AIの急速な進化や地政学的リスクの増大などにより、「不確実性」が高まっていると言われる今の時代。そんな中で、この先数十年にもわたる社会人生活のスタートラインに立った新入社員たちは、どのような意識で仕事・キャリアと向き合っているのだろうか?
リクルートマネジメントソリューションズはこのほど、2026年3~4月に全国で開催した公開型新入社員導入研修受講者683名(調査1)、同時期に開催したインハウス型新入社員導入研修およびWEB学習プログラム受講者3,041名(調査2)に対し、「新入社員意識調査2026」を実施し、その調査結果を発表した。
働くうえでの意識
■働いていくうえで大切にしたいことは「社会人としてのルール・マナーを身につけること」が引き続きトップ
・働いていくうえで大切にしたいこととして最も多く挙げられたのは、「社会人としてのルール・マナーを身につけること」(53.6%)であった。3年連続のトップで、過半数の人が選択した。
・「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」(34.3%)は調査開始以来の最高値となった。
・「周囲(職場・顧客)との良好な関係を築くこと」(32.9%)、「何があってもあきらめずにやりきること」(13.3%)は調査開始以来の最低値となった。
⇒社会人としての基盤となるルール・マナーへの意識は引き続き高く、安定していることがうかがえる。
また「挑戦すること」が過去最高を記録したことは、不確実性が高まる時代の中で、自ら変化に向き合おうとする意識の芽生えを感じさせる。いっぽうで、「あきらめずにやりきること」が過去最低となった点には留意したいところだ。挑戦意欲の高まりの裏側に、粘り強さは相対的に薄れている可能性があり、挑戦を奨励するだけでなく、実践後のフォローの重要性が示唆される。
図表1 働いていくうえで大切にしたいこと(調査1)
■新入社員時代に身につけるべきことは「社会人としての基本行動」が例年と同じくトップ
・新入社員時代に身につけるべきこととして最も多く挙げられたのは、「社会人としての基本行動(報告・連絡・相談、PDCAなど)」(52.1%)で、過半数の回答を集めた。
・「業務に必要な専門知識やスキル」(4.5%)や「セルフコントロール力(体調管理、モチベーション維持など)」(3.1%)を挙げる回答は少数にとどまった。
⇒働き方やキャリアの多様化が進む中でも、報告・連絡・相談や主体性、責任感といった基礎的な行動様式は、変わらず重要な土台として認識されていることがうかがえる。
図表2 身につけるべきこと(調査2)
■仕事・職場生活をするうえでの不安は「仕事についていけるか」が例年と同じくトップ
・仕事と職場生活をするうえで不安に思うこととして最も多く挙げられたのは、例年と同じく「仕事についていけるか」(64.6%)であった。
・次いで、「上司とうまくやっていけるか」(42.9%)、「先輩・同僚とうまくやっていけるか」(36.8%)という、職場内の人間関係に関する項目が上位となった。
・一方で、「十分な収入が得られるか」(8.1%)や「雇用が継続されるか」(2.7%)といった項目は低い結果となった。
⇒最大の不安が「仕事についていけるか」なのは、不確実性が高まる時代環境やAIの急速な進化を背景に、「自分の能力が通用するのか」という不安を感じやすくなっていることがうかがえる。
一方、「収入」や「雇用」への不安は低く、近年の初任給引き上げの動きや転職市場の活況により、収入・雇用面での不安は相対的に和らいでいる可能性がある。
こうした結果は、今の新入社員の関心が「経済的な安定」よりも「仕事を通じた成長」にあることを示唆しており、育成施策においては成長実感を早期に持たせる工夫が重要になりそうだ。
図表3 仕事・職場生活をするうえでの不安(調査2)
仕事・職場観の特徴
■仕事をするうえで重視することのトップは「成長」。昨年比で最も上昇したのは「創造」
・仕事をするうえで重視することとして最も多かったのは、例年と同じく「成長」(32.4%)であった。
・一方で、「達成」(13.9%)、「金銭」(12.0%)、「承認」(11.9%)、「競争」(3.7%)は中位~下位の結果となった。
・「創造」(9.8%)は、選択率は高くないが、前年から最も上昇した項目となった。
⇒新入社員は、達成や金銭など外からの刺激による動機づけ(外発的動機づけ)よりも、成長実感や貢献実感など、内面的価値観とのつながりを感じることによる動機づけ(内発的動機づけ)が有効であることがうかがえる。
また、「創造」の上昇は一過性のものか継続傾向になるか今後の注目ポイントだ。AIが普及する時代において、自ら新たな価値を生み出すことへの意識が高まりつつあるのかもしれない。
図表4 仕事をするうえで重視すること(調査2)
■働きたい職場のトップは「お互いに助けあう」。「皆が一つの目標を共有している」が過去最低に
・働きたい職場の特徴として最も多かったのは、「お互いに助けあう」(66.8%)で、3人に2人以上が選択し、調査項目全体の中で最も選択率の高い項目であった。
・「皆が一つの目標を共有している」(23.9%)は過去最低となり、「ルール・決め事が明確」(16.5%)は過去最高となった。
⇒「お互いに助けあう」の選択率の高さは、同じく高い選択率であった「仕事についていけるか」という不安の裏返しとして、困ったときに頼れる環境を求めていることがうかがえる。
変化が速く、対応の難しさが増す今日のビジネス環境では、成果や成功体験はすぐに得られにくくなっている。最も経験が少ない新入社員が大きな不安を持つのは当然と考え、不安を前提とした受け入れ設計や成長支援のしくみを築いていくことが、結果として成長や成果への早道になっていくだろう。
図表5 働きたい職場(調査1)
