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【昆虫博士・牧田習が解説】酷暑で蚊は減る?それとも増える?異常気象は吸血リスクをどう変えるのか

2026.07.23

「最近は暑すぎて蚊がいない」という声を耳にすることがあります。確かに猛暑日には蚊を見かけにくくなりますが、それは活動する時間や場所が変わっているためです。さらに近年は、猛暑だけでなく豪雨や暖冬などの異常気象も蚊の生態に影響を与えています。異常気象や長期的な気候変動によって私たちが蚊に刺されるリスクはどう変わるのかについて解説いたします。

猛暑になると蚊は減る?

「35℃を超えるような猛暑日になると蚊はいなくなる」と思われがちですが、実際には本当にいなくなっているわけではありません。例えば、日本で身近に見られるヒトスジシマカは、25~30℃前後で最も活発に活動するとされています。一方で35℃を超えるような高温になると、直射日光の当たる場所での活動は鈍るようになります。そのため、草むらや植え込み、建物の陰など、気温が比較的低い場所へ移動して暑さをしのいでいると考えられています。

猛暑の日には活動時間も変化します。日中はほとんど姿を見せなくても、気温が下がる早朝や夕方になると活発に飛び回り、吸血活動を行います。「昼間は全くいなかったのに、夕方になったら急に刺された」という経験がある人も多いでしょう。一方で、猛暑が長期間続くと個体数そのものに影響が出る場合もあります。水たまりが干上がって幼虫が育てなくなったり、極端な高温で卵や幼虫の生存率が低下したりするためです。

さらに近年は、活動する時期も変わりつつあります。暖かくなる時期が早まれば春から活動を始め、秋になっても気温が高い日が続けば11月頃まで吸血することもあります。つまり、「真夏の日中は少ないが、年間を通した活動期間は長くなる」という現象が起きつつあるのです。

豪雨や暖冬は蚊を増やす?異常気象がもたらす意外な影響

猛暑以上に蚊の生態へ影響を与えるのが、豪雨や暖冬です。豪雨が発生すると、幼虫が流されて一時的に数が減ることがあります。しかし、その後が問題です。雨がやんだあとには、植木鉢の受け皿や空き缶、ブルーシートのくぼみなど、さまざまな場所に小さな水たまりができます。蚊は、ごく少量の水があれば産卵できます。しかも夏場なら卵から成虫になるまで、ヒトスジシマカであれば2週間程度しかかかりません。そのため、大雨からしばらくすると、新たな成虫が一斉に羽化し、「急に蚊が増えた」と感じることがあります。

暖冬も蚊にとっては好条件です。国内では、ヒトスジシマカなどは主に卵の状態で冬を越しますが、冬の寒さが弱まれば越冬する卵の生存率が高くなる可能性があります。さらに春が早く訪れれば活動開始も早まり、秋の暖かさが続けば活動終了も遅くなります。つまり、暖冬は翌年の蚊の発生数は増やす上に、吸血シーズンそのものを長くする要因にもなり得るのです。

異常気象は「蚊が増える・減る」という単純な話ではありませんが、豪雨や暖冬によって発生場所や活動期間が変化し、結果として私たちが蚊と遭遇する機会にも影響を与えています。

気候変動で吸血リスクはどう変わる?

近年問題となっている気候変動は、蚊の生息域や活動期間にも長期的な変化をもたらすと考えられています。気温の上昇によって、これまで寒さの影響で活動が限られていた地域でも蚊が生息しやすくなる可能性があります。特に北日本や標高の高い地域では、活動できる期間が今後長くなることが予測されています。最近、国内では深刻な問題にはなってないものの、蚊はデング熱などの感染症を媒介する昆虫でもあるため、注意が必要です。

気温が高くなると、蚊の体内で病原体が増殖する速度が速くなる場合もあるため、地球温暖化と蚊が媒介する感染症の拡大との関係について、研究が進められています。とはいえ、私たちができる対策は基本的には変わらないため、必要以上に怖がる必要はありません。家の周囲に不要な水たまりをつくらないこと、草むらへ入る際には長袖・長ズボンを着用すること、朝夕の活動時間帯には虫よけ剤を活用することなど、日頃の対策が最も効果的です。虫好きの僕ですら、虫よけを使っているので、虫よけはアウトドアの必須アイテムです。

「猛暑だから蚊はいない」と油断するのではなく、「異常気象によって蚊の行動が変わっている」と理解することが重要です。気候変動が進むこれからの時代だからこそ、蚊の生態を正しく知り、その変化に合わせて対策を行うことが、刺されるリスクを減らす第一歩になるでしょう。

昆虫ハンター・牧田習

博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。

著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my

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