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【牧田習の昆虫博士】実は身近な場所にいる!世界一●●な昆虫たち

2026.07.12

図鑑やインターネットなどを通して情報を得られる時代では、「世界一大きい」「世界一美しい」と言った海外のスゴい昆虫のことを知れる機会も多いかと思います。「世界一」と言うと、遠い存在に感じるかもしれませんが、日本の私たちの生活に身近な場所にも「世界一◯◯な昆虫」たちが存在しています。今回は、そんな世界一の昆虫3点について解説いたします。

世界一分布が広い昆虫「イエバエ」

家の中や飲食店などでプーンと飛んでる姿を見かけることのあるハエの一種・イエバエ。衛生害虫として嫌われがちな存在ですが、実は世界で最も分布が広い昆虫でもあります。イエバエはもともと中東地域が原産と考えられています。しかし、人類の移動や農耕、家畜の飼育とともに分布を拡大し、現在では南極大陸を除くほぼすべての地域に生息しています。都市部はもちろん、農村、砂漠のオアシス、高山地帯など、人間が生活する場所であれば世界中のどこにでも見られるといってよいでしょう。

イエバエがここまで広がった理由は、人間との密接な関係にあります。幼虫は動物の糞や生ごみなどを利用して成長し、成虫も人間の生活圏で容易に餌を見つけることができます。つまり、人類の活動そのものがイエバエの生息環境を世界中に作り出したのです。

昆虫には飛翔能力の高い種が数多くいますが、自然の力だけでこれほど広範囲に分布を広げたわけではありません。人類との共生関係を築いた結果、イエバエは地球規模で成功した昆虫となったのです。

普段は迷惑な存在として見られがちなイエバエですが、その生存戦略は昆虫史上でも屈指の成功例といえるでしょう。

世界一家畜化された昆虫「カイコガ」

牛や馬が世界中で家畜であることはよく知られていますが、昆虫界にも、人類によって完全に家畜化された種が存在します。それはカイコガです。カイコガは絹を生産するために数千年前から飼育されてきた昆虫で、長年にわたり人間がより多くの絹を作る個体を選抜し続けた結果、現在のカイコガは野生では生き残れない昆虫になりました。

また、カイコガの成虫は飛ぶことができません。翅はありますが、体が重くなりすぎて飛翔能力を失っています。また、幼虫は人間が与えるクワの葉に依存しており、野外で効率よく生き延びる能力も低下しています。そのため、現在のカイコガは自然界に存在しません。人間が飼育しなければ存続できない昆虫なのです。

これは昆虫の中では極めて特殊な例です。ミツバチも人間によって飼育されていますが、野生集団が存在します。一方でカイコガは、人類の管理下でしか生きられないレベルまで進化してしまいました。長い人類史のなかで、これほど徹底的に家畜化された昆虫は他にほとんどありません。私たちが着るシルク製品の裏側には、人類と昆虫が築いてきた数千年の歴史が隠されているのです。

世界一種類が多い昆虫は「ゾウムシvsハネカクシ」

「世界で最も種類が多い昆虫は何か?(科のグループで)」と聞かれたら、小さなガやハエなどを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、その答えとしてよく挙げられるのがゾウムシの仲間です。ゾウムシは甲虫目に属するグループで、長く伸びた口先が特徴です。世界ではおよそ8万種以上が発見されており、未発見のものまで含めればその数はさらに増えると考えられています。

ゾウムシの仲間

ただ、「世界一種類が多い昆虫」を巡る議論では、同じ甲虫目のハネカクシも有力候補です。ハネカクシも非常に多様で、見つかっている種数ではゾウムシと双璧をなしています。そのため研究者の間でも、「最も種数が多い昆虫はゾウムシかハネカクシか」という議論が続いています。

ハネカクシの仲間

日本でも身近な森に行き、花や葉、落ち葉の中などを観察すると、さまざまなゾウムシやハネカクシを見ることができます。体長数ミリしかない小さな種が多いため目立ちませんが、圧倒的な多様性を感じることができます。僕が考える昆虫の最大の魅力は他の生き物と比べても群を抜いて豊かな多様性だと思うので、ゾウムシやハネカクシを通じて昆虫最大の魅力を体感してみてくださいね。

昆虫ハンター・牧田習

博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。

著書:「昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本」(小学館)、「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my

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文/牧田習

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