そろそろ梅雨が明け、夏本番に突入する。薄着になると、やはり気になるのが体のラインだ。ふと鏡の前に立ったとき、だらしなく見えるぽっこりお腹にため息をついたことがある人もいるだろう。
このような悩みの解消のために、インナーマッスルの強化と呼吸法を組み合わせた「インナー呼吸エクササイズ」を考案したのが理学療法士でピラティスインストラクターの渡邉里奈さんだ。
しかも、ぽっこりお腹の改善だけでなく、腰痛などの体の不調やメンタルの安定、疲れにくい体づくりにもつながるという。忙しいビジネスパーソンにとっても嬉しいエクササイズだ。誰でもどこでも無理なく続けられるというが、いったいどのようなものなのだろうか。
ぽっこりお腹の原因は脂肪だけじゃない!?
自分のぽっこりお腹を見て、食事制限をしないといけないなぁ……と思っている人もいるはず。しかし、そのお腹の膨らみ、実は脂肪だけが原因とは限らないという。
「インナーマッスルが弱いことによって、内臓を支えることができず、ぽっこりとお腹が出てきている人がいるんです。特に、デスクワークをしがちな方は、手が前に出て、首も前に出やすくなります。その姿勢のせいで、お腹の筋肉が弱くなりがちです。このお腹の筋肉が弱っていることが、ぽっこりお腹に繋がるんです」
渡邉さんが提唱するエクササイズは、脂肪が多かろうが少なかろうが、インナーマッスルで内臓をしっかり支え、あるべき場所に内臓をしっかり納めることで、ぽっこりお腹にアプローチしてくれるものだという。
「このインナーマッスルが弱いということが、実は腰痛や肩こりなどにも繋がります。私たちの体の構造は、中枢部と末梢部という形に分かれます。中枢部というのは体幹を指していて、体幹の核となるのがインナーマッスルと思ってください。末梢部というと手足や首を指します」
ウォーキングをする、ボールを投げる、スマホを見るなど、私たちは手足や首、頭部を常に使っている。その中で、体幹の安定性が低いと、姿勢が崩れてしまうのだ。
「つまり、日常の様々な動作の中で、体がグラグラした状態を継続していることになります。このグラグラした不安定な状態をほかの部位で支えようとして、負荷がかかり続けることになります。私たちの筋肉は前後左右についていて、同じくらいの負担で筋肉が働くのが理想です。お腹周りであれば、腹筋と背筋が上手に使えていることが望ましい状態です」
お腹の筋肉が弱いと、腰や背中で体を支えようとする。その結果、腰痛につながるわけだ。腰痛があると痛みのある箇所にアプローチしたくなるが、本来目を向けるべきなのは、その状態を引き起こしている体幹の固定性や安定性のエラーだ。
「私のメソッドは、インナーマッスルを鍛え、体幹の安定性を取り戻し、理想的な筋肉を使えるようになるための一歩だと思ってください。どこか一か所に負担をかけたりせずに、バランスよく働かせるための、理想的な姿勢を目指します」
インナーマッスルの鍛え方とは?
では、その理想的な姿勢を目指すためにインナーマッスルを鍛えるエクササイズとはどういうものか。
「特別な道具は不要で、自宅で無理なく始められる〝やさしい〟エクササイズです。メソッドのポイントは、骨盤の傾き、呼気(吐く時間と吐き方)、腹圧の3つです。立っていても、座りながらでも、寝ていてもできるので、気が付いたときに行ってください」
今回は、忙しいビジネスパーソンでも取り入れやすいように、座ったままできる基本のやり方を見ていこう。大切なのは、回数をこなすことよりも、骨盤の位置と呼吸を崩さずに行うこと。基本的な流れは、「1、骨盤をニュートラルに保つ」「2、5秒かけて息を吐く」「3、お腹をへこませて腹圧をかける」というシンプルなものだ。
「まずは、骨盤をニュートラル(真ん中の位置)にもっていきましょう。前傾になったり後傾になったりしない真ん中の位置が基本。前傾は反り腰になっており、後傾はお腹が前に出ているような状態です。骨盤の傾きをニュートラルにすることによって、上半身と下半身の姿勢が整います」
その次に5秒かけて息を吐くという。
「5秒間息を吐き続けますが、その際に、はぁーっと息を真下へ吐くというのがポイントです。口をすぼめて吹くようにしてはいけません。真下へ吐くことでお腹に力が入りやすくなります。そして、息を吐きながらお腹をへこませ、腹圧を高めてインナーマッスルを収縮しましょう」
とにかく大切なのが姿勢だ。
「座り方のコツは、耳たぶと肩峰(肩のライン)と大転子(股関節)がおおよそ一直線になるように座ること。この一直線のラインを意識することが、骨盤の傾きを整えることにも繋がります。椅子が深いと背中が丸まりやすくなり、首が前に出てしまうため、耳と肩のラインが整いません。椅子を少し高くすることで骨盤が立ちやすくなり、姿勢がとりやすくなりますよ」

