パナソニックのテレビ「ビエラ」。その魅力といえば、引き締まった「黒」の表現だが、今年発売する新型モデルは「黒のビエラ」として、その強みをより強化するものとなった。新型機のなかでも同社が特に注力したのがMini LED液晶テレビで、そのラインナップは大きく拡充されている。
Mini LEDを含む液晶テレビでは、バックライトの明るさにより、漆黒の表現が難しいとされている。その条件下で、パナソニックはいかにして黒を追求したのか。発表会で感じた魅力をレポートする。
ニーズの高まりによる、Mini LEDのラインナップ拡充
2026年のビエラは、Mini LEDモデルのラインナップを3シリーズに拡充した。これは、市場の関心の高まりを受けてのものだ。
発表会に登壇した同社の金澤貞善氏によれば「Mini LEDでは、当社が最後発だと思っている。今回のラインナップ拡充は、パナソニックがMini LEDと本気で向き合っていくという証」とのこと。ビエラは最高画質を追求すべく、これまでは有機ELテレビを中心に注力してきた。実際、今回も全体の最上位は有機ELモデルとなっている。それでもメーカーとしては、市場のニーズに応えなくてはならない。だが、中途半端なものは作れない。その意志の表れが、今回のラインナップ拡充と進化である。
Mini LED液晶テレビの新型機のなかで最上位に位置づけられるのが、「Bright Black Panel Ultra」、360度立体音響サウンドシステムを搭載した「W97C」シリーズ。75V型、65V型、55V型を用意し、7月下旬の発売を予定している。続いて、ハイグレードモデルの「W95C」シリーズ、スタンダードモデルの「W93C」シリーズを展開する。使用するパネルの差異こそあるが、Mini LEDを液晶テレビフラッグシップだけの特別な技術にとどめず、より多くのユーザーが選べるラインナップへ広げたことは、今年のビエラの大きな特徴だ。
前年モデル比2倍のピーク輝度が、黒の深さを際立たせる
液晶テレビは、高いピーク輝度を出せるので、明るいリビングでも力強い映像を楽しみやすい。一方で、細やかな黒の表現には、緻密なバックライト制御が必要だ。今回の新型ビエラは、その両面を追求したものとなっている。
フラグシップのW97Cシリーズでは、高輝度Mini LEDバックライトに加え、色の鮮やかさを生み出す量子ドット、高輝度広視野角シートを採用。ピーク輝度は前年モデルの約2倍に向上しており、映像の力強さは明らかに増している。さらに、新技術の「ミニマムルミナンスコントロール」によりバックライトの制御を細分化し、明るくすべき部分と暗く沈める部分をより緻密に描き分けられるようになった。
実機デモで印象的だったのは、白の明るさに加えて、その明度によって相対的に黒が引き締まって見えることだ。たとえば、暗い背景のなかで光る電球のフィラメントは、単に眩しく表現されるのではなく、光が光源から周囲へと広がる階調まで丁寧に描かれていた。明るい部分がしっかり立ち上がること、そして細かなバックライト制御によって、相対的に暗部が強調され、映像全体に立体感が生まれている。
「明るいテレビ」と聞くと、眩しいものを想像するかもしれないが、決してそういうわけではない。W97Cが高めているのはあくまで「ピーク輝度」であり、常に明るいというわけではないのだ。そのビーク輝度が発揮されるのは“明るくすべき時と場所”だけである。筆者が発表会で実機を見た感覚では、通常の部屋の明かりのもとで見るぶんには、眩しすぎると感じることはないように思われた。
映画『沈黙の艦隊』吉野監督も評価した「映画館のような映像と音」
発表会には、映画『沈黙の艦隊』シリーズなどで監督を務める、吉野耕平氏が登壇。同作を新型ビエラで視聴した印象を語った。
『沈黙の艦隊』は、潜水艦を舞台にした作品ということもあり、艦内や海中など暗いシーンが多い。薄暗い艦内に浮かび上がる計器類の光、海中のマリンスノー、わずかな陰影の違いなど、明るく見せすぎても、暗くしすぎても成立しない表現が多い作品だ。
吉野氏は、そうした細かなニュアンスについて、新型ビエラでは「しょうがないかなと思っていた表現をきれいに拾ってもらえた」と評価。特に、北極点の氷を突き破り、オーロラの下で主人公が演説するシーンでは「オーロラの淡い光、舞う粉雪、人物の肌色といった要素のバランスをすべて表現できていた」という。見えるか見えないかの繊細な表現を丁寧に拾えることは、暗部の表現に力を入れてきたビエラらしい強みといえるだろう。
