子どもの頃、誕生日ケーキやドーナツの上に散りばめられていたカラースプレー。特別な日のお菓子と結びついた記憶を持つ人も多いのではないだろうか。
そんなカラースプレーが今、再び注目を集めている。近年、SNSではカラースプレーをたっぷり使ったドーナツやアイス、ケーキの投稿がたびたび話題となり、どこか懐かしい見た目のスイーツが人気を集めている。
子ども向けのトッピングというイメージが強いカラースプレーだが、なぜ今、大人たちの心をつかんでいるのだろうか。
子どもの頃の記憶を呼び起こすカラースプレー
カラースプレーは、アイスクリームやドーナツなどのトッピングとして広く親しまれてきたスイーツ素材のひとつだ。欧米を中心に親しまれてきたカラースプレーは、日本でも昭和以降、家庭での製菓や子ども向けスイーツのデコレーション素材として広く使われるようになった。
そして、この〝子どもの頃の記憶〟との結びつきこそが、いま大人たちがカラースプレーに惹かれる理由のひとつになっている。
それらは味そのものというよりも、「楽しかった時間」や「特別な日の空気感」と結びついた記憶として残っている。

つまりカラースプレーは、ただのトッピングではなく、子どもの頃の楽しかった記憶を思い出させる存在になっているのかもしれない。
カラースプレーは、その見た目の楽しさから以前より一定の人気を集めていた。しかし、その存在が改めて注目されるきっかけの一つとなったのが、2010年代から盛り上がりを見せた純喫茶ブームだろう。

純喫茶ブームは、2020年代に入ると「エモい」というキーワードとともにSNS上で急速に拡散し、Z世代を中心に支持を拡大した。それまで一部の愛好家の間で親しまれていた純喫茶文化が、SNSを通じて広く一般層にも浸透していった。
その過程で、クリームソーダやプリンといった純喫茶の定番メニューが再評価されるとともに、カラースプレーを用いたレトロでポップなスイーツにも注目が集まった。SNS映えする鮮やかな見た目と、どこか懐かしさを感じさせる雰囲気が、現代のトレンドと見事に合致したのである。
また、純喫茶に足を運ばなくても、自宅で手軽に楽しめる〝カラースプレースイーツ〟もSNSのタイムラインをにぎわせている。コンビニやスーパーで購入したバニラアイスやホイップクリームに、カラフルなカラースプレーをひと振りするだけで、どこか懐かしくて写真映えするスイーツが完成する。その手軽さゆえに「自分でもやってみたい」と感じる人が多く、SNSでの拡散とも相性がいい。
さらに、トーストやプリン、パンケーキなどに振りかけるだけで、どこか懐かしく写真映えするスイーツが完成する。手軽に楽しめてアレンジの幅も広いため、「自分でもやってみたい」と感じる人が多いことも、人気を後押ししているのだろう。

SNSで映える〝カラフルな懐かしさ〟
カラースプレーがSNSで注目される背景には、その見た目のにぎやかさがある。
カラフルな粒が一面に散りばめられたドーナツや、アイスクリームの上に山のようにトッピングされたスイーツは、一目見ただけで「楽しい」「甘い」「かわいい」といった印象を与える。言い換えれば、食べる前からワクワク感が伝わるスイーツだといえる。
こうした特徴は、写真や動画が中心となったSNSとの相性が非常に良い。複雑な説明がなくても、その魅力がひと目で伝わるビジュアルとして受け入れられているのだ。
また最近では、カラースプレーを自分で選んでトッピングできる専門店もあり、見た目を自由にカスタマイズできるスイーツも人気を集めている。味を楽しむだけでなく、自分らしい見た目に仕上げ、思わず写真を撮りたくなる一品を作れることも支持される理由のひとつだ。

そして、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでもカラースプレーを使った商品が期間限定で登場するたびに、SNSで話題になりやすい。誰でも気軽に購入できる身近な商品だからこそ、カラフルな見た目が生み出す特別感や楽しさがより際立つ。
こうして見ていくと、カラースプレーはスイーツに彩りと楽しさを添える存在として、改めて存在感を高めていることがわかる。
カラースプレー人気はノスタルジー消費の象徴か

クリームソーダやレトロプリン、喫茶店のパンケーキやパフェなど、近年のスイーツトレンドには、味の新しさや高級感だけでは説明できない人気がある。そこに共通しているのは、「どこか懐かしい」という感覚そのものが価値になっている点だ。
カラースプレーもまた、こうした流れの中にある存在といえるだろう。
こうした現象はしばしば「エモい」の一言で語られる。しかし、カラースプレー人気の背景には、子どもの頃の思い出や懐かしさに価値を見出す〝ノスタルジー消費〟の側面もある。
カラースプレーの鮮やかな色合いや、どこかレトロな見た目は、誕生日ケーキやドーナツといった子どもの頃の記憶を呼び起こす。こうした懐かしさに価値を見出す消費行動は「ノスタルジー消費」とも呼ばれている。
一方で、現在のカラースプレー人気は懐かしさだけでは語りきれない。「かわいい」「写真に撮りたい」「誰かと共有したい」といった、見た目のかわいさや共有したい気持ちも大きな魅力になっている。
昔からあるトッピングでありながら、SNS時代の感覚にもフィットしたカラースプレー。昭和や平成の記憶を呼び起こしながら、令和のSNSでも存在感を放つその人気は、懐かしさと新しさが共存する現代の消費トレンドを映し出しているのかもしれない。
取材・文/Tajimax
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