「終活」がなぜ大事なのか? それはつまるところ、詐欺まがいの業者と出くわさないためだ。
たとえば、車を買う時は誰しもがじっくり考えてから契約書を書く。当然の話だ。早過ぎる決断をして泣きを見るのは自分である。が、これが葬儀の場合は時間がない。じっくり考える時間がない故に、高額のプランをつかまされてしまう可能性があるのだ。
この「葬儀社問題」は、国民生活センターが注意喚起を公表するくらいの大問題になってしまっているという。
人はいつ死ぬか分からない

葬儀は大掛かりな催しだ。
人はなぜ生命保険をかけるかという話になると、結局は「葬儀費用を捻出したい」という思惑も多分にあるはずだ。それだけ、葬儀というものはカネがかかる。にもかかわらず、人間は現代でも「いつ死ぬか分からない生き物」だ。
これは病気だけでなく、不慮の事故の可能性もある。だからこそ、健康な人や若い人が「終活」をすることは何ら不思議なことではないのだ。人生設計というものに真面目に向き合っている人ほど、「終活」を前向きに捉えているようにも思える。
さて、筆者の手元に燦ホールディングス株式会社が実施したアンケート調査の結果がある。『葬儀における意思決定と費用に関する実態調査』と銘打ったもので、概要は以下の通り。
調査期間:2026年4月15日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査対象者:全国の過去5年以内に葬儀に関与した40歳~80歳の男女
回答者数:500名
調査主管:燦ホールディングス株式会社
このアンケート調査が、質問事項と回答結果共に極めて興味深い内容なので、以下に解説していきたい。
「葬儀社の比較をしていない人」が大半
まずは「葬儀社を決定する際、いくつの葬儀社の価格やサービスを比較したか?」という質問である。
これに対して、75.8%の人が「比較していない(1社のみ)」と答えている。「2社」が13.2%、「3社」に至っては6,4%しかいない。
これは、江戸時代以降の檀家制度の名残とも解釈できるかもしれない。たとえば、浄土宗の檀家で不幸があった場合、地元を束ねる浄土宗の寺から僧侶がやって来ていろいろと手を焼いてくれる。明治以前の時代、そこに一切の選択肢はなかった。しかし、21世紀はそうではない。カスタマーは複数の葬儀社のプランを比較し、より希望に叶ったものを選ぶ自由があるはずなのだ。本来であれば。
しかし、結婚式はともかく葬儀の場合は時間に余裕がない。
プロ将棋のタイトル戦よりも短時間で
次の質問は「ご逝去から葬儀社を決定するまで、実質どのくらいの時間があったか?」である。
これに対して、40.6%が「3時間以内」と答えている。27.2.%が「半日以内」、15.2%が「1日以内」という調査結果だ。
プロ将棋のタイトル戦の持ち時間よりも少ない間に、極めて重要な決断を下さなくてはならないのだ。前々からの「終活」の重要性を再認識させてくれる調査結果でもある。
時間がない故に、トラブルも発生する。
ここでアンケート調査から離れるが、今年の6月3日に国民生活センターがこんなページを公開している。『依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-「家族葬だから安い」と思っていませんか?』という、かなり深刻な雰囲気のタイトルだ。
全国の消費生活センター等に寄せられる葬儀サービスに関する相談は増加傾向で推移しており、年間で900件前後となっています。令和6年の死亡数は約161万人で厚生労働省が調査を開始して以来最多となりました。死亡数の増加とともに、葬儀の取扱件数も増加していると考えられます。また、葬儀の形態も変わりつつあり、家族葬、一日葬、直葬など、さまざまな葬儀のニーズが高まっています。
こうした葬儀形態の変化やサービスが多岐にわたり費用の項目も複雑になっていることに加え、親しい人との死別という事態に冷静な対応ができなかったり、葬儀社の説明や消費者の理解が不足したりしていると、葬儀の料金やサービス内容をめぐりトラブルになることもあります。葬儀費用が想定した金額を上回り、高額な料金に納得できないという「高価格・料金」に関する相談の割合は、増加傾向にあります。
(依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-「家族葬だから安い」と思っていませんか? 国民生活センター)
徳川幕府が確立させた檀家制度がいかに優秀な施策だったかを思い知ると同時に、我々現代人は「檀家制度なき今」を生きているのだと実感させられる文言でもある。
やっぱり「終活」をしよう!
次に、「契約時、最終的にいくら支払うことになりそうかという全体金額の目安についてどの程度理解・納得したか?」という質問について。
これに対しては、十分に理解したということを表す回答が過半数を占めた。一方、理解不足だったことを示す回答は全体の34%に及んだ。3割の人が「葬儀の費用をあまり理解しないまま契約書にサインした」というのは、やはり問題ではないか。
では、どうすればよいか?
この疑問に対して筆者が出せる回答は、やはり「終活のススメ」である。前述の通り、「終活」という行為そのものが少しずつカジュアル化している(この表現が適切かどうかはともかく)。
最近では、葬儀についてChat-GPT等の生成AIに相談する人も増えている。これについての調査結果もあり、22%の人が「生成AIに相談したことがある」と答えている。
しかし、いくらAIが日々賢くなっているからといって、必ずしもこれが最善の答えを出してくれるとは限らない。
「己の死」を考えることは決して後ろ向きな発想ではなく、むしろ前向きに生きるために必要な人生設計作業と言える。
参考
【葬儀における意思決定と費用に関する実態調査】 国民生活センターも注意喚起!葬儀費用をめぐる課題が指摘される中約8割が比較せず、約4割が3時間以内に意思決定する葬儀の実態 燦ホールディングス株式会社 PR TIMES
依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-「家族葬だから安い」と思っていませんか? 国民生活センター
文/澤田真一
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