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〝萌え萌えきゅん〟の誕生秘話も!レジェンドメイドに聞く「メイドカフェ」20年の進化

2026.06.27

2004年、秋葉原の一角から始まったあっとほぉーむカフェは、〝メイドカフェ〟という文化を象徴する存在として、徐々に世の中へと広がっていった。

〝萌え萌えきゅん〟に象徴される接客スタイルは当時のオタクカルチャーを飛び越え、テレビや雑誌でも取り上げられながら、秋葉原ブームを語るうえで欠かせない存在となっていく。

しかしこの20年は、〝ブームからカルチャーへの定着〟だけにとどまらない。秋葉原の風景が変わり、オタク文化が一般化し、〝推し〟との距離感やエンターテインメントの形も大きく変化するなかで、あっとほぉーむカフェもまた進化を続けてきた。

なぜ、あっとほぉーむカフェは20年以上にわたり愛され続けてきたのか――。

20年以上メイドとして第一線に立ち続ける〝レジェンドメイド〟のhitomiさんと、インフィニア株式会社・代表取締役社長の深沢孝樹さんに、創業当時の秋葉原の空気感から、時代とともに変化した〝萌え〟のあり方、そして現在のメイドカフェ文化の現在地まで、20年以上の歩みを振り返ってもらった。

レジェンドメイドhitomiが語る、〝メイド〟という仕事と〝萌え萌えきゅん〟誕生秘話

〝萌え萌えきゅん〟という言葉だけなら、多くの人が一度は耳にしたことがあるだろう。その一方で、〝メイドカフェ〟そのものについては、「一見さんには入りづらそう」といったイメージを持つ人も少なくない。

しかし、今回実際にあっとほぉーむカフェを訪れてまず驚いたのは、その〝入りやすさ〟だった。

かわいらしいお城のような入口を抜けると、受付や案内はテーマパークのように整えられており、初めてでも戸惑うことはない。お屋敷(店内)に入ると、hitomiさんが素敵な笑顔で迎えてくれた。楽しみ方を丁寧に説明してくれるため、初来店でも自然と緊張がほぐれていく。


そんなhitomiさんは、オープンした2004年から同店を支え続けてきた〝レジェンドメイド〟だ。長年現場に立ち続け、この空間そのものを形づくってきた存在でもある。

今や秋葉原のメイド喫茶文化を語るうえで欠かせないhitomiさんだが、そもそもどのような経緯でメイドの世界に入ったのだろうか。

あっとほぉーむカフェ〝レジェンドメイド〟のhitomiさん。長年活躍してきた立場から、メイドの魅力や接客への想いを語ってくれた。

「きっかけは、深夜番組でメイドカフェの特集を見たことでした。メイドの姿が印象的で一気に引き込まれたんです。

ただそれまで秋葉原に来たこともなかったですし、アニメやコスプレ文化にも全然触れてこなかったので、正直〝自分とは真逆の世界だな〟って感じていました。

私、もともとはギャルだったので、本当に秋葉原とは縁がないタイプでしたね(笑)」

当時、ギャルだったhitomiさんがメイドカフェで働き始めたことに、周囲はかなり驚いたという。

まだ2000年代初頭は、秋葉原やメイド喫茶に対するイメージだけが先行していた時代で、友人たちから〝どんな世界なの?〟と興味津々に聞かれることも多かったそうだ。

「今では女性のお客様、〝お嬢様〟も多いのですが、初期の頃は今とは本当にガラッと雰囲気が違いましたね。

まだ〝オタク文化〟がすごく濃い時代だったというか、純粋にアニメやゲームが好きで、当時の秋葉原によく来ていたお客様がそのままお店に来てくださるという流れでした。

働いているメイド側も、今みたいに幅広いタイプがいるというより、秋葉原カルチャーに近い子が多かったんです。だから、お店全体の空気感も今とはかなり違っていました」

また、現在ではメイドカフェ文化を象徴する存在となった、〝萌え萌えきゅん〟や、料理やドリンクに〝おいしくなるおまじない〟をかける〝愛込め(アイコメ)〟といった演出についても、ただテンションの高さだけで盛り上げることを目指していたわけではなかったと振り返る。

「当時は、〝お店をもっと良くしよう〟とか、〝新しい文化を作ろう〟みたいな大きなことを考えていたわけではなかったと思うんです。でも、来てくださったご主人様・お嬢様も含めて、その場にいるみんなが楽しい時間を過ごせたらいいな、という気持ちはずっとありました。

