電気自動車(BEV)の普及には、いまだに価格、充電インフラ、航続距離などの要素が障壁になっているようだが、グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズが発表した『2026年版グローバル自動車消費者意識調査』では、BEVには障壁がある一方で、レンジエクステンダーと呼ばれる小型エンジンと発電機を搭載したレンジエクステンダーEV(REEV)がBEVへの移行期に現実的かつ実用的な選択肢として世界的に注目を集めていることがわかった。この調査は、日本を含む11か国8000人の自動車購入者に、パワートレインやボディタイプ、先進運転支援システム(ADAS)、内装の質、サブスクリプションモデルなどに対する消費者の選好について幅広く調査したものだ。世界共通で電動化・自動化・品質という3つの軸で消費者の関心は高まっていたが、その進み方や重視するポイントは市場ごとに異なっていた。ハイブリッド車(HEV)が普及して、品質への要求水準が世界最高水準の日本市場では、自動車メーカーとサプライヤーが直面する課題と機会が浮き彫りになったという。
「メイド・イン・ジャパン」ブランドは健在
品質と信頼性は、日本ブランドはグローバルで77%とドイツの80%に次いで高く評価されており、特に韓国(91%)やUAE(90%)で高い信頼を獲得していた。日本ブランドのグローバルでの忌避率は17%で、中国(44%)、米国(25%)、韓国(20%)を下回っており、グローバルでの競争力は高い水準を維持しているようだ。日本国内でも国産ブランド志向は43%とグローバル平均の33%を上回っており、国内市場でも根強い支持を受けている。ただ中国での日本ブランドの忌避率は29%で、ドイツの忌避率(10%)と対照的な数字となった。韓国における日本ブランドの忌避率も19%と相対的に高く、地域によってブランド評価には差が見られた。
BEVは価格が壁、REEVは現実的選択肢に
電動化への移行は世界的に進んでいるが、調査ではICEドライバーの49%が「同等のBEVがICEより安くなければ検討しない」と答えており、価格がBEV普及の最大の障壁といえそうだ。西欧では12%、米国では10%の消費者しかBEVにプレミアムを支払う意向がなく、中国でも価格競争の激化を背景に同様の傾向になっている。一方でREEVがBEVへの移行段階での現実的な選択肢として注目を集めている。全回答者の45%、中国では71%がREEVをBEVの代替として評価しており、充電インフラが整備途上の市場やBEVの購入意欲が低い市場では現実的な選択肢になっている。日本では32%の消費者がREEVをBEVの代替として評価しているが、グローバル平均の45%は下回っている。HEV・PHEVが普及している日本市場では、REEVへの関心は限定的と言えそうだ。
地域で二極化する自動運転への関心
自動運転への期待や関心については、回答者全体の42%が次に購入する車に求める自動運転支援レベルとしてSAE L1(アダプティブクルーズコントロールなど)と回答している。世界的には高度な自動運転機能への需要は限定的といえそうだが、中国では24%の消費者が高度・完全自動運転のL4/L5を希望しており、ドイツや米国(各6%)よりも高い関心を集めている。中国の消費者は、自動運転の主なメリットとして「運転時のストレス軽減」(69%)や「運転時間の有効活用」(52%)を挙げており、安全性を重視するほかの市場とは異なる価値観が回答に影響しているようだ。日本でもL4/L5レベルの高度な自動運転機能を希望する消費者は7%で、グローバル平均(10%)と同様に慎重な傾向になっている。
SUVはボディタイプとしてグローバルで人気
SUVは、韓国(52%)、UAE(38%)、中国(38%)で特に人気が高く、予算規模が大きいほどSUVを選ぶ傾向が強まる傾向もあったという。一方で中国では、42%の消費者が希望するパワートレインの選択肢が限られているためにボディタイプを妥協した経験があると回答しており、製品ラインナップの充実が課題になっている。日本でもSUVの需要は高いが、セダンやコンパクトカーなど多様なボディタイプも人気があるので、欧米市場と同様に消費者の好みが分散しているといえる。
過度なコスト削減が品質の信頼を損なうリスク
内装の質は、世界的に重要な購買基準になっているが、特に素材の質(65%)、仕上がりの精度(フィット&フィニッシュ)(59%)、デザイン(55%)が重視されている。特にBEV購入意向者は、ICE購入意向者と比較して、素材の質(77%対63%)や仕上がりの精度(73%対55%)をより重視する傾向がある。中国の消費者は、素材の質とデザインへの重視度がグローバル平均を上回っており(素材+6ポイント、仕上がりの精度+6ポイント、デザイン+8ポイント)、新興プレーヤーとの競争が激化する中でも品質訴求が有効な差別化ポイントになっている。一方の日本の消費者は、素材の質(30%)、仕上がりの精度(22%)、デザイン(31%)の重視度はグローバルでもっとも低い水準だが、品質への関心が低いわけではなく、高品質が市場標準なので消費者が改めて重要と意識しにくいとも考えられる。車内操作では、タッチスクリーンのみでの操作を好む消費者は全体で20%(中国では13%)しかなく、33%がタッチスクリーンと物理ボタンの組み合わせを好んでいた。車内テクノロジーでは、ナビゲーションシステムの性能(57%)がもっとも重視されており、「Apple CarPlay」や「Android Auto」などの接続機能(38%)が続く結果になった。
車両機能のサブスクリプションには拒絶反応
調査の回答者の63%は、サブスクリプション形式で有効化できる車両機能は購買意欲に影響しない、あるいは購買意欲が低下すると答えている。西欧市場は特に抵抗感が強く、ドイツは22%、フランスは28%がサブスクリプション料金を一切支払う意向がないという。日本の消費者も購入時にすべての機能が装備されていることへの期待が高く、後付けの有料機能に対する価値は低い状況だ。ただ安全機能やADASに関連するサービスは、一定の追加支払いの意向が見られる。
今回の調査結果を受けて、アリックスパートナーズの自動車・製造業プラクティス日本チームリーダーのパートナー&マネージングディレクターの鈴木智之氏は次のようにコメントしている。
「日本の消費者は品質や安全性への要求水準が非常に高い一方で、電動化や自動運転といった新技術への移行には慎重な姿勢を示しています。今回の調査結果は、グローバルで進むSUV人気やREEVの現実的な選択肢としての評価など、世界の潮流と日本市場の特性を浮き彫りにしています。自動運転への関心や内装品質への要求が地域によって大きく異なる以上、すべてにおけるグローバルでの戦略の一律には限界があります。各市場の消費者心理と市場環境を深く理解したうえで、どの技術・セグメントに対して優先的に投資するかを見極めることが今後の開発や販売競争における鍵となります」
欧州のエンジン車禁止規制が撤回されたが、REEVが注目を集めているということは、世界的には車の電動化へ移行する流れは続きそうだ。一方でフルタッチスクリーンのみの操作を好む消費者が約2割程度で、サブスク形式の機能追加には消極的な意見があるなど車のデジタル化についてはあまり魅力を感じていない印象だ。各国の車に対する求めるものにもよるが、ITとの連携に関しては、消費者の購買意欲を刺激するようなサービスや機能が登場しないと普及を加速させるのは厳しいかもしれない。
『2026年版グローバル自動車消費者意識調査』概要
調査対象国:11か国(ドイツ、英国、フランス、スペイン、イタリア、米国、中国、韓国、日本、UAE、サウジアラビア)
調査対象者:過去3年~5年以内に車両を購入またはリースした消費者、および今後2年以内に購入・リースを予定している消費者8000名
調査実施時期:2026年1月
https://www.alixpartners.com/jp/
構成/KUMU
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