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〝つけっぱなし〟のほうが電気代を抑えられる?猛暑日にやってはいけないエアコンの使い方

2026.07.20

連日の猛暑で、エアコンなしでは仕事も睡眠もままならない季節になりました。一方で気になるのが電気代です。「こまめに消すべきか、つけっぱなしにすべきか」という毎夏恒例の論争をめぐって、SNSやネット記事では「つけっぱなしの方が安い」という説が広く拡散しています。しかし、この通説を鵜呑みにすると、かえって電気代を増やしてしまうケースがあるのです。本稿では、エアコンメーカーの実測検証と政府の公式データをもとに、世間に広まった思い込みを検証し、節電と快適さを両立させる「正解」を整理します。

なぜ「つけっぱなし論争」は決着がつかないのか

まず押さえておきたいのが、エアコンの消費電力の仕組みです。エアコンが最も多くの電力を消費するのは、運転開始直後、つまり室温と設定温度の差が大きいタイミングです。自転車のこぎ始めに最も体力を使うのと同じで、いったん設定温度に到達すれば、それを維持するための電力は小さくて済みます。

この特性があるため、「短時間オフにして、また起動する」を繰り返すと、起動時の大きな消費電力を何度も支払うことになり、つけっぱなしより高くつく場合があります。「つけっぱなしの方が安い」説の根拠はここにあります。ただし、これはあくまで「場合がある」という話です。オフにしている時間が長ければ、当然その間の消費電力はゼロであり、入り切りした方が安くなります。つまり、答えは「条件次第」であり、その分かれ目を知っているかどうかが電気代の差になるのです。

実測データが示す分かれ目は「外出30分」

ダイキン工業は真夏の大阪で、条件がほぼ同じマンションの2部屋を使い、「つけっぱなし」と「30分ごとに入り切り」の消費電力を実測する検証を行っています。結果は明快でした。外気温の高い日中(9時~18時)は、30分程度の外出であれば、切って再起動するより「つけっぱなし」の方が消費電力量は少なくなりました。一方、外気温が下がる夜(18時~23時)は、「こまめに入り切り」した方が少なくなっています。

さらに、買い物や外食など1日4回の外出を想定した比較では、外出のたびに切った場合が1日約119円、外出中も切らずにつけっぱなしにした場合が約154円と、入り切りの方が1日あたり約35円安いという結果が出ています(電力単価27円/kWhで換算した実験当時の試算)。差がついた最大の要因は、1~2時間に及ぶ外出中もエアコンを動かし続けたことでした。1日35円は小さく見えますが、7月・8月の2カ月間毎日積み重なれば2,000円を超えます。使い方の判断ひとつで生じる差としては無視できない金額でしょう。

ここから導ける実践ルールはシンプルです。同社の試算では、この実験の条件下で、日中は約35分まで、夜は約18分までの外出なら「つけっぱなし」が有利とされています。つまり、日中の30分程度の外出——昼食やコンビニ、近所の打ち合わせ程度——ならつけっぱなし。30分を超える外出や、外気温が下がる夜間(就寝時を除く。詳しくは後述)はオフ。「常につけっぱなしが得」でも「常にこまめに消すのが得」でもなく、外出時間と時間帯で使い分けるのが正解です。

なお、こうした検証は特定の住宅・機種・天候条件下での実測であり、住環境や断熱性能によって結果は変わります。あくまで判断の目安として捉えてください。また、切ってよいのは無人になる部屋の話です。小さな子どもや高齢者、ペットが在宅する場合は、節電より熱中症対策を優先しましょう。

NGその1:暑いからと、まず設定温度を下げる

猛烈に暑い部屋に帰宅すると、つい設定温度を18℃まで下げたくなります。しかし、これは効率の悪い使い方です。エアコンの消費電力の約8割は室外機の圧縮機で使われており、設定温度を下げると圧縮機の運転が強まって消費電力が大きく増えます。ダイキンが真夏の日中に行った検証では、暑いと感じたときに設定温度を1℃下げた場合と風量を「強」にした場合を比べると、風量「強」の方が消費電力量は約半分で済みました。風を強くすると電気を食いそうに感じますが、ファンの電力は圧縮機に比べればわずかで、体に風が当たることで体感温度も下がります。暑いときは、温度より先に風量を調整するのが賢い選択です。

また、帰宅直後にすぐ冷房を入れるのも得策ではありません。まず対角線上の2カ所の窓を開けてこもった熱気を逃がしてから運転する方が、無駄な電気を使わず効率的に部屋を冷やせます。西日が入る部屋なら、外出時にカーテンを閉めておくだけでも帰宅時の室温上昇を抑えられます。

