住宅ローンの借入金額を検討する際、「返済比率は、2~3割が目安」とする考え方が、1つの指標となっている。しかし、この基準は実際に家計にとってどのような意味を持つのだろうか。
三井住友信託銀行はこのほど、全国の18~69歳の6062名を対象に「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」を実施し、調査結果をもとに住宅ローンに対する後悔の有無、返済の負担感、返済と資産形成の両立について、返済比率2割と3割で違いがみられるか検証した結果を発表した。
住宅ローンに対する後悔の有無に見る返済比率の影響
まず、「住宅ローンに対する後悔の有無」について聞いたところ、住宅ローン返済中世帯のうち、35.2%が住宅ローンに対して「後悔あり」と回答した(図表1)。
後悔の内容として最も多かったのは、「借入金額を少なくすればよかった(28.3%)」、次いで「頭金の割合を多くすればよかった(27.2%)」となった(図表2)。いずれも、「借入金額が多すぎたこと」に起因するものであり、金利や返済期間に対する後悔と比べても強く表れていることがわかる。
【図表1】住宅ローンに対する後悔の有無
【図表2】住宅ローンに対する後悔の理由(複数回答可)
この「借入金額が多すぎたことへの後悔」は、返済比率の上昇とともに段階的に強まる(図表3・茶色棒グラフ)。さらに、住宅ローンに対する後悔全体の水準を見ると、返済比率2割では38.5%にとどまるのに対し、3割では46.4%へと大きく上昇している(図表3・オレンジ色棒グラフ)。返済比率の上昇は、「借りすぎた」後悔を高めるだけではなく、その他の後悔も含めて全体の後悔を押し上げている可能性がある。
【図表3】返済比率別 住宅ローンに対する後悔の有無
負担感や行動に表れる“見えない境界線”
ローン返済の負担感についても、返済比率2割と3割の間で変化がみられる。返済に対して、「かなり負担を感じる」と回答した割合は、返済比率2割では6.8%であるのに対し、3割では13.9%と倍増している(図表4)。また「負担に感じる」も22.4%から28.9%へと増加しており、返済比率2割と3割の間に、負担感が増す“境界線”が存在していると考えられる。
【図表4】返済比率別 住宅ローン返済に対する負担感
さらに、資産形成に対する家計行動にも同様の境界線がみられる。住宅ローン返済と資産形成の両立に対する考え方をみると、返済比率2割では「住宅ローンの返済と資産形成に同時に取り組む両立派」が40.8%であるのに対し、3割になると28.1%と減少している(図表5)。一方で、「返済を優先しているため、資産形成は難しい返済優先派」は、32.8%から42.6%とおよそ10ポイント増加している。
つまり、返済比率2割では両立派が優勢だが、3割では返済優先が上回り、両者の関係が逆転している。
【図表5】返済比率別 住宅ローンの返済と資産形成の両立に対する考え方
以上より、これまで「返済比率は、2~3割以内」とひとくくりにされてきたが、実際には2割と3割の間には大きな差があり、「後悔の増加」「負担感の増幅」「資産形成との両立の困難さ」といった観点では、3割に達すると家計の分岐点を超えた水準である可能性が示唆される。
住宅ローンは長期にわたる負債である以上、収入の減少や金利上昇といった環境変化により、将来的に返済負担が高まるリスクも想定しておく必要がある。したがって、現在の家計状況だけでなく将来も見据え、借入時にはある程度余裕を持った水準に設定しておくことが重要だ。
もっとも、「返済比率を下げるために借入期間を延ばす」という選択も一部では見られるが、注意が必要だ。確かに毎月の負担は軽くなるものの、支払う利息額は増えてしまう。
借入期間の調整によって返済比率を低下させても、必ずしも家計の改善につながるとは限らず、根本的な解決にはなっていない可能性もある。こういった観点も踏まえて、金融機関や専門家は、単なる返済可能額の提示にとどまらず、その水準が将来の選択肢や家計行動にどのような影響を及ぼすのかまで含めて説明することが重要だ。
また、借り手自身も、目先の返済負担だけでなく長期的な家計への影響を踏まえ、慎重に判断することが求められる。それらが、後悔の少ない住宅取得と、その後の安定的な家計運営につながると考えられる。
<調査概要>
調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2026年)
調査対象:全国の18~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
調査方法:WEBアンケート調査
調査時期:2026年1月
サンプルサイズ:6,062
出典元:三井住友信託銀行株式会社
構成/こじへい







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