コロンビア代表×ツマベニチョウ
コロンビア代表といえば、鮮烈なイエローを基調に、ブルーとレッドを配したユニフォームです。遠くからでも目を引くこの配色は、南米サッカーらしい情熱と華やかさを感じさせます。そして、そのコロンビア代表のユニフォームを思わせる昆虫が、インドネシアの一部地域に生息するツマベニチョウの個体群です。ツマベニチョウは日本国内では沖縄など、海外では東南アジアや南アジアにかけて広く分布するチョウで、沖縄の個体群などでは白い翅に前翅の先端がオレンジ色になります。しかし、インドネシアの一部地域では、翅全体が鮮やかな黄色を帯び、前翅の先端が濃いオレンジ色から赤みを帯びる個体が見られます。その姿は、まるでコロンビア代表のユニフォームを自然界で再現したかのようです。
ツマベニチョウはモンシロチョウなどと同じくシロチョウ科に属する種類なのですが、世界最大級のシロチョウとして知られ、大きな翅を広げると10cm近くにもなります。日本でも見られるモンシロチョウなどの身近なシロチョウを想像していると、その大きさに驚かされることでしょう。大きな翅をゆったりと動かしながら飛翔する姿は、まるで空を優雅に漂う帆船のようにも見えます。南米の強豪として世界大会でも存在感を放ってきたコロンビア代表もまた、ピッチ上でひときわ目を引くチームかと思います。鮮やかな黄色と圧倒的な存在感という共通点が、この組み合わせをより印象的なものにしています。
クロアチア代表×ヒトリガの一種Utetheisa pulchella
次は、昆虫好きなら思わず「ここまで似るのか」と驚く組み合わせです。クロアチア代表といえば、白地に赤の市松模様。サッカー界でも屈指の個性を持つユニフォームとして知られています。そして、そのイメージに驚くほど近い昆虫がヒトリガの一種Utetheisa pulchellaです。この種類は、白色から淡いクリーム色の翅全体に、赤色の斑点が規則的に散りばめられています。完全なチェック柄ではないものの、全体として見ると赤白のリズム感ある配置が、クロアチア代表のユニフォームを連想させます。
この種は、幼虫時代に食草を通して毒であるアルカロイドという化学成分を蓄え、成虫になっても持ち続けます。そのため、目立つ模様は「私は食べないほうがいい」というメッセージとして機能していると考えられています。クロアチア代表のユニフォームもまた、一目見れば誰のチームか分かる圧倒的な識別性を持っていますよね。ワールドカップの舞台では、個性的なカラーリングがチームの記憶を強く残すかと思います。自然界でもスポーツの世界でも、“忘れられない色と模様”には理由があるのではないでしょうか。
スウェーデン代表×シンジュキノカワガの後翅(後ろばね)
最後はスウェーデン代表です。スウェーデンといえば、深みのあるブルーに鮮やかなイエローを組み合わせた北欧らしいカラーリング。シンプルながら高い識別性を持ち、国旗とも強く結びついたデザインとして知られています。この組み合わせを昆虫界で再現しているのが、シンジュキノカワガの後翅(後ろばね)です。翅を閉じた状態のシンジュキノカワガは比較的落ち着いた色合いで、樹皮や周囲の環境に溶け込む姿を見せています。しかし翅を開くと印象が一変。後翅に現れる鮮やかな黄色と、それを引き締める濃色部分のコントラストが非常に印象的です。
この後翅の鮮やかな色には天敵を驚かせる効果があると考えられています。静止時は目立たず、飛び立つ瞬間に鮮やかな色を見せることで天敵の注意を逸らす作戦です。普段は目立たない姿でじっと身を潜めていますが、危険が迫ると突然鮮やかな色彩を見せることで相手の注意を逸らし、その隙に逃げるのです。普段は冷静で組織的な戦いを見せながらも、ここぞという場面では鋭い攻撃で相手を脅かす姿は、今回のスウェーデン代表と重なる部分があるか注目ですね。
ワールドカップでは戦術やスター選手に注目が集まりますが、ユニフォームの色にも目を向けると新しい楽しみ方が生まれるかと思います。そして視点を少し変えると、昆虫たちの姿が、世界各国の代表カラーと不思議な共鳴を見せてくれるかもしれません。
昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
文/牧田習







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