逆に「節電のため」と風量を微風や弱に固定するのも誤解です。風量を絞ると設定温度に到達するまで時間がかかり、かえって消費電力が増えてしまいます。政府広報オンラインも、快適な温度までの到達が速い「自動」設定を推奨しています。最初は強く、安定後は弱く——この最適制御はエアコン自身に任せるのが最も効率的です。

NGその2:換気のたびに電源を切る

在宅勤務の定着以降、日中に窓開け換気をする習慣がついた人も多いでしょう。このときエアコンを切るのは逆効果です。ダイキンが真夏日に行った検証では、日中12時間、30分に1回の窓開け換気を行った場合、換気のたびに電源をオン・オフしたときの消費電力量が7.51kWhだったのに対し、つけっぱなしでは5.82kWhと、つけたままの方が1日あたり約46円安くなりました。室温の変動も小さく、快適さの面でもつけっぱなしに軍配が上がっています。

NGその3:就寝時の「切タイマー」頼み

「寝ている間ずっとつけておくのは体に悪い気がする」と、就寝3時間後などに切れるタイマーを使う人は少なくありません。しかしダイキンが一般住宅で行った検証では、切タイマー運転の場合、エアコン停止後に室内の暑さ指数(WBGT)が徐々に上昇し、明け方には熱中症への警戒が必要な水準に達する可能性が示されました。つけっぱなし運転では大きな上昇は見られませんでした。

熱帯夜が増えるなか、睡眠の質の低下は翌日の仕事のパフォーマンスに直結します。電気代を惜しんで体調を崩せば本末転倒です。外気温が下がる日や体調によってはタイマーも選択肢ですが、気温や湿度の高い夜は、無理のない温度設定で朝までつけっぱなしにする方が、健康面でも合理的な選択といえます。

NGその4:フィルターと室外機の放置

運転方法以前の問題として見落とされがちなのが、機器のコンディションです。環境省によれば、フィルターが目詰まりしたエアコンは冷房効果が下がり、2週間に1度の掃除で冷房時約4%の消費電力を削減できます。三菱電機の実験でも、フィルターを約半年間手入れしなかった場合、新品状態と比べて消費電力が約12%悪化するという結果が出ています。ワンシーズン放置すれば、その分をまるごと電気代で払い続けることになります。

室外機も同様です。吹出口の前に物を置いたり、カバーで覆ったりすると空気の循環が妨げられ、余分な電力を消費します。すだれなどで日陰をつくるのは有効ですが、冷やそうとして室外機本体に直接水をかけるのは故障の原因になるとメーカーが明確に注意喚起しており、絶対に避けたい行為です。

ライフスタイル別・この夏の「正解」パターン

ここまでの原則を、働き方別に落とし込んでみましょう。

在宅勤務が中心の人は、日中は基本的につけっぱなしで構いません。昼食や近所への外出程度で切る必要はなく、むしろ換気のたびのオン・オフこそが電気代を押し上げます。意識すべきは運転よりも環境側で、風量自動、サーキュレーター併用、遮光カーテン、そして2週間に1度のフィルター掃除です。1日中稼働させる人ほど、効率悪化のコストが大きくなるからです。

毎日オフィスに通勤する人は、逆に「出かけるときは切る」が基本になります。朝から夕方まで8時間以上の不在なら、つけっぱなしにする理由はありません。朝の運転も、出発の直前まで続ける必要はないでしょう。運転を止めた瞬間に室温が跳ね上がるわけではないので、身支度が終わる少し前に切っても体感はほとんど変わらず、そのぶん運転時間を短縮できます。

通勤者にとって判断が問われるのは帰宅後です。日中閉め切った部屋には熱がこもっているため、まず窓を開けて熱気を逃がしてから冷房を入れ、風量は自動に任せましょう。少しでも快適に帰宅したいなら、入タイマーやスマートリモコンの遠隔操作で帰宅の少し前から冷房を入れておく方法もあります。不在中の運転時間が増えるぶん電気代は上乗せになりますが、帰宅直後の不快感は確実に減らせるため、金額と快適さのどちらを優先するかで選べばよいでしょう。夜間は外気温が下がるので、入浴などで部屋を離れる際はこまめに切ってよい時間帯ですが、就寝時だけは切タイマーに頼らず、熱帯夜なら朝までの運転を検討したいところです。

なお、出社日と在宅日が混在するハイブリッド勤務なら、この2つのパターンを日によって切り替えるだけで済みます。迷ったら「これから部屋を空ける時間の長さ」で判断する、という原則に立ち返れば間違いありません。

