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日本代表が4‐0で圧勝した地、モンテレイで味わった天国と地獄

2026.07.20

目まぐるしい天気の変化が日本代表活動にも影響

 最終盤に突入している2026年北中米ワールドカップ(W杯)。ご存じの通り、日本代表は6月29日のラウンド32でブラジルに1-2で敗戦。すでに大会から去っており、森保一監督の短期間続投が有力になりつつある。

 その日本代表が同大会で赴いたのは、6月14日の初戦・オランダ戦と25日のスウェーデン戦に会場・ダラス、事前合宿と20日の第2戦・チュニジア戦の会場・モンテレイ、ブラジルとの最終決戦の地となったヒューストン、そしてベースキャンプ地・ナッシュビル。

 このうち、今回は特に濃密だったモンテレイを取り上げることにする。

6月20日の日本対チュニジア戦

 モンテレイはメキシコ北東部のヌエボ・レオン州にある人口約560万人の大都市。同国ではグアダラハラと並ぶ第2の都市だ。シエラマドレ・オリエンタル山脈のふもとに位置し、標高は540m。やや高地ということで、気候的には割と爽やかだろうと思われたが、6月でも日中の気温が35度を越える日が少なくなかった。その反面で、突如として日本のゲリラ豪雨のような暴風雨が襲ってくる。変化しやすい天候は、日本代表活動にも多大なる影響を及ぼしたのだ。

モンテレイは山の麓にある標高540メートルの都市

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6月19日のチュニジア戦前日は災害級豪雨で道路が冠水

 まずは事前合宿。日本代表は6月3~7日の5日間、現地でトレーニングを行ったが、悪天候のため、当初予定していたモンテレイ北東部にあるFCティグレスの練習場が使えず、初日はセントロ西部にあるUANL医療大学のグランドを使用した。

 だが、そこも芝が荒れていて、強度の高いトレーニングができなかった。このため、その後はセントロから約30キロ南下した郊外にあるCFモンテレイの施設で練習することになり、20日のチュニジア戦前日もこちらが公式練習会場となったのだ。

 そこへの移動が想像以上に大変だった。通常時はセントロから片道1時間程度の距離感なのだが、19日は午後から凄まじい災害級豪雨となり、道路が冠水。まるで川の中を車が走るような状況になってしまったのだ。そうなれば当然、大渋滞が起き、車は遅々として進まない。選手たちはポリスエスコートがついて優先的に走行できたというが、練習開始時間は1時間遅れとなり、ストレスは非常に大きかったはずだ。

 我々も試合前日は往復ともにメディアバスに乗れたが、それ以外の日は自力で行き来しなければならなかった。できれば公共交通機関で行きたかったが、グーグルマップを見ると「バスを3回乗り継いで3時間かかる」と出てくるため、どうしてもウーバーに頼らざるを得なかった。

日本代表が一番多く使ったCFモンテレイの練習場。とにかく遠い。

1メキシコペソ=9.2~9.3円。歴史的な対円レートで日本人は悲鳴

 W杯前は「メキシコは物価が安い」という話を聞いていたから、ウーバーを頻繁に頼んでもたいしたことはないと考えていたが、2026年に入ってから対円メキシコペソレートが史上最高値に迫るレベルになっていた。数年前までは1メキシコペソが5~7円台で推移していたのに、6月は9.2~9.3円という信じがたいレートになっていたため、移動に片道250~300ペソ(2300~2700円)かかるのは、しがないフリーランスにとってはかなり痛かった。

 W杯本番の時はさらに値段が上がり、モンテレイ空港からセントロまでのウーバー代は7000~8000円まで跳ね上がった。この時はたまたま空港で知り合った日本人サポーターとタクシー相乗りで1人150ペソ(1400円)と負担を軽減できたのでよかったが、移動するのにこんなに金銭的な負担を感じるとは想像しなかった。

 もともと筆者は移動コスト削減のために、当初の練習場だったFCティグレスから歩ける範囲のAirbnb(エアビー)を確保していた。それが想定外の連続で練習場所が連日変更になったため、結果的にはセントロに宿泊していた同業者以上に移動コストがかかってしまった。これは本当に誤算というしかなかった。

