航空便には「燃油サーチャージ」というものがある。これは多くの場合、シンガポールケロシン相場に合わせて定期的に改定される。
詳しく後述するが、通常は2ヶ月区切りの改定である。ケロシン相場は原油相場と常に一体であるが、多くの人が承知している通り原油相場は国際事情の変化で簡単に乱高下してしまう。だからこそ、細かいペースでの改定が必要なのだが、困ったことに今年はまさに「原油価格の大高騰」という強制イベントが発生した。もちろん、原因はアメリカとイスラエルによるイラン攻撃である。
ということは、当然ながら燃油サーチャージも高騰するのだが——これは見方を逆にできないだろうか? 即ち、イラン情勢がどうにか落ち着き出した頃合いを見計らって航空券を買うという考え方だ。
たとえば、9月に海外旅行を予定しているとする。その場合、7月に航空券を入手するよりも8月に入ってからそうしたほうが安くなる可能性があるのだ。

イラン情勢に振り回される航空券価格
筆者は@DIMEで筆を執るようになったのは、10年ほど前のこと。確か2017年ではなかったか。
その間、筆者は様々な内容の記事を書いてきたが、どれも「速報記事」ではない点に注意していただきたい。今日起こったことをその日のうちに書いて配信する、ということは@DIMEでは一度もやっていない。つまり、配信された記事は入稿からどんなに早くても数日、企画段階からは1ヶ月以上経っている場合もあるということだ。
その間に国際情勢が大きく変わることも、当然ある。イラン情勢はそろそろ停戦に向かい、ホルムズ海峡の通行も再開した……と言われていたはずだが、それが最近また急展開を迎えた。
アメリカとイラン、両者が応酬を再開したとのこと。このあたりの情勢について、筆者が解説できることは全くない。そして、原油価格が今後どう左右するのかについても語ることはない。
しかし、今現在———即ち、2026年7月と8月の燃油サーチャージが高騰のピークと言われているのもまた事実。ということは、9月以降は大幅値下げの可能性が高いということだ。
JALは2ヶ月毎に改定
ここで、JALの燃油サーチャージに関する規定を見ていこう。
JALの国際線では2ヶ月毎の燃油サーチャージ改定を実施している。以下はその規約内容だ。
航空燃油(シンガポールケロシン)の各日のスポット価格の2カ月平均に、同じ2カ月の為替レート平均で円換算した価格によって適用額を確定し、2カ月間固定いたします。
額改定を行う場合には、関係国政府に認可申請いたします。なお、2カ月間の平均燃油価格が1バレル当たり6,000円を下回った場合は、「燃油特別付加運賃」を適用いたしません。
(国際線「燃油特別付加運賃」 JAL)
その上で、7月と8月の燃油サーチャージは4月~5月のシンガポールケロシン2ヶ月平均値から算出され、発表は6月中旬。この期間の燃油サーチャージが最も高額だった。しかし、この間にアメリカとイランとの停戦協議が進められ、6月17日に覚書署名が交わされる。いわゆる「60日停戦」だ
ここから原油価格が急激に下がり、同時にシンガポールケロシン価格も落ち着くようになった。それを受けて、レガシーキャリアよりも柔軟な価格設定を行うLCCを中心に、かなり急な航空券の値下がりが見受けられるようになった。
LCCの場合、燃油サーチャージは基本運賃に内包されていることが多い。2ヶ月に一度の改定はなく、代わりに週毎に運賃を変動させる仕組みを設けていたりする。
下流で放流される魚は大きい
言い換えると、もしも9月か10月に海外旅行を計画している場合、7月初旬の時点で航空券を購入するのは「損をしている」可能性がある……ということだ。
上のJALの基準に従うのなら、8月中旬まで待つ考え方もアリ。もっとも、この場合は他の購入希望者も同じことを考えている可能性が高く、争奪戦になってしまいがちというデメリットもある。
そうしたことを前提に置きつつ、Trip.comやExpedia等の旅行予約プラットフォームで目当ての航空券を探してみよう。全く同じ条件なのに、数週間前よりも価格が安くなっている……ということが時たま起こるのだ。Trip.comの場合は「価格アラート機能」というものがあり、これは予め設定した希望価格を実売価格が下回った場合、通知してくれる機能。出発日が近くなると価格アラート機能が作動する可能性(安い航空券が発売される可能性)は低くなるが、その分だけ放流された魚のサイズはかなり大きかったりする。
この航空券の買い方は、株式取引にかなり近いものでもある。数週間先の値を読み、それに合わせて購入するか待つかの判断を下す。
こうした形の海外旅行は、日本ではまだまだ定着していないかもしれない。なぜなら、日本人は海外旅行を今でも「肩肘張る行為」と考えがちで、それ故に一寸のイレギュラーも入れようとはしない。事前に完璧な計画を形成しようとする。
が、国外への旅行がより身近な行楽として定着している国では、「航空券の買い方」にも幅広い自由があることが共通認識として理解されている。ここまで描いたような不確定性を楽しむのも、海外旅行の醍醐味と言えるかもしれない。
最後に、この記事を書いている最中にアメリカとイランは再び互いを攻撃するという事態に陥った。これが航空券価格にどのような影響を及ぼすのだろうか―—。
文/澤田真一
長引く航空券の価格高騰、預入荷物なしで海外旅行に出かけることは可能か
この記事を執筆しているのは2026年7月1日。アメリカとイランの停戦交渉が進められている真っ只中である。 この停戦交渉がどうなるのか、筆者には全く予想がつかない…




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