初代が2011年に登場したアウディのプレミアムコンパクトクロスオーバーモデルがQ3。フォルクスワーゲン・ティグアンと兄弟車であり、SUVとスポーツバックを用意する世界の高級コンパクトクロスオーバーモデルのベンチマークとされた1台である(日本には2012年5月に導入)。
2代目は2020年にSUVとスポーツバックが同時に発表され、SUV、クロスオーバーモデルの世界的ヒットを受け、アウディの中核車種として、日本国内で扱いやすいサイズ感もあって人気を博してきた。
そんなアウディのベストセラーモデルであるQ3の3代目となる新型が2026年5月9日に発売され(本国では25年8月発売)、今回、その試乗が叶うことになった。キャッチフレーズは「アクティブな時間をよりスタイリッシュに」である。
世界的人気SUVが3代目へ、扱いやすいサイズはそのまま進化
ボディタイプは例によってクロスオーバーSUVとスポーツバックの2種。ボディサイズは2代目に対して全長がフロントセクションで40mm伸びた全長4530×全幅1860×全高1610(スポーツバックは1570mm)mm。ホイールベースは2代目同様の2680mmとなる。つまり、日本の路上でも扱いやすいサイズと言っていい。
パワーユニットは高性能・高効率を両立したTFSIエンジンと7速Sトロニック(2ペダルMT)を基本に、前輪駆動となるAudi Q3 / Q3 Sportback TFSI 110kW には最高出力 110kW(150ps)、最大トルク 250Nm (25.5kg-m)の 1.5 TFSI 直噴エンジンを搭載。気筒休止システムのシリンダーオンデマンドとマイルドハイブリッドシステムを採用し、モーターは加速時のアシストを担う。
Audi Q3 / Q3 Sportback TFSI quattro 150kW は最高出力150kW(204ps)最大トルク320Nm(32.6kg-m) を発揮する、よりパワフルな2.0 TFSI エンジンとquattro=四輪駆動システムの組み合わせとなる。価格はQ3 TFSI 110kW advancedの550万円からQ3 Sportback TFSI quattro 150kW advancedの628万円までの展開だ。とくに、これからのアウディのエントリーモデルになりうる、しかし先進装備満載のQ3 TFSI 110kW advancedの550万円はかなりがんばった、いや、周りを見渡せば、割安感さえある価格設定と言えるだろう。
デジタル化が大幅進化、ライティング技術もクラス随一に
そんな新型Q3は室内空間、パッケージングこそ先代を継承しているものの、技術的ハイライトは数多く、まずはデジタル化の進化が目覚ましい。アウディが得意とする先進のライティングテクノロジーはQ3初採用のデジタルマトリクス LED ヘッドライト(25600個のマイクロLED 搭載。Audi Q3 / Q3 Sportback TFSI 110kW にはオプション)を始め、出発と帰宅時に車両前方にアニメーションを投影するカミングホーム/リービングホーム機能、路面に2本のラインを投影し、車線中央の走行をアシスタンスするオリエンテーションライト、高速道路の走行時に環境に応じて自車線を照射し、車線変更時に方向指示器と連動して車線端にライティングを映し出すレーンライト、外気温が一定温度を下回ると雪の結晶のマークを路面に投影するワーニングプロジェクションなどが実現されている。
さらにバーチャルコックピットプラス(メーター)と12.8インチのMMIタッチディスプレイが一体となったMMIパノラマディスプレイを新採用。インテリアにはマルチカラーアンビエントライティングを標準装備し、最大30色の中からライティングのパーソナライズが可能となる。
運転にかかわる機能としては、シフターを刷新。ステアリングコラム右側のレバーで操作できる方式に改められ、左側のレバー周りがウインカーとワイパー操作を担うことになる。シフターがステアリング側に移動したことで、センターコンソールはスッキリ。収納力が増しているのが嬉しい。
電子制御ダンパーが乗り味を一変
