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ED薬が処方箋なしで購入可能に!EDを「恥」から「普通の悩み」へ、エスエス製薬が狙う巨大市場

2026.06.23

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

医療用医薬品のシアリス錠は、これまで100カ国以上で医師の診療・処方のもと、20年以上にわたりED(勃起不全)治療薬として使用されている。

日本国内における使用実績は今年で20年目を迎えているが、今年5月にエスエス製薬が厚生労働省の承認を受け、薬剤師による適切な情報提供のもとで購入できるスイッチOTC医薬品として、日本初となるED用市販薬「シアリス」(要指導医薬品)を7月31日より先行発売、8月31日より全国発売を開始する。

OTC医薬品の販売だけでなくEDに対する社会の意識を変えていく

エスエス製薬はED治療薬を処方箋なしで購入できる環境を整えることで、EDを身近な健康課題として正しく理解し向き合い、EDに悩む人にとって今まで以上に相談、対処できる社会環境の構築を目指し、「EnD the joke」プロジェクトを立ち上げた。

同プロジェクトでは、情報提供による偏見解消、調査・白書作成、様々なプラットフォームで活動を広げることで、EDの話題を日常的に語れる空気を醸成する。

「私たちの調査では、日本人男性の2人に1人がEDに悩んでいるとされ、年齢に限定されず、20代から悩みがスタートしています。しかも治療している方は12%にとどまり、約9割が治療を行っていないという実態があります。

EDは身体面だけでなく、自己肯定感の低下、幸福感の減退、未来への期待喪失など心理面に重大な影響をもたらします。心理的影響は孤立を招き、社会から距離を置き不安を抱えて生きる状態につながり、結果として男性個人にとどまらず、女性を含む社会全体へ広く影響していきます。

適切な治療へのアクセスを阻む壁として、恥ずかしさ、社会的視線、過去の嘲笑や傷つきの経験、『自分は違う、認めたくない』という抵抗感など複合的理由があります。セルフケアのソリューションがあったとしてもこの壁が存在します。

私たちは単純にシアリスをOTC化するだけではありません。エスエス製薬は 3つの領域で挑戦していきます。正規品の製品を用意する、正しい方法でそれを届けていく、そしてEDに悩む男性だけではなく、社会全体の意識に対しての挑戦です。

正規品OTC化により、海外サイトからの自己輸入、既存品による健康被害などが横行していた現状を是正し、一般の薬局での入手を可能にして根本的にアクセスを改善します。これにより、これまで治療に至らなかった人のハードルを下げることが可能になります。

また、薬剤師へのトレーニング、販売方法の指導、購入制限の設定、製品トレーサビリティの整備を実施することで、消費者が正しいものを安心して購入、使用できます。

さらにEDへの偏見や社会の意識を変え、ジョークではなく普通の悩みとして受け入れられるような社会を作るための『EnD the joke』プロジェクトを立ち上げました。本人も周囲の人も安心できる体制を整えることが企業の責任であると考えています」(エスエス製薬 代表取締役社長 元島陽子氏)

EDとの正しい向きあい方とは

昭和医科大学 客員教授 横浜新緑総合病院 泌尿器科 佐々木春明氏によると、EDとは 「満足な性行為ができる状態にならないこと」「勃起しない、または勃起が持続しない状態」で、毎回ではなく、時々そのような状態になる場合も定義上はEDに含まれるとのこと。EDは体の中の変化を知らせる重要なサインでもあると佐々木氏は言う。

「2025年に日本泌尿器科学会が行った全国インターネット調査によると、国内のED罹患者は推定1400万人で、これは男女を含む糖尿病の確定患者数(約900万人)を上回る数字であり、男性限定の疾患であることを考えると、非常に多くの人が罹患していることがわかります。

年齢別では、40代を境に急増し、50代、60代と年齢とともに罹患率は上昇していますが、若い世代も例外ではなく、20代でも50代とほぼ同程度の罹患率が見られます。

EDの背後には生活習慣病が隠れている可能性もあり、早期に医師や薬剤師に相談することで、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気の予防に繋がる可能性があります」(佐々木氏)

医療機関の受診をためらうのは、「恥ずかしい」「人に知られたくない」といった羞恥心が大きな理由となっている。また、仕事の都合で診療時間内に受診できないことや、大きな病院では院外薬局を利用する必要があり、処方箋を医師や、女性が多い看護師、薬剤師に見られることへの抵抗感も挙げられる。

「受診をためらう結果、多くの人がインターネットで治療薬を入手していますが、7割以上が偽造品です。偽造品には血糖を下げる薬が混入しているケースがあり、これはED患者に糖尿病が多いという想定から、偽造業者が意図的に混入したと推察されます。シンガポールでは4人の死亡例も報告されており、血糖値が正常な人がこれを服用すると、低血糖発作を起こし、命に関わる危険があるのです。

