
ソフトバンクの新サービスとして、「Fast Access」の提供が始まっている。契約者は、データ通信が混雑するエリアでも、多くのネットワークリソースを割り当てられることで、より速い5Gデータ通信が使えるというサービスだ。
通勤、退勤ラッシュのタイミングや、人の多く集まるイベント時などには、回線が混雑して、いつものように安定して通信ができないという経験は、多くの人にあるだろう。ここでは、Fast Accessがどこまで有効なのか、実際に山手線各駅でテストを行っていく。
ソフトバンク「Fast Access」の対応プラン、機種
Fast Accessを利用するためには、対応するプランを契約したうえで、5G SAに対応したSIM、スマートフォンを使用する必要がある。ソフトバンク以外で購入した端末でもおそらく利用できるだろうが、動作保証外となるため注意が必要だ。
Fast Accessの対応プランは、ペイトク2、テイガク無制限、ペイトク無制限、ペイトク50、ペイトク30、メリハリ無制限+の6つとなる。ペイトク2、テイガク無制限はすでにFast Accessが申し込み不要で提供開始されており、残り4つのプランでは、7月1日より、要申し込みでサービスが提供される。
対称プランの契約をしていれば、Fast Access自体は追加料金なしで利用可能となる。また、サービスを利用していても、所定の速度制御などは引き続き適用される。
山手線でFast Accessを実際に試してみた
では、実際に山手線の各駅で、Fast Accessと非Fast Accessの端末を並べ、スピードテストを行った結果を見ていく。今回はソフトバンクから提案していただいた、Fast Accessの効果が出やすい6駅に加え、乗降者数の多い新宿、渋谷、池袋にてテストを行った。
公平を期すため、端末は2台同じものを用意。スピードテストは、タイミングによって差が出ることも多いため、各ポイントで3回ずつの計測を行っている。なにはともあれ、まずは各地での計測結果をまとめた表を見ていこう。
電車がホームに入ってくる際など、タイミングによって数値が極端にばらつくタイミングもあるが、全体的にFast Access対応端末のほうが、安定して高速通信ができている印象を受ける。
もちろん、スポット的には非Fast Accessの端末が、高速で通信ができていることもあるが、安定感には劣る。通信ができなくなるというわけではなく、混雑時には速度が出ないことがある程度だが、通勤時間が長い人などは、Fast Accessの恩恵を受けやすくなるだろう。何より、対応プランに加入していれば、プラン料金の範囲内でFast Accessが利用できるため、“あるとありがたいサービス”であることは間違いないだろう。
Opensignal社での調査では、KDDIが4期連続で最多受賞となっており、近年は「通信品質といえばKDDI」という印象が強くなりつつあるが、レポートをよく見ると、KDDIが首位を獲得している部門のほとんどで、ソフトバンクが僅差で2位につけている。調査結果の通り、ソフトバンクもかなり安定した通信環境を構築できていることを改めて感じられる。
通信品質こそが通信キャリアの土台
ソフトバンクのFast Accessとほぼ同じサービスとして、KDDIはau 5G Fast Laneを提供しているが、ドコモ、楽天モバイルには同様のサービスがない。近年、いたるところで指摘されている通り、通信品質は“2強2弱”の様相を見せているが、サービス面にもこれが出ているといえる。
通信キャリアは、通信サービスだけでなく、金融サービスといったあらゆる周辺サービスを絡めた経済圏競争が活発化している。料金プランにおいても、他社のサブスクサービスを掛け合わせたコンテンツとしての魅力を訴求するようになっており、ただ通信サービスを提供するだけでは勝ち残れない状況になりつつある。
とはいえ、コンテンツを視聴するのも、経済圏を活発にするための顧客を取り込んでいくのにも、通信品質が土台となるのが通信キャリアだ。コンテンツがあろうと、通信が安定していなければ楽しめず、決済サービスが満足に利用できなくなる状況もある。
先日開催されたpovo 2.0サービス説明会では、メイン回線の通信品質に対する満足度、メイン回線の通信品質に対する不満という形で、キャリア別のグラフが公開されている。会社名は明言されていないが、現在の状況を鑑みれば、上位2社、下位2社は明らかだろう。
決算会見で語られる内容にも差が出始めており、ソフトバンク、KDDIはいたずらに回線数を追うのではなく、今いるユーザーに満足してもらい、よりロイヤルなカスタマーになってもらう方針を打ち出しているが、通信品質の低下が目立つドコモ、まだまだ財政的に厳しい楽天モバイルは、新規顧客の獲得に力を入れている。
ソフトバンクの「Fast Access」の実地テストを通して見えてきたのは、単なる通信速度の向上だけでなく、キャリアが「通信の安定性」にどれだけコストと技術を割いているかという事実だ。
ソフトバンクやKDDIが既存ユーザーの体験向上のためにネットワークリソースを優先的に割り当てるサービスを提供しているのは、非常に理にかなっている。一方で、新規獲得に追われるキャリアとの間には、サービス体験の差が今後さらに広がっていく可能性もある。
金融サービスやサブスクのセット割引など、料金プランが複雑化・多様化する時代だからこそ、我々ユーザーは「いざという時にきちんとつながるか」という、通信キャリアの最も根源的な価値を、改めてプラン選びの基準に据えるべき時期に来ているのではないだろうか。
取材・文/佐藤文彦
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