共働きや子育て世帯のように在宅と外出が不規則に入り交じる家庭では、「30分」を家族共通の判断基準にするとよいでしょう。子どもの送迎や買い物程度なら切らない、習い事の付き添いや外食など30分を超えるなら切る、というルールを共有しておけば、家族の誰が最後に家を出ても判断がぶれません。また、家族が別々の部屋で過ごすより、リビングに集まって稼働台数を1台に絞る方が、運転方法の工夫以上に大きな節電につながります。

一人暮らしで帰宅が遅い人は、使用時間そのものが短いぶん、機器の状態と初動が電気代を左右します。帰宅直後にすぐ最低温度で運転するのを避け、熱気を逃がしてから自動運転に任せましょう。そして深夜から明け方は1日で最も外気温が下がる時間帯とはいえ、熱帯夜の予報が出ている日は無理に切らず、睡眠を優先する判断が翌日の仕事の質を守ります。

眠りを支える寝室環境と「リカバリーウェア」などの関連アイテム

エアコンの使い方とあわせて見直したいのが、寝室環境そのものです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人に6時間以上を目安とした睡眠時間の確保を推奨するとともに、良い睡眠のための環境づくりとして、寝室を暑すぎず寒すぎない温度に保つことを挙げています。夏に寝室の室温が上がると睡眠時間が短くなり、睡眠の効率が低下することが実生活下の調査で報告されており、同ガイドも、夏の寝室はエアコンを用いて涼しく維持することが重要だとしています。就寝時のつけっぱなし運転は、電気代や熱中症対策の観点だけでなく、国の睡眠指針とも整合する選択なのです。

あわせて知っておきたいのが、体温と眠りの関係です。人は就寝前に手足から熱が放散されて深部体温が下がり始めると、眠りに入りやすくなります。同ガイドでは、就寝1~2時間前の入浴が速やかな入眠につながることも紹介されています。エアコンで寝室の温度を整え、入浴のタイミングで体温のリズムをつくる。この2つが夏の睡眠の土台になります。

そのうえで、近年注目されているのが「リカバリーウェア」です。2022年に一般医療機器の分類として「家庭用遠赤外線血行促進用衣」が新設され、生地に鉱物などの特殊な加工を施し、体から放出される遠赤外線を輻射することで血行を促進し、疲労や筋肉のこりなどの症状改善を目的とする衣類が、届出制の医療機器として制度上整理されました。選ぶ際は、この一般医療機器としての届出があるかどうかが一つの目安になります。ただし、着るだけで疲れが消える魔法の服ではなく、うたえる効果の範囲も制度上定められています。睡眠時間の確保と寝室の温度管理という土台があってこその補助アイテムと位置づけるのが現実的でしょう。同ガイドがリラックスできる寝衣・寝具を良い睡眠の要素に挙げているように、夏なら通気性や吸湿性のよいパジャマ、接触冷感の寝具を選ぶことも、手軽で効果的な工夫です。

「28℃」はエアコンの設定温度ではない

最後に、最も広く誤解されている数字に触れておきます。夏の目安としてよく聞く「28℃」は、環境省が示す「室温」の目安であって、エアコンの設定温度ではありません。日当たりや部屋の条件によっては、設定温度28℃でも室温がそれを上回ることがあります。温湿度計で実際の室温を確認しながら調整するのが正しい運用です。

そのうえで、環境省の公表データでは、冷房の設定温度を1℃高くすると約13%の消費電力削減になるとされています。扇風機やサーキュレーターを併用して体感温度を下げれば、設定温度を上げても快適さは保ちやすくなります。ただし、資源エネルギー庁も熱中症への注意を前提に「無理のない範囲で」と明記しています。夏の夜間ピーク時(19時頃)の家庭の電力消費はエアコン・冷蔵庫・照明で6割以上を占めるだけに、エアコンの使い方の見直しは節電の本丸ですが、我慢比べではなく、仕組みを理解した合理的な運用こそがビジネスパーソンの取るべき戦略でしょう。

日中30分の外出ならつけっぱなし、長時間や夜間はオフ。暑いときは温度より風量、換気中は切らない、寝るときはタイマーに頼らない。寝室は涼しく保ち、2週間に1度のフィルター掃除を忘れずに。この夏はデータに裏付けられた「正解」で、電気代と快適さ、そして睡眠の質まで手に入れてください。

著者名/ 鈴木林太郎 経済ライター テックと経済の”交差点”を主戦場にやさしく解説。企業・自治体の取材とデータ検証を重ね、現場の課題を言語化する記事づくりが得意。難解な制度や技術を、比喩と事例で”今日使える知識”に翻訳します

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