エアソフトガンで撃ち合うサバイバルゲーム(サバゲー)が、ひそかなブームらしい。
かつては、ガチのミリタリーファン向けの趣味であったのが、ゲームやコミックなどを通じて認知度が広まり、一般層も注目。女性や家族連れも参加できるゲームも増加し、裾野はどんどん拡大している。
以前、ミリタリー系の雑誌出版社に所属していた筆者にとって、このトレンドの変化には関心をそそられる。カジュアルなサバゲーとはどんなものか、先日開催されたゲームを訪れた。
手ぶらでの参加もできる
場所は、JR奈良線玉水駅から約6km東に位置する「サバイバルゲームフィールド イデ」。周囲は民家もまばらで、うっそうとした林にとり囲まれた藪地。ところどころに遮蔽物となるついたてが立ち、はしごで上がる低層のやぐらもある。早朝の雨で、地面は少しぬかるんでいる。ここが「戦場」だ。
ほぼ一番乗りで到着し、10時の開始までまだ間がある。そこで、フィールドのオーナーである井手裕介さんにお話をうかがう。
井手さんの前職は、鍼灸師兼柔道整復師。サバゲーは趣味で嗜んでいて、山間部の空き地の不動産情報を見て、「ここやったら、こんな感じのフィールドが作れるといった妄想をするのも趣味」だったそうだ。
その趣味が高じて土地を購入し、DIYで整地して、京都では数少ないフィールドが誕生した。スマホの電波も届かない場所だが、トイレや女性更衣室は完備。電子レンジなどのアメニティも揃っている。営業日は、基本的に土日祝日。平日の貸し切りも可能だが、参加者の大半が社会人なので、ほぼ週末オンリーの開催。使用料は1人あたり3500円で、迷彩服やエアソフトガンもレンタルでき、手ぶらでの参加も可能だ。
初参加の女性グループや若いカップルも
取材に訪れたのは日曜日の朝。エアソフトガンが撃てる「シューティングcafe&BAR THE ROCK」(宇治市)が、完全に貸し切ったイベントだという。同店の主人jlnさんによれば、参加者の多くは、店のお客さんだという。
9時を回ると三々五々、車に乗った参加者がやってきた。参加者たちはまず、セーフティールームと呼ばれる平屋の建物に入り、迷彩服に着替え、装備の点検と準備を行う。
総勢約30人の大所帯で、女性もちらほらと混じり、年代も様々だが、年長者がやや多めな印象。その1人、サリーさんは50代前半だが、ふだんから鍛えている感のある屈強な身体の持ち主。YouTubeチャンネル「サリーのサバゲーチャンネル」の運営者であり、関西のサバゲーを世に広めようと尽力されている。この日は、動画撮影が目的でなく、純粋に一参加者として訪れたそう。
顔出しNGの条件で取材に応じてくれたのは、ひときわ若いカップル(仮に男性をAさん、女性をBさんと呼ぶ)。お二方ともサバゲーは初参加だという。Aさんは、エアソフトガンの収集が趣味で、今回の貸し切りゲームが「初心者歓迎」をうたっていたことで、サバゲーデビューとなった。Bさんは、Aさんから誘われて一緒に参加したかたち。「エアソフトガンのことは、ほぼ知らなかった」Bさんだが、シューティングゲームの『Call of Duty』をプレイしており、銃を持つ姿もサマになっていた。デジタルゲームがきっかけとなって、サバゲーに関心が向く女性はわりといるようだ。
全参加者が準備を完了させたところで、フィールド入り口の前にいったん集合。井手さんが、スマホを構えて記念の集合写真を撮った。
その後全員が、ビニールシートの垂れ幕で仕切られたフィールドに入場。戦いの幕が切って落とされた。
和気あいあいとした雰囲気で時が過ぎる
サバゲーとは、エアソフトガンで撃ち合うものだが、どんなルールで戦うかについては、多くのバリエーションがある。この日の初戦は、全参加者を赤チームと黄チームの2チームに分かれて撃ち合い、ヒット(弾が命中したことをこう呼ぶ)の総数が少ない側が勝ちというもの。
フィールド入り口側のエリアに赤チームが、向こう側の残り半分を黄チームが陣取り、井手さんのホイッスルとともに戦闘開始。筆者は、赤チームの側から戦況を見学した。
しばらくして、散発的な銃声と「ヒット」の声が上がる。前線にいた赤チームの1人が後方に走り、ドラム缶に置かれた数取器(カウンター)を押す。そして、また前線に戻っていった。1回ヒットしたら、それで終わりでなく、何度でも生き返れるというルールだ。
後から聞いた話だが、赤チームのほうが人数多めで、初心者も多めに調整しているという。そのせいか、ヒットを食らうのは赤チームのほうが多い印象。「藪の向こうから撃ってくるので、相手が見えない」まま、一方的に撃たれる人が続出した。
規定時間の10分が経ち、井手さんが終了のホイッスルを吹く。今度は支配エリアを交代して、赤チームが向こう側を陣取り、再び10分の戦闘が始まった。
筆者は、今度は後方でなく前線まで進出し、撃ち合いの様子を観戦することにした。主宰者である、「シューティングcafe&BAR THE ROCK」店主のjlnさんが、「最前線のやぐらに行きます」と言うので、後をついていく。jlnさんは、鉄パイプのはしごを上がり、やぐらの2階へ。射撃戦では、高所を押さえた側が有利というセオリーだが、果たして……。
jlnさんは、唐突に「ヒット」と声を出した。撃たれてしまったのである。フィールドの端の斜面に潜んでいる敵に狙われたらしい。その射手はおそらく上級者で、見敵必殺の好機をひそかに窺っていたのである。弔い合戦のチャンスもないまま、ゲーム終了のホイッスルが鳴った。
「どちらのチームが勝ったのですか?」と聞いたが、誰も知らなかった。今回のゲームでは皆、勝敗はほぼ関心の外のようだ。「参加者によっては、厳格なルールを設定し勝敗にこだわることもありますが、今日はまったくそれはないですね」と、井手さんは言う。初心者も多いので、あくまでもサバゲーとはどんなものかを体験してもらう、楽しんでもらうことに重きを置いているとのこと。なるほどと思った。
また、今回が初参加となる女性グループに、率直な感想を聞いた。
「興味はあったのですが、『初心者がいきなり参加して大丈夫か。本当に手ぶらで大丈夫か』という不安は若干ありましたね。でも、実際に参加してみると、ちょっとした怖さや緊張が逆に楽しく、想像以上に面白いひとときを満喫しました。次回は、装備を購入して、周囲の人も誘って参加したいですね」と、嬉しそうに話してくれた。
2回戦が終わったところで昼時となり、希望者は対戦を続行、残りの人たちはバーベキューのコンロを囲んだ。炭で焼かれた肉と野菜が食欲をそそり、一同は疲れと空腹を癒した。
銃で撃ち合ったのに、終始和気あいあいとした雰囲気に満たされ、そこには同好の士だけがもつ、ゆるやかな友情の紐帯が感じられた。筆者のような門外漢でも、「また来たいな」と思わせる魅力がそこにはあった。エアソフトガンやシューティングゲームに少しでも興味があるなら、きっとハマると思う。
・「サバイバルゲームフィールド イデ」公式サイト:https://sgfide0611.militaryblog.jp
・「シューティングcafe&BAR THE ROCK」公式SNS:
https://www.instagram.com/therock_sh.bar/
https://x.com/_thexrock_
文/鈴木拓也
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