ポテトチップが高すぎて買えなかった

ポテトチップ大袋が500円!コカコーラゼロも日本の2倍弱

 円安の影響は移動費にとどまらなかった。今回のW杯期間は北米エリアを席巻しているウォールマートで買い物をするのが常だったが、ポテトチップ大袋1つを買おうとすると、日本円で500円は下らない。コカコーラゼロなども日本なら500ミリリットル1本を150円程度で買えるが、メキシコでは250円程度という感じだった。もちろん2リットルなどの大型サイズは比較的割安ではあったが、何でも気軽にカゴに入れられる状況ではなかった。

 外食をしようにも、ファーストフードのバーガーとポテト、ドリンクのセットで120メキシコペソ(1100円)程度はする。日本の方が何もかも安いと知り、衝撃を受けた。

 W杯で出会ったコスタリカ人記者と「コーラ1本をいくらで買えるか」と話し合ったところ、日本とほぼ同じということが分かった。もちろんアメリカやカナダは日本よりはるかに高いし、メキシコも日本より高額。「今や日本円は中南米の国と同じくらいの価値なのか」と考えると空しくなった。

 そういう中で考えられる対策は自炊。事前合宿の時は料理のできるエアビーだったから、日本から持参した米やカレーなどの食材を駆使して連日、食事を作ってしのいだ。チュニジア戦の時は料理をしている時間がなかったため、パンと野菜、ハムを買い込んでサンドイッチを作り、それをスタジアムに持参するという工夫を凝らしたのである。

チュニジア戦前日の練習開始が遅れても選手たちは笑顔だった

スタジアムはまるでホーム。親日の土地でチュニジア相手に2026年W杯唯一の勝利!

 そうやって日々の生活を切り詰めながら、日本代表を追いかけた成果がチュニジア戦の4-0勝利だった。

 今回の日本代表は4試合を戦って、白星を挙げたのはこの1試合だけ。しかも鎌田大地(クリスタルパレス)の電光石火の先制点に始まり、エースFW上田綺世(フェイエノールト)の2発、そして33歳のスピードスター・伊東純也(ゲンク)という役者たちが華々しい活躍をした結果の圧勝ということで、本当に清々しい気分になれた。

 試合会場だったエスタディオ・モンテレイはセントロから東に約10キロ行ったところにあったが、試合前から日本代表の青いユニフォームを身にまとったサポーターが大挙して押し寄せ、まるで埼玉スタジアムにいるような雰囲気が感じられた。

 試合が始まってからも、日本のパス回しの時には「オーレ」という大歓声が起き、いいプレーには大きな拍手が贈られるなど、本当に圧倒的に日本が支持されていた。

「メキシコ人は親日なんだ」とメキシコ人記者も嬉しそうに話していたが、本当に彼らは日本人に優しかった。アメリカ国境のモンテレイにはデンソーや日本電子、ダイキン、三菱商事、三井物産などの日本企業が数多く進出。その関連で働いている現地の人も少なくない。さらにトヨタやホンダなど日本車に乗っている人も数多くいて、日本には馴染みがあるのだろう。森保ジャパンもその恩恵を受ける形になったのは間違いない。

日本が2026年W杯で唯一の勝利を収めたエスタディオ・モンテレイ

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「ラウンド32はモンテレイで戦えるのがベスト」と森保監督も再訪を願ったが…

 日本がグループリーグで1位通過していたら、ラウンド32で再度、この街に赴くはずだった。森保監督もスウェーデン戦前に「モンテレイで戦えるのがベストかなと思っています。モンテレイで事前キャンプもやっていますし、1回チュニジア戦も戦っていますし、スタジアムの雰囲気だったり、選手たちもいろんなスタジアムを使い分けて、ピッチ状態であったりを経験しているので、そこで試合ができるのはメリットがあると思います」と前向きに話していたほどだ。

 残念ながら、それが叶わなかった。「モンテレイは移動含めて本当に大変だったので、少しホッとした」と複数の日本代表スタッフやメディア関係者は胸をなでおろしていたが、チームはもしかするとここで試合ができていたら、もう一段階上のステージに進めていたかもしれない。そう考えさせられるくらいスタジアムの雰囲気は素晴らしかった。

 筆者も今回はセントロのマクロプラザを駆け足で見たくらいで、名所らしい名所にはほぼ行けず、メキシコ名物の「カルネ・アサーダ(牛肉ステーキ)」を思い切り食するチャンスも皆無に近かっただけに、次にチャンスがあればもっとメキシコらしいところを味わってみたいもの。モンテレイはさまざまな想定外や円安、日本代表の圧勝含めて、非常に記憶に残る土地となった。

セントロ最大の名所・マクロプラザ

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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