そして新型最大のハイライトと言っていいかも知れないのが、4輪各ホイールの伸び、縮み側に、短時間かつ緻密に制御される2バルブ式電子制御ダンピングコントロールを採用したことだ。アウディとしてはe-tron GTに次ぐ2例目の採用となる技術であり、新型ではアウディのプレミアムコンパクトSUVとして初採用、全車に標準装備としている。
なお、アウディドライブセレクト(ドライブモード)は快適かつ燃費性能に優れた「バランス」、上質かつ街乗りに適したしなやかな足回り、乗り心地になる「コンフォート」、アクセルレスポンスとステアリングレスポンスが高まり、2バルブ式電子制御ダンピングコントロールによってもっともスポーティな乗り味となる「ダイナミック」、燃費を重視した効率的走行モードのエフィシエンシーの4種類が用意されている。
新型Q3ではドライバーアシスタンスシステムの充実も見逃せないポイントだ。駐車を容易にするメモリー機能はドライバーが一度行った駐車ルートを記憶し、次回以降はシステムが運転操作を引き継ぎ、駐車を自動かつ障害物検知機能を伴って再現。駐車スペースの入庫、出庫ルートはそれぞれ最大5件まで保存できるのだから便利すぎる。駐車が苦手なドライバーもQ3任せで駐車できることになる(1回は自身、または駐車上手な人に操作してもらう必要はあるが)。
加えて、リバーシングアシスト機能も用意。前進時の走行ルートを自動的に記録 し、その記録に基づいてステアリング操作を再現することで後退走行を支援。操作はシンプルで停止後にリバースギアを選択し、ボタンを押すだけで作動。狭い道が想定外の突き当りだったり、バックせざるを得ない場面で大いに役立つ安心・安全機能と言っていいだろう。※アウトサイドミラー内360度カメラ、リヤコーナーレーダー、リヤ360度カメラなどを搭載。
走り出した瞬間に感じるプレミアム感と滑らかさ!
さて、今回、試乗を行ったのはAudi Q3 TFSI 110kW advanced。つまり、550万円のFWD=前輪駆動となるベースモデルだ(それでも装備が充実したプレミアム仕様)。車重は1610kg。繰り返しになるがパワーユニットは1.5L直4DOHCインタークーラーターボエンジンを基本にマイルドハイブリッド化されたもので、150ps、25.5kg-mを発揮。組み合わされるミッションは7速Sトロニック(DSG)。サスペンションはF:ストラット、R:マルチリンク。履いていた試乗車両のタイヤは235/55R18サイズのブリヂストンの欧州プレミアムカー向けとなるTURANZA 6だった。
アウディドライブセレクトのバランスモードで走り出せば、マイルドハイブリッドらしく軽快かつ素晴らしくスムーズに前に出る。7速Sトロニックは以前にも増してスムーズな変速を行い(というか、変速ショック皆無)、視界の良さもあってプレミアム感ある爽快なドライビングのスタートとなった。乗り心地はドライブモードがバランスでもアウディ流にスポーティで路面の凸凹を伝えてくるものの、しなやかで終始フラット。路面の凸凹をまろやかにいなしてくれる印象だ。そう、走り始めからプレミアム感がある。
一般道から高速道路に入れば、「このQ3、クワトロだったっけ」なんて思わせるほど直進安定性に優れるとともに、車内の静かさが際立つ。ブリヂストンの欧州版TURANZAはことさら静粛性に優れているタイヤではないはずなのだが、ロードノイズはアウディの伝統通り、車体側で見事に遮断されている。このあたりはプレミアムブランドの面目躍如と言っていい部分だろう。
ステアリングは軽く扱いやすく、しかも適度にクィック。狙い通りのラインをトレースしやすく、また自然でジェントルな操舵感を示す。つまり、カーブ、高速レーンチェンジでの姿勢変化の少なさを含め安心感が高い上質な乗り味、運転のしやすさを堪能できることになる。
アウディドライブセレクトをダイナミックにセットすれば、シャシーは一段とシャキッと引き締まったタッチになり、道路のジョイント越えではショックが素直に伝わってくるものの、それはそれでスポーティなドライビング感覚を得られることになる。もちろん、それでも決して不快な乗り心地ではない。