もちろん楽しい空気感は大切なのですが、ただ勢いで盛り上げたいという感覚ではなかったんですよね。むしろ、あっとほぉーむカフェならではの〝非日常〟の世界観をどう楽しんでもらうかを大事にしていて。

その中で、〝愛込め(アイコメ)〟みたいな演出も、少しずつ自然に生まれていったんだと思います」

驚きなのが、メイドカフェの代名詞とも言える〝萌え萌えきゅん〟が、hitomiさんの考案だったということだ。

その原点には、〝お客様にもっと楽しい時間を届けたい〟という思いがあった。

「私があっとほぉーむカフェに入った当時は、まだ今みたいに、お食事やお飲み物におまじないをかける“〝愛込め〟はなかったんです。だから、少しずつ〝あっとほぉーむカフェらしい世界観〟を作っていった感覚なんですよね。

その原点になったのが、関西旅行で入ったうどん屋さんでした。すごく忙しいお店で、持ってきてくれた時に勢いでうどんの汁が少しこぼれちゃったんです。「あ!」って思ったんですけど、〝おばちゃんの愛情入っているからね!〟ってウインクして去って行ったんです(笑)

その一言で空気がパッと明るくなって。うどんの汁がこぼれたことなんてどうでもよくなったし、今でも、うどんの味以上に、その時の接客や楽しかった時間のことを覚えているんです」

その体験は、後の〝お給仕〟にもつながっていく。

「最初は普通に料理を提供していただけだったんですけど、〝せっかくなら、もっと楽しい形で届けられないかな〟って思うようになって。その時に、ふとあのおばちゃんのことを思い出したんです。

ただ、最初から〝萌え萌えきゅん〟だったわけではなくて。最初のうちは色々試してたんです。私はウインクができないので、代わりにドリンクに「ちゅ!」って投げキッスしてみたりとか(笑)そこが今につながる愛込めのスタートでした」

2004年は、2ちゃんねる発の言葉だった「萌え~」が流行語として一般層にも浸透し始め、秋葉原カルチャーが一気に社会へ広がっていった転換期でもあった。

翌年には映画『電車男』、さらに『アキハバラ@DEEP』が続けて公開され、秋葉原は一躍〝注目される街〟となっていく。

しかし、急速に注目を集めたからこそ、当時は偏見の目を向けられることも少なくなかった。

「やっぱり認知されるまでは偏見もたくさんありましたし、心を痛めるようなこともありました。それでも、自分自身はとにかくこの仕事が好きで続けてきましたし、実際にお給仕をしている中で、目の前で笑顔になってくれるご主人様・お嬢様がいたり、また会いに来てくださる方がいたりしたのがとても励みになりました。

そうした一つひとつの積み重ねの中で、メイドという存在が誰かの役に立てていると実感できたんです。その手応えがあったからこそ、ここまで続けてこられたのだと思います」

萌え〟の奥にある、「また帰ってきたくなる場所」

メイドカフェ文化が広く浸透した現在では、秋葉原に限らず、都内各地にさまざまな形態のコンセプトカフェが存在している。

その中で、あっとほぉーむカフェが20年以上にわたって〝メイドカフェ〟というスタイルを守り続けてきた理由について、代表取締役社長の深沢孝樹さんはこう語る。

インフィニア株式会社 代表取締役社長・深沢孝樹さん

「2004年にあっとほぉーむカフェができる以前は、メイドといえば、どちらかというとロングスカートで黒と白を基調にした、”おしとやか”な雰囲気のイメージのほうが強かったと思います。当時存在していた多くのメイドカフェも、実際にそうしたスタイルでした。

そんな中で、うちは歌やダンスといったエンタメ要素を積極的に取り入れていきました。とにかく、たくさんの方に来ていただきたかったので、いわゆるオタクの人向けだけではなく、秋葉原に縁がなかった方にも楽しんでもらえる空間を目指していたんです。

そのスタイルがテレビなどでも数多く取り上げられるようになり、メイドカフェは〝静かに過ごす場所〟ではなく、会話や歌・ダンスを楽しめるエンターテインメント空間として広く認識されるようになっていきました。

ある意味、そのイメージを作ってきたのが自分たちだという感覚はありますし、だからこそ、〝メイドカフェ〟としてその期待には応え続けなければいけないという自負もありましたね」

