NTTドコモ(以下、ドコモ)は2026年6月19日、AIを活用してモバイルネットワークの通信品質を自動で最適化するノキア製「MantaRay AutoPilot」システム(以下、本システム)を国内で初めて(※1)導入した。
併せて本システムをパブリッククラウド上に構築して、パブリッククラウド上のシステムからドコモネットワークの最適化を行なうことにも世界で初めて(※1)成功した。
※1 2026年6月22日時点、ドコモ調べ
従来システム「MantaRay SON」の成果と課題
ドコモは、2025年11月のノキア製SONシステム(以下、MantaRay SON ※2)の導入(※3)により、ネットワーク運用者(以下、オペレーター)が従来手動で行なっていた作業に要する時間を短縮。よりタイムリーできめ細やかな品質改善を実現した。
MantaRay SONでは、ネットワークの変化に応じて適切な設定変更を実施するクローズドループ(※4)制御による品質改善を実現したが、SONによる自動化を通じて改善すべきパラメータやその設定変更ポリシーは、引き続きオペレーターにより事前に設計・設定が必要となる。
MantaRay SONによる品質改善の取り組みを進める中で、改善対象となるパラメータの設計や設定変更ポリシーを通信が混雑する場所や時間帯に合わせてリアルタイムに設計・設定することの難しさが課題となっていた。
※2 SONはSelf-Organizing Networkの略。基地局同士が互いに連携して、電波状況などを自動で最適化する仕組み。「MantaRay SON」はノキアが提供するSON製品の1つだ。
※3「国内初、ノキア製SONシステムによりマルチベンダーLTEと5G間の運用自動化を実現」(2025年11月25日 報道発表)https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2025/11/25_00.html
※4 システムがネットワークを常に監視し、変化に応じた適切なアクションを自動で実行する動作をクローズドループと呼ぶ。
「MantaRay AutoPilot」の主な特徴
本システムは、前述したパラメータ定義・設定変更ポリシーのリアルタイムな設計・設定自動化を実現するものだ。
本システムの導入により、オペレーターは目標とする品質の指標(インテント ※5)をシステムに投入するだけで、AIが自動で利用者の利用状況などの基地局の通信品質データを収集・分析。改善すべきパラメータや設定変更ポリシー(設定値や実行タイミング)をリアルタイムに導き出す。さらにMantaRay SONと連動することで、最短15分という短い時間でクローズドループ制御自体の制御の最適化を実行する。
これらの一連のサイクルを繰り返すことで、これまでMantaRay SON単独では難しかった、通信が混雑する場所や時間帯に応じた改善対象となるパラメータの設計や設定変更ポリシーを、AIが昼夜問わずリアルタイムに実行することが可能となる。
ドコモは本システムの活用を通じて、通信事業者の国際的な業界団体であるTM Forum(※6)が定める「自律型ネットワーク レベル4(※7)」の達成をめざす。
今回の発表に際して同社では、次のようにコメントしている。
「本システムの導入にあたり、ドコモでは本システムをパブリッククラウド上に構築し、クラウド環境からドコモネットワークの最適化を行うことを実現しました。これにより、ハードウェアの調達状況に左右されることなく、迅速なシステム導入の実現に寄与します。また、クラウド上で提供されるさまざまなAI基盤との連携もめざしてまいります」
※5 オペレーターが本システムに対して「何をしたいか」という意図や目的のこと。本システムでは、ネットワーク運用者が「特定エリアの通信品質を一定以上(●Mbps以上)に保つ」といった目的を設定することをいう。
※6 通信業界やIT業界の主要企業が加盟する国際的な非営利業界団体。業界標準の策定やベストプラクティスの共有などを行なっている。
※7 TM Forumが定めるネットワーク運用の自動化レベルの指標(レベル0~5)の1つ。「高度な自律性」と定義され、AIが状況を予測し、人間の指示なしに自律的にネットワークの制御や管理を行なう段階。
「MantaRay AutoPilot」の技術詳細
■概要
「MantaRay AutoPilot」は、ノキアが開発したAI駆動型のネットワーク品質最適化システムだ。ドコモのモバイルネットワークに導入されている既存の最適化基盤MantaRay SONと協調して動作することで、インテント(運用の意図や目的)に基づいた自律的なネットワーク運用を実現。これにより、従来のルールベースの自動化から、AIによる継続的かつ高度な自律最適化へと進化させる。
■システム構成と動作プロセス
本システムは、基地局とMantaRay SONと「MantaRay AutoPilot」の3つで構成され、以下のプロセスを繰り返すことでネットワークを自律的に最適化する。

<データ収集>
MantaRay SON配下の各基地局から、通信品質やトラヒック量などの性能データをリアルタイムに収集する。
<AIによる分析と判断>
「MantaRay AutoPilot」が、収集した性能データと、オペレーターによってあらかじめ設定された「インテント」(例:「特定エリアの通信速度を●Mbps以上に維持する」)を基に、AIを用いて分析、学習、評価を行なう。これにより、改善すべきパラメータや最適な実行タイミングを自律的に判断していく。
<最適化指示>
AIの判断に基づき、最短15分間隔で品質最適化の指示をMantaRay SONに送る。
<最適化実行>
指示を受けたMantaRay SONが、対象となる基地局の設定を遠隔で変更して、ネットワーク品質の最適化を実行する。
■従来の運用との比較
従来のMantaRay SONによる運用では、最適化の周期が1日単位であり、どのような設定変更を行なうかの検討や、変更後の効果測定は人手で行う必要があった。
しかし今回の「MantaRay AutoPilot」の導入により、これらのパラメータ検討から効果測定までの一連のプロセスがAIによって完全に自動化された。これにより、最適化のサイクルが最短15分へと大幅に短縮され、人手を介さずに、より迅速かつきめ細やかな品質改善が可能になる。
関連情報
https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2026/06/22_01.html
構成/清水眞希







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