ゆったりとした運転、ドライブを楽しみたいときに最適なのはコンフォートモードだ。235/55R18サイズのタイヤを履いているとは思えない、マイルドかつ快適で、路面を舐めるような乗り心地に変貌。それでいて高速レーンチェンジなどでも不安のない操縦安定性を示してくれるのだから、アウディQ3に何を求めるかにもよるが、このモードは個人的にお気に入りである(愛犬を乗せてのドライブにも最適だ)。
こうした各ドライブモードでの乗り心地、フットワークの違いがそれぞれのモードで明確になるのは、なるほど、2バルブ式電子制御ダンピングコントロールの成せる業、と言っていい。足回りを協調しないドライブモードとは別物なのである。ただし、ほかのアウディもそうなのだが、アウディドライブセレクトのスイッチの位置はインパネセンター下部の7つが並ぶスイッチの一番左、つまり左ハンドル用のまま?であり、スイッチでセットしなおすのには手を大きく伸ばす必要があるのが不満と言えば不満(センターディスプレーでもセット可。バランスにセットしっぱなしの人なら余計なお世話だが)。また、ウインカーの操作タッチが硬く、作動音を含めややプラスチッキーに感じられた点もプレミアムブランドとしては惜しまれる。
また、12.8インチとなった11.9インチのバーチャルコクピット(メーターパネル)から連続するセンターディスプレーはタイルインターフェースが改められ、MMI((Multi Media Interface))の進化はさすがだが、アンドロイドベースのインフォテイメントシステムのナビゲーションの使い勝手に限っては最新のGoogleインフォテイメントシステムに敵わないように思えたのも本当だ。
とはいえ、走りに関してはドライブモードにもよるが、乗り心地、静粛性、快適性、エンジンの気持ちよさ、Sトロニックの変速のスムーズさ、場面を問わない安定感、そして最新ライティングテクノロジーなど、コンパクトクロスオーバーモデルとしてプレミアム感たっぷりであることは間違いない。
後席も荷室も妥協なし。ファミリーでも使いやすい実用性
ちなみに先代と大きく変わらないパッケージングだが、後席の広さも十二分。身長172cmの筆者のドライビングポジション背後で頭上に145mm、膝回りに足がゆったり組める最大220mmのスペース(後席スライド機構付き)があるとともに、フロアから後席座面先端までの高さ=ヒール段差が360mmもあり、自然で椅子感覚で着座できる快適感があり、3ゾーンオートエアコンの後席エアコン吹き出し口(独立温度調整可)やUSB-C×2も完備しているから、後席の乗員(と愛犬も)も快適だろう。
ラゲッジルームは後席スライド後端位置で488L、スライド前端で575L、後席格納時で1400Lもの容量がある。具体的には開口部地上高740mm(やや段差あり)、幅1000mm、後席スライド後端位置での奥行き885mm、天井高700mm(床下収納なし/すべて実測)。日常からアウトドア、ドライブ旅行にまったく不足ない容量、使いやすさがあると言っていいだろう。後席が4:2:4分割であることも長尺ものの積載、後席からラゲッジルームの荷物の出し入れのしやすさを含め使いやすさの決め手になるはずだ。
今回はクワトロモデル、SUVに対して21万円高となるスポーツバックモデルに試乗する機会はなかったが、スタイリッシュさを増すスポーツバックモデルは後席頭上、ラゲッジルーム天地方向にやや制限があるだけで、前席室内空間はほぼ同じ。試乗会会場に置かれていた特別仕様車、Audi Q3 Sportback matte editionはAudi Q3 / Q3 Sportback TFSI 110kW advanced をベースにマットカラーを纏い、19インチタイヤ& Audi Sport 製19インチアルミホイールを装備。インテリアではスポーツシートを備え、S lineさながらのスポーティな佇まい、存在感を放つ新型Audi Q3 シリーズの導入を記念したモデルとなっている。価格は778万円である。
そのほか新型Q3導入特別仕様モデルとしてQ3 launch edition(636万円)、Q3 Sportback launch edition(657万円)も用意されている。
文/青山尚暉 写真/青山尚暉 アウディ




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