また、秋葉原のメイドカフェといえば、メイドが街頭でチラシ配りをしているイメージを持つ人も多い。しかし、あっとほぉーむカフェでは、チラシ配りは行っていない。

それは、「メイドがお屋敷でご主人様・お嬢様のご帰宅を待っている」という世界観を大切にしているからだ。そうしたメイドカフェ本来のコンセプトを、創業当初から一貫して守り続けている。

「かなり初期の段階から、〝安心して楽しめる場所であること〟は強く意識していました。

今でこそ〝安心・安全・健全〟という言葉を使っていますけど、当時からずっと、『安心って何だろう』『安全って何だろう』『健全って何なんだろう』ということには向き合い続けていたんです。

例えば秋葉原の街に、コスプレした女の子が何十人も立って呼び込みをしていたら、引いちゃうと思うんですよ。僕なんかも福島出身なので慣れていないわけです(笑)

東京に住んでいる人からしたら、〝まあ、いつもの光景だよね〟と感じるのかもしれません。でも、地方から遊びに来た方は驚くこともあると思うんです。

それに、世界観としても、メイドは〝お屋敷でご主人様を待つ存在〟なんですよね。外に出て『お帰りなさいませ』と呼び込みをするのは、やっぱり違和感がある。

そういう意味でも、創業当初から客引きやチラシ配りはしないことを徹底してきました」

入り口付近から広がる可愛らしい世界観も魅力のひとつ。初めてご帰宅するご主人様・お嬢様でも安心して楽しめる雰囲気だ。 

また、あっとほぉーむカフェでは、来場者が安心して楽しめる環境づくりにも力を入れている。〝お屋敷〟(店内)は初めてでも入りやすい雰囲気づくりが徹底されており、料金体系も入口や公式サイトなどで分かりやすく案内されている。

一般料金は入場料と1ドリンクで1,570円から。学生やシニア、子ども向けの料金設定も用意されており、さらに、飲食メニューやチェキ撮影なども筆者の想像以上に利用しやすい価格帯となっていた。

あっとほぉーむカフェは、あくまで〝お屋敷〟という世界観を楽しむエンターテインメント空間だ。そうした考え方を軸に、初めて訪れる人でも安心して非日常を楽しめる環境が整えられていることが伝わってくる。

秋葉原カルチャーの象徴から、その先へ

一昨年に20周年を迎え、ますます勢いを増しているあっとほぉーむカフェ。

クールジャパンの時代を経て、現在はインバウンド需要の高まりも追い風となり、いまや〝メイドカフェ〟そのものが日本を代表するポップカルチャーのひとつとなった。そして、あっとほぉーむカフェは、その中心的存在として存在感を放っている。

「僕らとしては、この20年間でかなり変化してきた感覚ではあるんです。でも、外からは〝ずっと同じことをやっている〟ように見えているかもしれません。

それに、まだメイドカフェに対して昔のイメージを持っている人も多い。もちろん、僕らがこれまでやってきたことや、今やっていることを丁寧に伝えて、少しずつイメージを変えていくことも大事だと思っています。

でも一方で、〝今までやってこなかったようなエンタメ〟をバーンと打ち出すことで、『メイドカフェって、こんなふうに進化しているんだ』と思ってもらえるきっかけにもなると思うんです。

だから今後は、これまで積み重ねてきたエンタメをさらにブラッシュアップしながら、新しい表現も取り入れていきたいですね」

〝萌え萌えきゅん〟というキャッチーな言葉だけを見ると、メイドカフェはライトなカルチャーに思われるかもしれない。

しかし、あっとほぉーむカフェが20年以上にわたって支持され続けてきた理由は、その場限りの盛り上がりではなく、「また帰ってきたくなる場所」を丁寧に作り続けてきたことにあるだろう。

秋葉原のカルチャーが大きく変化し、コンテンツ消費の形も移り変わっていくなかで、あっとほぉーむカフェは〝2000年代カルチャーの象徴〟に留まることなく、いまなお時代に合わせて進化を続けている。

そしてその根底には、20年以上前から変わらない、〝ご主人様・お嬢様を楽しませたい〟という思いが流れ続けているのだ。

取材・文/Tajimax

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東京都出身。2018年からSNSを中心に90年代〜00年代の平成ガールズカルチャーをメインに紹介している。以降、『オリコンニュース』『現代ビジネス』『WWD.JAPAN』『クイック・ジャパン』『Fashion Tech News』『東洋経済オンライン』などで平成カルチャー関連のインタビューや執筆・寄稿に携わる。古雑誌をメインに平成ガールズカルチャー関連のアイテムを膨大に所有。

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