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ソフトバンクのFast Accessの効果はいかほど?ケータイジャーナリストが実測!

2026.07.11

 大手キャリアが、上位の料金プランを契約するユーザーを通信で優遇するサービスを取り入れ始めている。25年にKDDIが開始した「au 5G Fast Lane」は、その1つだ。これまで、基地局は複数の端末が接続している際に平等にリソースを割り当てていたが、au 5G Fast Laneでは、これを変更。優先制御の対象になった端末に、より多くのリソースを割り当てている。これによって、対象のユーザーのみ、速度が大きく上がる場所が出てきた。

 この優先制御にキャッチアップしてきたのが、ソフトバンクだ。同社は6月に導入した「ペイトク2」で、「Fast Access」を開始。仕組みはKDDIとほぼ同じ、基地局側の優先制御になる。7月からは、過去の料金プランである「ペイトク無制限」や「メリハリ無制限+」などへの提供も始まっている。こちらは、別途My SoftBankなどでの申し込みが必要だ。

ソフトバンクのFast Accessが、新料金プランのペイトク2と同時にスタートした。7月には過去の料金プランへの適用も始まっている。その効果を都内で検証した

 対象料金プランであれば無料で利用できるFast Accessだが、本当に効果はあるのか。電波は目に見えないもので、スピードテストをしてみなければ実際に速くなっているのかどうかが分かりづらい。とは言え、この効果を期待して、ペイトク2などの上位プランに申し込む人もいるはずだ。そこで、今回はFast Access対象端末と非対象端末を持ち、都内の様々なシチュエーションで速度を計測してみた。

自宅では5G SAが爆速に、NSAエリアでも効果を発揮

 まずは、Fast Accessが適用される条件を確認しておこう。対象となるのは、上記のような料金プランに加入しているユーザー。無制限や大容量の料金プランが対象だが、自動適用ではない点には注意したい。料金は無料なので、My SoftBankで忘れずに申し込んでおきたい。SIMカードやeSIMが、5Gを単独で利用する5G SAに対応している必要があるが、効果はNSA(4Gと5Gを合わせて利用する方式)でも発揮されるという。

Fast Accessの仕組み。適用されていると、より多くのリソースが割り当てられる。場所によっては2倍以上、高速化することもあるという

 実験は、ソフトバンクから借りたPixel 10を使って行った。端末をそろえてあるため、モデムの差などは出ない。また、アプリを使ってスピードテストを実施する前に、どの周波数帯をつかみ、どの方式で通信しているかも確認している。そのうえで、偶然を排除するよう、3回同時にスピードテストを行い、それぞれの記録と平均値を記載していく。

 最初に実施したのは自宅。実は、筆者宅は比較的早い段階でソフトバンクの5G SAエリアになっており、リビングでも下りで300Mbpsほど出る環境だった。古いマンションということもあり、光回線より高速である。おそらく、窓から見える近くのマンションに5Gの基地局が設置されているようだ。ここでは、Fast Accessの効果がテキメンに出た。

最初は、港区某所の筆者自宅で測定した。住宅用マンションとオフィスビルが入り混じったような場所で、元々ソフトバンクの回線品質はよかった

 1回目は、倍近くFast Accessが速く、400Mbpsを超えた。2回目、3回目の測定も比較的安定しており、平均値でも441Mbpsを叩き出している。これに対し、Fast Access非対応端末の方は、最高速度こそ419Mbps出ていたが、最低速度は173Mbpsでバラつきがあった。平均しても、Fast Access対応端末より100Mbps以上遅い。動画やアプリなどのダウンロードをする際に、はっきり差が出そうだ。

2倍までの差は出なかったが、平均で400Mbpsを上回った

 5G SAではしっかり効果が出たが、同じSAでも周波数にはさまざまなものがある。自宅の場合、5G専用の割り当てられたn77に接続するが、渋谷にある筆者の事務所は部屋が奥まったところにあるためか、プラチナバンドと言われるn28に接続することが多い。ここでもFast Accessの効果は出ることは出たが、その差はわずか。平均でも数Mbpsしか差がないため、日常利用では違いが分からないかもしれない。

渋谷の事務所からの風景。部屋に入ると高い周波数の電波が届かず、n28でせつぞくすることが多い
確かに速度差はついていたが、その差はわずか。スピードテストをして可視化しなければ、違いは分からなかったかもしれない

 このような結果になったのは、元々存在する無線のリソースを、どの端末にどれだけ割り当てるかという仕組みのためだ。最初から大量に無線の帯域がある自宅のようなシチュエーションでは、Fast Access対象端末に割り当てられる帯域も、そのぶん多くなって速度が上がりやすい。これに対し、n28は元々帯域幅がないため、優先しようにも優先できない。その意味では、余裕のある場所でこそ効果が分かりやすいサービスと言える。

混雑エリアでの効果は限定的、差が出ないことも

 接続する周波数帯だけでなく、その時々の状況によっても、1台の端末に割り当てられるリソースは変わってくる。仮に帯域全体に余裕があっても、混雑した場所では同様にFast Accessを優遇できる幅は狭くなる。今回テストしたケースだと、新宿駅前ではあまり差が出なかったどころか、Fast Access非対応端末の方が速度が出る結果になった。

新宿駅前。駅前にそこまで人が密集するわけではないが、見渡せる範囲内には商業ビルも多く、混雑しがち

 以下が、それぞれのスピードと平均値だ。ここでも、他の地点と同様3回連続で速度を測定、接続している周波数帯がどちらもn77になっていることを確認したうえでテストを実施しているが、3回とも、Fast Accessに対応していない端末の方が速度が出ていた。3回目が速度差が開きすぎている気がするので、接続中に別の周波数を束ねられなかったなどの違いはありそうだが、いずれにせよ、Fast Accessの効果がなかったと結論づけられる。

