2026年6月24日に公布された改正民法に基づき、公布日から3年以内に「保管証書遺言」が導入されます。「デジタル遺言」とも呼ばれている新たな遺言書の方式です。
保管証書遺言はウェブ会議を利用して作成することもできるほか、紛失や改ざんを防げるなどのメリットもあります。近いうちに遺言書を作成しようと考えている方は、新たな方式の保管証書遺言について確認しておきましょう。
1. 保管証書遺言(デジタル遺言)とは?
「保管証書遺言」とは、改正民法によって認められる新たな遺言書の方式です。
従来は、通常の方式による遺言は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が認められていました。保管証書遺言は、新たな4つ目の作成方法として2029年6月までに導入される予定です。
保管証書遺言は、遺言の全文が記載・記録された証書につき、法務局の遺言書保管官による内容確認や本人確認を経たうえで作成されます。書面(紙)のほか、電子データでも作成可能です。
作成された保管証書遺言書は、法務局の遺言書保管所において保管されます。
2. 保管証書遺言のメリット
保管証書遺言の主なメリットとしては、次の各点が挙げられます。
(1)全文を自書する必要がない
従来の自筆証書遺言とは異なり、保管証書遺言は全文を手書きする必要がありません。
たとえば、PCやスマートフォンなどで証書を作成することもできます。データを印刷した書面や、データそのものを提出することも可能です。
(2)オンラインでも作成できる
保管証書遺言の証書はデータでも提出でき、本人確認もウェブ会議によって行うことが認められています。法務局へ足を運ばず、オンラインで遺言書の作成手続きを完結させることも可能です。
(3)紛失や改ざんの心配がない
保管証書遺言書の原本は法務局の遺言書保管所で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
(4)手数料が比較的安い
具体的な手数料額は未定ですが、公証人が作成する公正証書遺言よりも安くなることが見込まれます。
(5)検認が不要
遺言者が亡くなって相続が発生した際に、通常の遺言書では必要とされている家庭裁判所の検認を経る必要がありません。
3. 保管証書遺言を作成する際の手続き
保管証書遺言は、次の流れで作成します。手続きの詳細は未定ですが、実際に導入されるまでに整備される予定です。
(1)証書の作成
遺言の全文等を記載・記録した証書を作成します。書面(紙)の場合は署名、電子データの場合は電子署名を行います。
(2)保管証書遺言書の保管の申請
法務局の遺言書保管官に対し、保管証書遺言書の保管を申請します。その際、遺言者の氏名・生年月日・住所・本籍や、受遺者・遺言執行者の情報などを提供する必要があります。
(3)本人確認
遺言書保管官が、遺言者の本人確認を行います。
申請人は法務局へ出頭するのが原則ですが、申請人から申し出があり、かつ遺言書保管官がその申出を相当と認めるときは、ウェブ会議によって本人確認を行うことも認められています。
(4)遺言の全文の口述
遺言者が遺言書保管官の前で、証書に記載・記録された遺言の全文を口述します。口がきけない場合は、通訳人の通訳による申述や自書も認められます。
口述は対面で行うのが原則ですが、申請人から申し出があり、かつ遺言書保管官がその申出を相当と認めるときは、ウェブ会議によって口述を行うことも認められています。
(5)遺言書保管所での保管
上記の手続きが完了した後、書面の保管証書遺言書は、法務局の遺言書保管所において保管されます。電子データの保管証書遺言書は、法務局が管理する遺言書保管ファイルに記録されます。
4. 保管証書遺言の作成後の取り扱い
遺言者は遺言書保管官に対し、いつでも保管証書遺言書の閲覧を請求できます。また、保管申請を撤回して遺言書を返してもらうことも可能です。
遺言者が亡くなった場合は、その相続人などが、遺言書の閲覧や遺言書に記録された情報の証明書の提供を請求できるようになります。
相続人などに遺言書の存在を知らせるため、遺言者は遺言書保管官による死亡通知を申し出ることができます。この場合において遺言書保管官は、遺言者が死亡した事実を確認したときは、指定された者に対して遺言書を保管している旨を通知します。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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