ネット利用者のほぼ全員が『ネット上には偽造品が出回っている』と認識していながら、ネットでしか購入したことのない人の87%が『自分が購入した薬は大丈夫だ』と思い込んでおり、健康被害を発生させる大きな要因となっています。

EDの症状を自覚している場合、泌尿器科など医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。インターネット経由でのED治療薬の個人購入を避け、必ず正規の医療ルートで入手するようにしてください。

誤解の無いようにお伝えしたいのが、ED治療薬は『精力増強剤』や『性欲を増やす薬』ではないということ。臨床試験において性欲自体を改善するデータはありません。ED治療薬は、性的な刺激があった時にのみ、血流を改善して自身の勃起をサポートするものであり、性的刺激がなくなれば勃起は治まります」(佐々木氏)

OTC医薬品の「シアリス」は、世界100カ国以上で承認、日本でも20年の使用実績がある成分「タダラフィル」10mgを有効成分とし、医療用医薬品と同成分・同量の日本初の処方箋が要らないED治療薬。今年5月に薬事審査会の審議を経て、要指導医薬品として製造販売承認を取得した。

1箱4錠入り(4回分・希望小売価格 5,808円)。1錠の服用で最大36時間持続。性的刺激があった場合のみ勃起をサポートするもので、精力増強剤とは異なる。服用後30分から効果が発現、性行為の1時間前の服用が推奨している。連続服用時は24時間以上の間隔を空ける。食事や飲酒の影響を受けにくく、食事の内容を気にせず自然に服用が可能。

販売は薬剤師在籍のドラッグストアや薬店に限定。7月31日の先行発売は、イオングループ(※一部対象企業)、ツルハホールディングス、ウエルシアホールディングスにて順次発売する。全国発売は8月31日予定。エスエス製薬のブランドサイトにて取扱店舗検索機能を開設する予定で、薬品の販売要件を満たしたオンライン販売も計画している。

「適正販売へのコミットメントとして、エスエス製薬提供のオンラインプラットフォームで薬剤師向けのトレーニングを実施、テスト合格が必須となっており、指定トレーニング受講・テスト合格の薬剤師がいる店舗のみ取り扱い可で、それ以外の店舗には出荷しません。

購入は本人のみで代理購入不可、1回の購入は1箱までとなります。要指導医薬品のため、購入時は必ず薬剤師が対面で確認します。購入の際は、LINE登録やブランドサイトで入手できるチェックシートに記入し、薬剤師と相談してください。そこで基礎疾患の有無、服用薬との相互作用を確認した上でお渡しいたします。心血管系のリスクや使用、併用禁忌薬のある場合には販売いたしません」(エスエス製薬株式会社 キーアカウント営業部 統括部長 金井直樹氏)

【AJの読み】EDを「恥」から「普通の悩み」にしていくエスエス製薬の取り組み

恋バナ収集ユニット「桃山商事」の代表として、1,200人以上の恋愛相談に向き合ってきた文筆家の清田隆之氏がトークセッションに参加。日本人男性の心の奥底にある悩みや本音を多角的に集めてきた経験をもとに、EDの課題と社会的認識を語った。

「恋愛相談では『また立たなかったらどうしよう』という不安による負のループが多いですが、それをEDと明確に認識している人は少ないのが現状です。『お酒のせい』『疲れのせい』と外部に原因に求めて、問題を曖昧に捉えるケースがほとんどです。

“笑い事にする空気”が若年層で生産され、当事者になった時“笑われる側になる”恐怖心を生んでいると感じます。また、女性はEDの悩みについて対話を望んでいるものの、男性が話題を避けたり、ごまかすため、対話が進まず女性側の不安が増大するコミュニケーションギャップが存在します。

わからない、向き合うのが怖い、パートナーとの対話も進まない、医療機関にどうアクセスするかもわからずますます抱え込む。ジョークにする風潮だけが残って、それが再生産されていきタブー化していく。この悪循環がずっと続いてきた結果が現在なのだと感じます。

明確な知識をきっかけにコミュニケーションが生まれていき、医療機関への相談が自然な選択肢となるよう、社会の空気を変える必要があります。個人から対人関係、そして社会へと良い変化が広がることを期待しています」(清田氏)

日本人男性の2人に1人がEDの可能性に直面しているが、認識不足と医療相談を妨げる「茶化し文化」も大きな課題になっている。

エスエス製薬は「シアリス」の発売を契機に、EDを個人の問題ではなく医学的な健康課題として社会全体で理解し、OTC化で治療アクセスを改善していくことを目指す。EDを「恥」から「普通の悩み」にしていくエスエス製薬の取り組みに期待したい。

取材・文/阿部純子

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