lエンジンがかかったときのノイズレベルの差が大きかったものだが、新型は5in1ユニットの剛性60%UP、先代のガソリンエンジン転用の1.2Lから発電特化型の1.4Lになったエンジン排気量の余裕も効いて、エンジンがかかりにくい制御(先代1.2Lエンジン比-75%)に加え、1.4Lエンジンによるエンジン回転数が街中で400回転、高速道路で1000回転低まっていることも、シーンを問わない、クラスを超えた車内の静かさを実現できた理由に違いない。

首都高の合流や追い越し加速での動力性能は格段にパワフルではないものの、静かに、スムーズに速度を上げ、必要十分な加速力を示し、その加速フィールそのものも電動車らしく気持ちいい。中高速域ではステアリングが適度に引き締まり、高速道路の直進、カーブで安心感をもたらしてくれるとともに、一発の舵角できれいに向きを変えてくれることを確認。レーンチェンジの安定感もハイレベルだった。首都高を降り、一般道でUターンを試みた際は、最小回転半径5.3mの小回り性を発揮。あらゆる走行シーンでの走りやすさ、扱いやすさを実感させられることになる。

しかも、これまでのe:POWERの弱点!?でもあった、「街中では燃費がいいのに、高速走行になるとそれほどでもない」という点も克服方向にあり、具体的には一般道走行で約11%、高速走行で約10%の燃費向上が図られているというから頼もしい。

ドライブモードをECOにすれば、穏やかなアクセルレスポンスによって一段と平穏・平和な走行感覚となり、例えば車内でどこかに掴まれない愛犬を乗せているとき、幼児を乗せているときに相応しく、もちろん、燃費も向上するはずだ。一方、SPORTモードでは明らかにアクセルレスポンスが高まるものの、唐突感がなく、SPORTモードとしてはスポーティに走りと扱いやすさの両立があんばいよく果たされている印象だ。とはいえ、STANDARDモードでもモーター駆動ならではのアクセルレスポンスの良さは文句なく、走りの気持ちよさも味わえるため、筆者がもっとも気に入った、常時、使いたいモードとなった。もちろん、高速走行で威力を発揮するプロパイロットのACC(アダプティブクルーズコントロール)としての機能もますます熟成され、自然で安全な追従走行を可能にしてくれたのである。

2WDとe-4ORCEはどう違う?走りや乗り味を比較

続いで試乗したのはXグレードの4WD、つまりe-4ORCEが与えられたピュアホワイトパール/スーパーブラックの2トーンモデルだ。こちらはAC100V/1500Wコンセント、インテリジェントルームミラー+統合型インターフェースディスプレイ+日産コネクトインフォテイメントシステム(シンプル)+車載通信ユニット+前後ドライブレコーダー、インテリジェントアラウンドビューモニター、さらにプロパイロット緊急停止支援システム、ブラインドスポットモニターなどのメーカーOPを搭載。タイヤはハンコックVENTUS PRIM4の215/60R17サイズである(タイヤは19インチ、17インチともに1銘柄)。走り出す前にボディ周りを眺めていてちょっと気になったのは、17インチタイヤ&ホイールの場合、フェンダーアーチモールとタイヤの隙間が大きく感じられたこと(この印象は直接的ライバルのホンダ・ヴェゼルでも感じられる/ローダウンしたRSを除く)。サイドビューの佇まいの精悍さ、スタイリッシュさでは大径19インチタイヤが優位ではないだろうか。

気を取り直して走り出せば、第3世代e:POWERによる100%モーター駆動によるスムーズさ、静かさは2WDモデルと変わらない。e-4ORCEモデルは2WDモデルより110kgほど重いため、2WDモデルに対して加速力、軽快感ではやや譲るものの、それでも必要十分な動力性能を持っている。乗り心地はGグレードの19インチタイヤ装着車ほどの欧州上級車に匹敵する上質感ある乗り味には及ばない印象だが、段差越えなどでの無粋なショック、突き上げ感はないに等しく、心地よい快適性そのものは大きく変わらない。その上で先代に対してモータートルクをフロントで13%、リヤで40%向上させたe-4ORCEによるピッチングの少なさ(ボディの上下動)、ブレーキング時のつんのめり感の制御、さらなるカーブなどでの安定感、高速直進安定感が際立つことになる。その上で、首都高のカーブでの安定感はさすがe-4ORCE。曲がりの性能はより以上と言っていい。