また吉野氏は、音の進化についても語った。W97Cシリーズは、上向きに音を放つイネーブルドスピーカーやウーハーを組み合わせたマルチスピーカーシステムを搭載し、360°の立体的な音響表現を可能にしている。
『沈黙の艦隊』では、クラシック音楽が流れるなかで激しいバトルが展開され、さらに専門用語を含むセリフも飛び交う。音楽、効果音、セリフのいずれかが埋もれてしまいそうな場面だが、吉野氏は「それぞれの音がストレスなく耳に届いた」と話していた。筆者もデモを鑑賞したが、音に囲まれている感覚や音圧の強さがあり、従来機とは明らかな差があった。
吉野氏曰く「テレビの映像が、シアターに迫るものになってきている」。「歳をとって劇場に行くのが厳しい父に、このビエラで『沈黙の艦隊』を見て欲しい」とのことだ。
有機ELテレビは、映り込み軽減で映像の純度が向上
一方で、ビエラの最上位モデルとして展開される有機ELテレビも進化している。2026年モデルの「Z95C」シリーズでは、新世代のプライマリーRGBタンデムを採用。発光効率や開口構造を改善することで、高輝度化と色輝度の向上を図った。
有機ELテレビの魅力は、パネルそのものが発光・消灯することによるコントラストの鮮やかさだ。液晶テレビのようにバックライトを必要としないため、黒の表現ではもともと優位性がある。その一方で、明るいリビングなどでは外光の映り込みが気になることもあった。
そこで本機には、画面への映り込みを抑える「低反射ブラックフィルターPRO」を新搭載。実機デモでは、画面への映り込みが明らかに抑えられていることが確認できた。日中のリビングのような明るい環境でも、有機ELの強みであるコントラストを保ちやすくなっている。
音質面では、声の定位処理が強化された。人物の声が画面の中央から自然に聞こえるように調整されており、映像と音の一体感が高まっている。Z95Cシリーズは、イネーブルドスピーカーやワイドスピーカー、ラインアレイスピーカーなどを組み合わせた立体音響システムを搭載しており、映画やドラマを楽しむうえでの没入感が高い。
Mini LEDへの注力を表明したパナソニックだが、最上位モデルとしての有機ELのクオリティはしっかり維持、進化させている。W97Cに代表されるように、近年の液晶の進化は目覚ましいのも事実だが、最上位としての有機ELの存在が揺らいでいるわけでもない。Z95Cは、色の鮮やかさや黒の表現など、有機ELならではの魅力をはっきりと感じ取れる製品に仕上がっている。
安心して、快適に使い続けられるテレビへ
今回の新型ビエラでは、画質や音質だけでなく、日常的な使いやすさにも配慮が加えられている。
たとえば、全機種に標準搭載のFire TVのホーム画面は、7月以降に順次アップデートが予定されている。従来はNetflixやAmazon Prime Videoといった各種のアプリアイコンが画面上部に配置されていたが、新しいUIではそれらを下部へ移動。ユーザーが選びたいのはアプリではなく映像コンテンツであるという点に着目し、このような改良を実施した。
また、リモコンを見失った際に「アレクサ、リモコンを探して」と話しかけることでリモコンを鳴らせる「見つかるリモコン」や、複数のワイヤレスイヤホンで同時にテレビの音声を楽しめるAuracastにも対応。家族で同じ番組を楽しみたいときや、夜間に音量を気にせず視聴したいときなどに活躍しそうだ。
パナソニックらしい機構である、転倒防止スタンドにも触れておきたい。大画面のテレビが地震などで倒れてしまうと、故障はもちろん、大きなけがに繋がりかねない。そこで、同社はテレビの脚部底面に吸盤を設置し、震度7相当レベルまで耐えられる耐震設計にしている。電化製品の安心安全は、パナソニックが創業以来大切にしていることのひとつだ。
黒と明るさの両面で進化を遂げた2026年のビエラ。立体的に響く音響とあわせて、映画館にも劣らないような迫力を実現している。そこに、Fire TV、Auracast、転倒防止スタンドといった日常での使いやすさが加わる。2026年のビエラは、安全・快適に、映像の美しさを十分に堪能できるテレビといえるだろう。
文/畑野壮太
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