速度が逆転してしまった。差が少ない回でも、非対応端末が対応端末を上回っている

 新宿駅前は人が多く、5G SAにつながっても、そこまでの速度は出ない。結果として、Fast Accessに割り当てるリソースがそこまでなかったことが推察される。ソフトバンクも、同サービス発表時に「余裕のあるエリアではしっかり速度差が出るが、厳しいところではあまり差がでない」(専務執行役員 寺尾洋幸氏)と説明していたが、実測値もそれを裏づけている。

 とは言え、ぱっと見では人がたくさんいて混んでいるように見えても、ソフトバンク側が基地局を増設し、キャパシティに余裕があるケースもある。目に見える混雑度だけでは、有効かどうかは判断しづらい。実際、新宿に匹敵するほど人が多かった渋谷駅前では、差は小さいものの、Fast Accessの効果が出ていた。

渋谷駅は、目視できる限りだと新宿駅前より人が多い印象を受けた

 渋谷駅で測定していた際には、Fast Access非対応端末が倍以上速いこともあった。確認してみたところ、Fast Access対応端末側が、n28の5G SAに接続していたようだ。つかんでいる周波数が違うため、上の結果からは除外している。ただ、正直なところ、渋谷駅のようにさまざまな場所に基地局が設置されているスポットでは、Fast Accessの有無より、どの基地局と通信するかの方が速度を左右することが多い。

平均値はわずかながら、Fast Accessの方が速かった。ただし、その差は小さい

 同様に、電車で移動しながら測定した際にも、Fast Accessの有無による差が出づらかった。以下は、JR山手線の五反田駅から恵比寿駅までの移動中に計3回測定した結果。移動時の性能を試してみたかったので、間の目黒駅に停車している際には測定を実施していない。

電車で移動しながら、同時にスピードテストを実施

 1回目はFast Accessが効いたのか、倍近く速度が出ていた一方で、2回目は大幅に逆転。ここまで差がついていると、スピードテスト中につかんだ基地局が変わっていた可能性もある。3回目は僅差だが、Fast Access非対応端末の方が速かった。2回目の速度差の影響が大きいこともあるが、結果として平均値はFast Access非対応端末の方が高くなっている。

移動時につかんだ基地局が異なっていたのか、2回目の非対応端末が群を抜いて高速だった。その結果に引きずられる形で、平均値もFast Accessがない方が速くなっている

混雑地以外では超高速に、大容量プランの利用者は忘れずに契約を

 また、Fast Accessが効くのは5Gのみ。4Gでは効果がないとされている。4Gしかつかまなかった浅草線の泉岳寺駅から五反田駅までの駅間では、確かに差があまりついていない。平均値で見ると、差は約2Mbpsで誤差のようなものだ。Fast Accessが効いているときには、よりはっきりとした違いが出ているので、4Gでは効果がないというのも正しいようだ。

4Gでの接続だったこともあり、Fast Accessは効いていない。そのためか、結果も誤差程度の差しか出なかった

 ここまではあえてあまり効果が出なかったところを取り上げてきたので、「Fast Access」は意味がないのでは……と思われてしまったかもしれないが、そのほかの結果を見ると必ずしもそうではないことが分かる。上記の駅間の続きとして、JRの五反田駅前で測定した結果は以下のとおり。

 Fast Access対応、非対応のどちらも3ケタMbpsの速度が出ていて十分速かったが、特に対応端末は平均で400Mbpsを超えており、“爆速”だった。Webサイトの表示程度ならまさに一瞬。アプリの更新や動画のダウンロードなどもサクサクと進む。特に駅前のような、スマホを頻繁に使うであろうシチュエーションでこれだけの差が出るのはうれしい。

乗り継ぎ駅のため、人はそこまで少なくないが、Fast Accessの効果が大きかった
Fast Access対応の方が、2倍以上速度が出ている

 駅前の人がまばらだった代々木駅でも、平均して300Mbps超えで非対応端末の倍以上速い。しっかりとした差が出ていたと言っていいだろう。新宿駅前や渋谷駅前のように人が密集している場所は、東京都内でも比較的限られている。混雑した場所の“パケ詰まり”が解消するようなサービスではないものの、より通信品質を体感しやすくなることは間違いない。

冒頭の写真は代々木駅で撮ったものだが、ここも差が大きく、2倍以上の開きがあった

 また、5G SAではなく、4Gと5Gを合わせて使うNSAの5Gでも、ソフトバンクの言い分どおり、きちんと差が出ていた。以下は泉岳寺駅の駅構内での結果。この周辺は、屋外までは5G SAでエリア整備ができている一方で、地下鉄の駅構内など、屋外の基地局でエリア化できない場所がスポット的にNSAのままになっている。

泉岳寺駅周辺は5G SAでエリア化されているが、地下に入るとNSAに切り替わる

 ここでは、3回目こそFast Access非対応端末の方が速度が高かったものの、平均するとFast Accessに対応している方がコンスタントに速度が出ていた。実際、あえて人が多いところに行ったり、4Gのみしか入らないスポットに行ったりしなければ、Fast Accessが有効に機能していることが分かる。

5G SAで空いたエリアと比べると効果は薄いが、NSAの5Gでも差は出るようだ

 Fast Accessは、無制限や大容量の料金プランに適用されるサービス。その意味では、スマホをよく使うユーザーにメリットがある。よく使うからこそ、品質の差も体感しやすいという理屈だ。このために上位の料金プランを契約するほどではないが、上位の料金プランを選んでよかったと思わせる価値はある。オプションになっている過去の料金プランを使うユーザーは、忘れずに契約することを強くお勧めする。

文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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