■上司に期待することは「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が過去最高で初のトップに。「言うべきことは言い、厳しく指導すること」が3年連続で上昇
・上司に期待することとして最も多かったのは、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(50.1%)で、調査開始以来、初めてトップとなり、過去最高であった。
・また「言うべきことは言い、厳しく指導すること」(24.0%)が3年連続の上昇となった。
⇒上司に期待することに見られるこれらの変化も、「仕事についていけるか」という不安が背景にあると考えられる。今日のビジネス環境は、一人で乗り越えていくことはとても困難な環境であり、「お互いに助けあう」という心理的安全性の高い職場風土を土台に、「上司からの丁寧で、成長につながる指導」への期待が見てとれる。
今日の若者は「厳しい指導は苦手」という傾向があったが、仕事への不安の高まりを背景に、「何も言われず成長しないことの方がリスク」という捉え方が生まれてきていることがうかがえる。
上司世代が受けてきた「厳しい」のイメージとは一致しないかもしれないが、上位にある「丁寧さ」「耳を傾けること」「ほめること」と、「成長のために言うべきことは言う」ことは決して矛盾するものではない。フィードバックの方法には様々なノウハウが存在し、そうした最新の知恵も取り入れながら、言うべきことを言う技術をアップデートしていくことに今後の関わりのヒントがありそうだ。
図表6 上司に期待すること(調査1)
■過去10年比較から、理想の職場・上司像は「活気」「情熱」「厳しい指導」から、「個性の尊重」「助けあう」「丁寧でよい点はほめる」方向に変化
・10年前の2016年と比較すると、新入社員が理想とする職場像・上司像には大きな変化が見られた。かつて重視されていた「活気」「情熱」「厳しい指導」といった要素よりも、「個性の尊重」「助けあう」「丁寧でよい点はほめる」への期待が高まっている。
⇒上昇項目と下降項目の変化は、効果的な育成のあり方が大きくシフトしていることを示している。強さを持ち熱量で引っ張るアプローチから、一人ひとりの個性と不安に向き合い、安心できる関係性を土台に伴走的に成長を支援するアプローチが、今後の新入社員育成には有効となるだろう。
なお「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は、10年前との比較において、他の項目より減少幅が大きいためピックアップしたが、近年は3年連続で上昇傾向にあり、この後もこの流れが続くのか注目したい項目だ。
図表7 理想の職場・上司の過去10年間比較(調査1)
結果全体の中で注目したい傾向と考察
■「挑戦」・「厳しい指導」の結果の向上
・「働いていくうえで大切にしたいこと」で、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」が過去最高
・「上司に期待すること」で、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」が3年連続で上昇
・「仕事をするうえで重視すること」で、「成長」が他の項目より突出する形が顕著に
■不安を背景とした成長意識の高まり
・今の時代環境として、不確実性が高まり、AIの進化も進む中で、「自分の力を高めること=成長」への意識が高まっている
・「守られる環境」だけでは不安であり、「成長できる環境」を重視する傾向が出てきている
・これまでも成長を重視する傾向はあったが、「成長したい」という前向きな欲求だけでなく、「成長しなければ」という不安や焦りが新たな背景として加わってきている
調査担当のコメント
今年の注目すべき傾向として、「挑戦」と「厳しい指導」の結果の上昇が挙げられます。「失敗を恐れずどんどん挑戦すること」が過去最高となり、上司への期待では「言うべきことは言い、厳しく指導すること」が3年連続で上昇。仕事での重視項目でも「成長」が他項目を大きく引き離しています。
この背景には、不確実性が高まる時代環境やAIの急速な進化があると考えられます。新入社員にとって、「守られる環境」だけでは将来への不安を拭えず、「成長できる環境」をより重視する傾向が表れています。成長はこれまでも新入社員の重視項目でしたが、「成長したい」という前向きな欲求だけでなく、「成長しなければいけない」という切迫感や焦りが新たな背景に加わっている点がポイントです。
成長支援は人材育成の普遍的テーマですが、こうした意識の変化とその背景をふまえ、これまでのやり方だけでない、変化にフィットした新たな打ち手も考えていく必要があるでしょう。
(解説/株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部 トレーニングプログラム開発グループ 主任研究員・桑原 正義氏)
<調査概要>
● 新入社員意識調査2026 調査1
調査日: 2026年4月
対象者:弊社の公開型新入社員導入研修「8つの基本行動」の受講者683名
平均年齢:22.5歳
最終学歴:大卒以上77.6%
300名未満企業比率:67.1%
調査目的:今年の新入社員の意識・特徴を把握する
調査方法:質問紙調査
● 新入社員意識調査2026 調査2
調査日:2026年3~4月
対象者:弊社のインハウス型新入社員導入研修「F-BT」の受講者3,041名
300名未満企業比率 : 6.3%
5000名以上企業比率:41.5%
調査目的:今年の新入社員の意識・特徴を把握する
調査方法: 研修に付随するWEB学習支援システム内のアンケート
構成/こじへい







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