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作家性は出さず、解釈は視聴者にゆだねる。「攻殻機動隊」新作アニメ監督に大抜擢されたモコちゃん氏にインタビュー

2026.07.14

脳とネットが直結した電脳社会、そしてサイボーグが街を駆ける未来――。30年以上も前に、現代の生成AIやネット社会の到来を予言していた『攻殻機動隊』が、2026年、ついに再始動する。最新アニメシリーズが掲げたテーマは、士郎正宗の原作コミックを意識した「原点回帰であり、原典回帰」。最先端のテクノロジーが、始まりのイマジネーションへ追いついた今、どのような『攻殻機動隊』が描かれるのか。7/15発売のDIMEでは監督を務めるモコちゃん、脚本・シリーズ構成の円城塔、キャラクターデザイン・総作画監督の半田修平、声優陣などにインタビューした特集を掲載している。

本稿はDIME2026年 9・10月合併号に掲載の「『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』ついにベールを脱いだ〝原典回帰〟の真実」より一部を抜粋・再編したものです。

リセットとしての原典回帰ではなく、シリーズ最新作としての原典回帰

様々な監督が映像化してきた『攻殻機動隊』。今作では、サイエンスSARUで数々のヒットアニメに参加してきたモコちゃん氏を抜擢。新鋭監督が、いま作るべき理由を語る!

監督:モコちゃん/1992年生まれ。主な参加作品は、『平家物語』や『四畳半タイムマシンブルース』(ともに絵コンテ・演出)など。『ダンダダン』では、副監督、絵コンテ・演出、エンディングアニメの絵コンテ・演出を担当。

日本のみならず世界中で支持される『攻殻機動隊』。最新作の監督には本作がテレビシリーズ初監督となるモコちゃん氏が抜擢された。アニメスタジオのサイエンスSARUに所属し、『ダンダダン』では副監督を務める実力派だが、オファーを受けた時は、学生時代から影響を受けていた作品だけに重圧も大きかったようだ。

「『攻殻機動隊』は今まで名だたる監督が担当してきたアニメ史に残るレジェンド的なシリーズです。監督の打診には『やりたい』と答えましたが、返事をした後で当然ながら責任や大きなプレッシャーを感じました。企画書の段階から今回は原作ベースというお話だったのですが、そういった貴重な機会に巡り会えたのはうれしかったです」

高校時代から『攻殻機動隊』の原作を愛読していたというモコちゃん監督が考える士郎正宗作品の魅力は、緻密かつ壮大な世界観だという。

「士郎正宗さんの作品の魅力は、いろいろありすぎて絞るのが難しいですが、衝撃を受けたのは、世界が先にあってそれを漫画にしている、という作品の成立のさせ方でした。漫画というメディアより先に、〝世界〟が士郎さんの頭の中にあるのだろうという感じがしました。

一方で、押井さんが監督された映画もすごく好きで、アニメ業界に入りたいと思ったきっかけのひとつです。日本アニメ史のエポックメイキングな作品ですが、プロのアニメーターになって改めて作画やアニメ演出のすごさを感じています」

攻殻は解釈が開かれた作品、監督としての作家性は出さずに視聴者に解釈を委ねたい

制作に関して、監督の仕事は多岐に渡るが、特に絵コンテを描くことが重要だと話す。モコちゃん監督も絵コンテ制作には大きなプレッシャーを感じていたようだ。

「絵コンテが面白くないと、その後でほかのスタッフがどれだけ素晴らしい仕事をしてくださっても、映像としては面白くなりにくいんです。その意味では、最初のフローである絵コンテを面白く作ることが監督のプレッシャーだと思います」

絵コンテをまとめるうえで、ストーリー面では脚本を担当した円城塔さんに作品世界を読み解くヒントを多くもらったという。

「円城さんは『攻殻機動隊』を含む士郎正宗作品全般に詳しくて、脚本制作に入る前に〝シロマサワールド〟の解説みたいなことをしていただきました。今回のアニメ化のコンセプトが原作ベースなので、シロマサワールドとの橋渡し役として、設定の解釈や整合性の付け方みたいなものも、円城さんと一緒に考えました」

一方で自分自身の作家性は、あまり出すべきではないと考えていたという。

「原作漫画は、解釈がすごく開かれた特殊な作品なので、解釈は視聴者にゆだねる部分も必要だと思いました。自分自身の色を強く出すと、違う解釈の方が作品に入りにくくなってしまう。そこで制作初期の段階では自分らしさを出すことは抑えようと思っていました。

ただ、実際の制作に入ると現場はものすごいスピード感で進んでいきます。そうなった時には、とにかく手を動かして前に進めていくしかないので、そのフェーズでまざった手汗みたいなものが、ある意味自分らしさと呼べるものとして作品に出ているかもしれません」

静止画である漫画を動画であるアニメーションにするための作業も当初の構想とは違ったものになった。

「方針としては原作から何も足さず引かずに、そのままアニメにしようとしていましたが、実際にやってみると漫画ではコマとコマの間の時間や空間の表現のつながりを曖昧にしたり省略しています。絵コンテにするためには、その穴を埋めていくクリエイティブな作業がどんどん出てきました。世界観が重要な作品なので、この世界ではそうなんだという実在感や説得力が大事で、そういうコマとコマを埋めて絵コンテに落とし込む作業は苦労しました」

AI時代でも全く色褪せない『攻殻機動隊』の世界

AIの登場によって、人間の存在そのものにフォーカスが当たり、世界も大きく変わろうとしているが、そんな時代にあっても士郎正宗による『攻殻機動隊』の原作がまったく古臭くないことには驚きを禁じ得ない。

今回の『攻殻機動隊』のアニメ化に当たり、あえて原作をベースとする形で作ることに関してモコちゃん監督はどう考えているのか。

「原作のテーマとストーリーは、人間についての普遍的な物語で、いまの時代だからこそ改めて読む意義のある物語だと思います。それに、長い歴史のある『攻殻機動隊』をリセットするのではなく、改めてシリーズの最新作として原典回帰版を作るということに意味があると思ってます。原作は先が読めなくて、意外なところに着地する面白い話なので、ぜひアニメでもラストまで観ていただきたいです」

©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

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取材・文/久村竜二 編集/石﨑寛明 web構成/峯亮佑

Author
大学卒業後、『週刊ポスト』で週刊誌記者としてキャリアを始める。医療、芸能、政治、社会問題などを担当し現場取材を中心に経験を積む。2023年からは@DIMEで編集者兼ライターを務め、ビジネスからエンタメまで幅広く取材・執筆を行なう。取材・執筆した企画(一例)/「ポケモン超進化論」(「DIME 2023年9・10月合併号」)、「ガンプラ45年の軌跡」(「DIME 2025年9・10月合併号」)

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