Androidスマホの中で販売台数を伸ばしているのが、性能を抑えたエントリーモデルだ。その代表格と言えるのが、FCNTの「arrows We」シリーズ。廉価モデルながら、耐久性の高さを備えており、初めてのスマホとして選ばれることも多い。その最新モデルである「arrows We3」が2年ぶりに登場した。
昨今のメモリ不足に起因する価格高騰のあおりを受け、オープンマーケット版はやや高くなってしまったものの、ストレージなどの仕様を抑え、影響を最小限にとどめている。キャリアによっては、好評だった前モデルと同レベルの価格で販売しており、手軽に購入できる1台として今回も売れ行きを伸ばしそうだ。
とは言え、一括2万円台、MNPだとほぼ無料で手に入るだけに、「安物買いの銭失い」になってしまうのでは……と不安視する向きもありそうだ。ローエンドモデルのため、パフォーマンス、特に操作感を心配する人も多いだろう。こうした声にこたえるため、本機を実際に利用し、使い勝手を確かめてみた。そのレビューをお届けする。
コンパクトボディを維持、エントリー特有の質感だが安っぽさはない
ディスプレイが大型化し、それに伴って本体サイズも拡大している昨今のエントリースマホだが、arrows We3は、これまでのコンパクトさをしっかり維持している。横幅は73mm。重さも189gと軽く、手のひらに収まりやすい。これは、ディスプレイが6.14インチと、最近のスマホの中では比較的小さいためだ。ディスプレイそのものは大型化しているが、横幅を維持した点は評価できる。
このサイズ感を実現するためにはコンパクトなディスプレイが必要だが、FCNTによると、汎用品の部材は見つからなかったという。海外メーカーのエントリーモデルが比較的大型なのは、そのためだ。そこで、FCNTはarrows We3の開発に合わせて、液晶ディスプレイを特注。独自のサイズや機能を搭載できた。
液晶のため、コントラスト比は有機ELを採用したミドルレンジモデル以上の端末と比べると低いが、動作は滑らかにみえる。これは、リフレッシュレートが最大120Hzと高いからだ。有機ELでは当たり前になりつつある120Hzのディスプレイだが、液晶では珍しい。しかもエントリーモデルに搭載しているとなると、なおのこと珍しく、価値がある。
明るさも最大で1000ニトまで輝度を上げることが可能で、屋外でもディスプレイの表示がしっかり見える。先代のarrows We2ではしずく型だった内側カメラも、カメラ部分だけがくりぬかれるパンチホール型になり、デザイン性も向上している。あくまでこの価格帯ではという但し書きはつくが、同一クラスの端末では、トップクラスのディスプレイ性能と言えそうだ。
本体は樹脂でできており、金属やガラスを使ったミドルレンジ以上のスマホのような高級感はないものの、塗装がしっかり施されているためか、チープな印象は薄い。ガラスのように割れる心配が少なく、金属のように凹むこともない。米国国防総省の調達基準であるMIL規格の24項目に準拠しており、耐久性も高い。高さ1.5mからコンクリートに落下させても壊れない試験もクリアしているという。エントリーモデルでも、長く使えそうなのはうれしいポイントだ。
エントリーとしては優秀なカメラ性能、処理能力は?
