VTuberマネジメント事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORは、2027年4月期の売上高が上限でも7.8%増との見通しを発表しました。前期は30%近く伸びており、旺盛に成長してきたANYCOLORに急ブレーキがかかっています。
2桁増収から今期微増へと転じたのは、競合で「ホロライブプロダクション」を展開するカバーも同じ。VTuber市場は成熟期に入っているように見え、新たな顧客開拓が急務になってきました。
「にじさんじ」のANYCOLOR、売上の7割以上を物販が占め配信収入は1割未満に、今後の経営戦略は?
VTuberマネジメント事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORが、3月11日に通期純利益の下方修正を発表しました。従来予想比で、4~5%程度下がる見込み…
看板タレントやユニットを次々と失う事態に…
ANYCOLORは2027年4月期の売上予想にレンジを持たせて開示しています。下限では0.6%の増加。今期の成長性については、極めて限定的な計画を立てています。ANYCOLORは上場以来、2桁連続増収という驚異的なスピードで成長してきました。
カバーも状況はよく似ています。ANYCOLORと同じく2桁増収の快進撃を続けてきましたが、2027年3月期の売上成長率は4%を予想しているのです。
今期の成長が横ばいである理由として、ANYCOLORは人気の高いタレント起用頻度を見直し、持続的なファン活動にも力を入れられるよう方針を改めることを挙げました。カバーは過去の量的拡大フェーズから質的拡大フェーズへの転換を挙げています。詳細は異なるものの、売上を追いかけていた従来の姿から、ファンの創出やタレントの育成に力を入れるという共通項を見出すことができます。
2社の足元の課題はやや似たところがあります。スター級のタレントの活動が区切りを迎えたことです。
「にじさんじ」は、大人気グループ「ROF-MAO」のメンバーの一人である剣持刀也がユニット活動を「修了」すると発表しました。これにより、「ROF-MAO」は活動を休止することになります。同じく人気ユニット「Nornis」も活動を終了することになりました。それぞれ個人の活動に専念することになりますが、ANYCOLORはファン層を開拓しやすいユニット活動を重視していたため、看板グループの活動休止は痛手でしょう。
「ホロライブ」も数々のスターVTuberが卒業し、2026年3月には星街すいせいが個人事務所を設立。ソロアーティストとしての活動を新事務所へと移行しました。
VTuber市場は飽和期に入ったか?
スターユニットやタレントを失ったことが、2社の成長鈍化に影響しているのは間違いないでしょう。しかし、VTuberという市場が成長して消費者が新たな推し活要素を求めているのであれば、「にじさんじ」や「ホロライブ」から次なるスターがすぐに誕生するはずです。しかし、2社の成長が鈍化していることからも、そのようなサイクルができているとは言い難いでしょう。
VTuber市場は成熟化しているように見えます。
成熟期とは、「アーリーマジョリティ」と呼ばれる平均よりも新しいものを取り入れようとする層の取り込みを終え、市場が安定することを指します。成熟期に入ると、企業の売上は安定することが一般的。言い換えると、高い成長率が見込めなくなります。
成熟期が過ぎると、飽和期に入ります。市場には今まで見なかったような商品やサービスが生まれるようになるのです。
そして今、VTuber市場はこの飽和期に差し掛かっているのではないでしょうか。
近年、VTuberタレントは様々な方向性や属性を持つようになりました。2026年1月に「にじさんじ」からデビューした「うみゃみー」は女子高生の親友コンビ。2025年8月には「今宵、××と夢を見る。」というガールバンドがデビューしていました。精神科医という異色の経歴を持つ一橋綾人も活動しています。
「ホロライブ」に所属し、落語や美術、芸能分野に造詣が深い儒烏風亭らでんは、すでに高い人気を獲得しています。
VTuberは雑談やゲーム配信、コラボ、歌、ダンスを中心に活動してきました。そして、配信者やアイドル、アニメ、ゲームなどのファン層を開拓してきましたが、成熟期に入ってそうした人々の需要が一服。飽和期に入って従来とは異なる方向性のタレントが誕生し、新たなファン層の開拓や、既存ファンの選択肢を増やすことに寄与しているように見えるのです。
国内市場を開拓するための一手とは?
これと似たことはYouTuber市場でも起こりました。ヒカキンなどの人気YouTuberの背中を追うようなタレントは少しずつ姿を消し、料理、アウトドア、生き物、乗り物、音楽、子育てなど、ジャンルごとにセグメント化されていきました。マルチに活躍する人はごく限られた一握りだけが残され、人々の趣味嗜好に最適化したタレントが活動の場を見出したのです。
一方、ANYCOLORもカバーも一時は海外進出に力を入れていました。日本の成功モデルを海外などの別の市場に横展開して成長するというのは、ビジネスを成長させるための常套手段です。しかし、2社ともに海外事業が成長する兆しは見えてきません。
海外タレントはマネジメントが難しく、日本型のタレント事務所という文化が馴染まないとも言われています。海外での展開が難しいのであれば、国内市場の拡大に目が向くでしょう。
ANYCOLORは「バーチャル·タレント·アカデミー」というVTuberの養成プロジェクトを設けています。このような取り組みを通して、料理やアウトドア、乗り物など一定の需要がある層に特化したVTuberを採用して育成。市場開拓をするというのが、次なる一手として考えられそう。しかし、この手法は時間がかかるうえに得られるリターンが限られるため、積極的には選択したくないでしょう。
VTuberマネジメント事務所にとっては、舵取りの難しい局面に立たされていると見ることができます。
文/不破聡







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