そして、足と足、内ももと内ももをくっつけるようにして、左右の膝に少し力を入れるのもポイントだ。
「内側の筋肉に力が入るような感覚になると思います。この力が入る場所を内転筋といいます。内転筋は、骨盤底筋というインナーマッスルと筋膜を介して一緒に働きやすい筋肉です。足を閉じて内ももと内ももを軽く合わせ、少し力を入れてあげることで、よりお腹に力が入りやすくなります」

よく起こりがちな失敗が、せっかく姿勢を整えても、息を吸ったり吐いたりする際に体幹がブレてしまうことだ。
「体幹がブレると、せっかく整えた骨盤もずれてしまいます。5秒間吐ききらなきゃと、最後の方に絞り出すみたいに前傾してしまうのはNG。吐き切ろうと思って姿勢が崩れるくらいなら、吐く時間は多少短くして、とにかく体を崩さないことを優先しましょう」
吸気に関しては、大きく吸っても、小さく吸ってもよく、鼻でも口でもいいそうだ。一日の目安も、最初は5回程度でOK。
「回数などは、自分の体力に合わせてください。気付いた時にやるぐらいまで、ハードルを下げた方が良いです。激しい筋力トレーニングは続きませんから」
インナーマッスルがメンタルにもたらすこととは?
まさに、どこでも、誰でもできるエクササイズで、忙しいビジネスパーソン向けだ。更に、ビジネスパーソンにとって嬉しい効果として、精神的な面でもポジティブな変化が期待できるという。
「姿勢が整い、背骨の位置が調整されることで、自律神経の流れが整います。特にこのメソッドでは、呼吸を大事にしていますが、姿勢を整え呼吸をしっかり行うことで、横隔膜の機能を高め、胸郭が開くため、副交感神経が優位になります。副交感神経が優位になるということは、リラックスできる状態になるということです」
逆に背骨の位置がずれると、周りの筋肉の緊張状態にも繋がるという。姿勢が整っていない状態というのは、交感神経が優位になりがちになってしまう。オンオフの切り替えがうまくいきにくい体ともいえるだろう。
「副交感神経が優位な時間が増えると、体力の回復に繋がります。つまり、疲れにくい体を目指せるということです」
そのぽっこりお腹は、見た目だけの問題ではなく、姿勢や体の使い方のエラーのサインかもしれない。スマホを見ている自分の姿を想像してほしい。体を丸めて、呼吸も浅くなっていないだろうか。会議の前や昼休み、仕事の合間にスマホを見る前など、短時間でも、自分の姿勢と呼吸に意識を向ける時間をつくることが、理想的な体や、疲れにくい体づくりの第一歩になる。
渡邉里奈さんプロフィール

理学療法士、ピラティスインストラクター。総合病院での勤務などを経て、2024年1月にピラティススタジオReha fit上尾店を開設。自ら考案した「インナー呼吸エクササイズ」による姿勢とダイエットの成功者を多数輩出。無理なく続けられる健康的なエクササイズがリピーターに大人気で、累計2万人以上への指導経験を持つ。著書に『1日5回でぽっこりお腹解消! インナー呼吸エクササイズ』(三笠書房刊)がある。
取材・文/田村菜津季
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