今回、試乗することはできなかったが、19インチタイヤを履くGグレードのe-4ORCEモデルは、424.82万円という車両本体価格はともかく、上質な乗り味とロングドライブでも疲れない安定感、ドライブモードにスノーモードも備わるオールラウンダーな走破性という意味で大いに気になるところだ。

とはいえ、街乗り&高速走行のオンロードメインの一般的使い勝手では、e-4ORCEに対して約35万円安となる2WDの装備面で充実するX+、または装備がさらに充実し、ルーフレールも備わるGで十分だろう(19インチタイヤがOPで選べればいいのだが、現状、不可)。その真意は、ぜひともGoogleをOPで追加してほしいからだ。グーグルマップは地図データが無料でリアルタイムに更新でき、「OK グーグル」で走行中でも目的地設定など自在に行える、ナビゲーションとして最先端の便利さに大きなメリットがあると思えるのである。新型キックスの場合、そのOP価格が高めに設定されているため(繰り返すがX、X+で約30万円、Gで約23万円)、その上乗せ分と、コンパクトクロスオーバーSUVとしての絶対的価格のバランスを考えれば、ということだ。なお、今回の渋滞区間も多かった東京湾岸エリアの一般道、首都高を短距離走行した実燃費は、2WDで17.3km/L、e-4ORCEで14.2km/Lとなった。

実燃費や荷室容量は?購入前に知っておきたいポイント

ちなみに、2WDに対してe-4ORCEはラゲッジルームのフロアが4WD機構のためにかさ上げされていて、ラゲッジルーム容量、天地方向でやや不利になる点も、荷物をたっぷり積みたい人は要考慮である。

2WDのラゲッジルーム
2WDのラゲッジルームの開口部

具体的には2WDが476Lのところ、e-4ORCEは340Lに減少。2WDのAC100V/1500Wコンセント付き車は400Lとなる(すべてVDA方式)。9.5インチのゴルフバッグは2WDのAC100V/1500Wコンセントなしで2個。それ以外は1個の積載となるという(後席使用時)。

e-4ORCEのラゲッジルーム
e-4ORCEのラゲッジルームの開口部

それにしても、新型キックスの完成度、進化はハンパではなかった。内外装デザイン、磨かれた100%モーター駆動の静かでスムーズな走行性能、乗り心地、前後シートのかけ心地、後席のゆとり、車内の静粛性、充実した先進運転支援機能など、大いなる商品力の高さが見て取れる。加えて、AC100V/1500WコンセントをOPで装備すれば荷室容量はやや狭まるものの、アウトドアや災害時に大いに役立ってくれるに違いなく、このクラス、価格帯のベストチョイスなコンパクトクロスオーバーSUVの1台であると思えたのも本当だ(直接的ライバルのホンダ・ヴェゼルのe:HEVモデルにAC100V/1500Wコンセントの用意はない)。

余談ながら、新型キックスは電動車にありがちな高周波のノイズがほとんど聞こえず、また、愛犬の特等席となる後席のゼログラビティシートのクッション性の良さや、後席エアコン吹き出し口の装備もあって、聴覚に優れ、1年中、毛皮を着ていて暑がりの犬を乗せるドッグフレンドリーカーとしての資質も高いと思われる。我が家の自称4代目自動車評論犬!?のキャバリアのアーモンドも納得、満足してくれるに違いなしだろう!!

文/青山尚暉
写真/青山尚暉 日産

プロミュージシャンからいきなり自動車専門誌の編集者を経験した後、モータージャーナリストに。新車試乗記や自動車関連コラム、防災記事などを幅広い媒体で執筆。クルマのパッケージング、洗車”オタク”でもある。また、ドッグライフプロデューサーとしても活動。愛犬とのドライブ術、ペットと泊まれる宿厳選紹介、ドッグフレンドリーカー選びについて多方面で情報発信中。著書に「ぼくたちの外車獲得宣言」(リヨン社刊)、「すごい海外旅行術」(講談社刊)、「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)など。輸入車の純正ペットアクセサリーの開発にも携わっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(1994年~。現在は小学館DIME推薦)。

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