カメラはシングルカメラで、arrows We2にあったマクロカメラがなくなっているが、元々、マクロカメラはほぼ“オマケ”のような存在。マクロカメラは190万画素で、センサーサイズも小さく、画質はイマイチだった。これに対し、arrows We3はシングルカメラながら、センサーにソニー製の「LYTIA 600」を採用しており、画素数も5030万画素と高い。
この高画素なセンサーは、通常時には4つの画素を1つに束ねて取り込める光の量を上げており、画質の向上に貢献する。実際に、arrows We3で夜景を撮ってみたが、エントリーモデルとは思えないほど、ノイズが少なく、明るいところと暗いところのコントラストがしっかり効いた写真に仕上がった。HDRもしっかり効いており、写真だけでは、これがエントリーモデルで撮ったものとは分からないレベルだ。
室内で料理を撮った写真も、比較的照明が暗かったにも関わらず、色が鮮やかに出ている。5030万画素をそのまま生かし、その一部を切り出すことで2倍ズームもできるため、手元に近い写真を撮る際に、影ができてしまうのを避けることが可能。シングルカメラながら、使い勝手は悪くないうえに、画質もエントリーモデルとしては合格点と言える。
もっとも、シングルカメラゆえに、ズームはできても、センサーの範囲を超えてしまったものは写せない。0.5倍や0.6倍などの、超広角カメラを搭載していないのは、少々残念なところ。風景をダイナミックに捉えたり、遠ざかれない場面でビルなどを画角に収めたいときなどには不便だ。エントリーモデルという制約の中、超広角カメラがないのは仕方がないところだが、購入時の注意点として頭に入れておきたい。
撮影直後に写真を開くと、処理が終わっておらず、少し時間が経ってから保存される絵ができあがるが、これはチップセットの処理能力が低いことによるものだろう。エントリーモデルのため、arrows We3にはメディアテックの「Dimensity 6300」が搭載されており、性能はあまり高くない。スペック上の数値は、arrows We2の「Dimensity 7025」よりも落ちているほどだ。ベンチマークのスコアは、以下のようになる。
もっとも、FCNTによると、これはベンチマークの数値よりも快適さを重視したためで、必ずしもコストダウンだけが理由ではないという。Dimensity 7025は採用例が少なく、メーカーとして扱いづらさがあった一方で、Dimensity 6300はよりこなれたチップセットで制御がしやすかったそうだ。そうした理由もあってか、ベンチマークの数値以上に操作感はいい。
FCNTならではの独自機能も光る、ストレージ容量には要注意か
先に述べたように、ディスプレイのリフレッシュレートが最大120Hzになっている点も、このサクサク感に貢献しているようだ。エントリーモデルゆえに、アプリの立ち上がりなどが、わずかに遅いと感じることはあるが、操作感は一般的なエントリーモデルから頭ひとつ抜けている印象だ。
生体認証も、側面の電源キーと一体になった指紋センサーが搭載されており、ロック解除がスムーズにできる。また、この指紋センサーには、「FASTフィンガーランチャー」という機能もあり、指ごとに特定のアプリやランチャーを割り当てることが可能。画面ロック解除と連動して、よく使うアプリをスムーズに立ち上げられるのはFCNTならではのカスタマイズだ。
ハードウェアとしては、電源キーの反対側に「アクションキー」が配置されており、1回押し、2回押し、長押しにそれぞれの動作を割り当てられる。デジタルアシスタントを設定すればAndroid標準のGeminiが立ち上がるし、それ以外のアプリを割り当てることも可能。ショートカットとして、アプリを呼び出しやすいのもarrows We3の使いやすいところと言えるだろう。
ローエンドモデルは、ともすればカスタマイズが軽視されがちだが、FCNTならではの機能がきちんと入れ込まれている点は評価できる。もちろん、日本仕様の1つであるおサイフケータイにも対応する。一方で、ストレージの少なさは長く使ううえでの障壁になる可能性がある。レビューしたのは128GB版だが、OSやプリインストールアプリだけで20GB程度消費されており、残りは100GBにとどまる。
また、arrows We3の最小構成モデルは64GB。オープンマーケットモデルは、この容量でも4万円台半ばで販売されている。キャリア版は、より安く入手できるものの、こちらも容量は64GB。写真はまだしも、動画やゲームなどの大容量コンテンツを保存していくと、すぐに埋まってしまうストレージだ。一方で、128GB版は6万円を超えており、エントリーモデルの価格を超えてしまっている。キャリア版には、その選択肢すらない。
メモリやストレージが高騰した結果、エントリーモデルとしての値段が上がってしまったというわけだ。arrows We2のときには、オープンマーケット版は128GBのみだったので、最小構成同士の比較という点では、ストレージがダウングレードしている形になる。microSDカードに対応しているため、ストレージを補いながら使うことをお勧めしたい。価格は上がってしまったが、エントリーモデルとしての性能は良好。特にキャリア版は価格が安いため、ヒットする確率は高そうだ。
文/石野純也







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