32年前のダラス訪問時はブラジル対オランダ戦を観戦。ベベットのゆりかごダンスを目撃
2026年北中米ワールドカップ(W杯)が開幕し、日本代表か初戦・オランダ戦を2-2のドローに持ち込んだことで、日本国内も盛り上がっている。
2022年カタールW杯でも日本はドイツ、スペインに先行されながら逆転勝ちしているが、今回は2度のリードを許し、心が折れてもおかしくない状況で、中村敬斗(スタッド・ランス)と鎌田大地(クリスタルパレス)がそれぞれ得点。勝ち点2を逃したオランダとは対照的に、日本は勝ち点1をゲット。今後に向けて希望が見えてきたところだ。
そのダラスに筆者も32年ぶりに赴いた。前回は94年アメリカW杯。当時は1サポーターとして大会屈指の好カードと言われたブラジル対オランダ戦を観戦。メインスタンドの前の方というラッキーな席に座っていたため、ロマーリオとベベットというブラジルの両スターの一挙手一投足を間近で見た記憶がある。ベベットのゆりかごダンスを目の当たりにした感動は今も忘れない。そういう記憶があったため、懐かしさを覚えつつ、日本代表のベースキャンプ地・ナッシュビルから13日早朝のフライトで移動した。
ダラスの市内はDARTで自在に行き来できる。スタジアムは32キロもの距離!
ダラスには2つの空港があり、日本でよく知られているのはダラス・フォートワース空港。こちらは世界各国の国際便が乗り入れている。一報のダラス・ラブフィールド空港はサウスウエスト航空のハブ。国内線中心だ。筆者は今回後者を利用。たまたま日本代表の前日練習が行われた南メソジスト大学(SMU)に近く、バスと電車を乗り継いで行けたので助かった。
ダラスの公共交通はDARTと言われる路面電車とバスがある。1日乗り放題チケットは6ドル(960円)。フォートワース方面の広域エリアを含めると9ドル(1440円)だ。その時点ではダラススタジアムにも電車で行く予定だったため、「Go Pass」というアプリから9ドルの方を購入。スムーズにSMUの最寄駅まで辿り着けた。
練習前に水を買うためスーパーに立ち寄ると、帰り際に現地在住女性に「車で送ってあげる」言われた。歩くと20分はかかる距離だったため、かなり有難かった。「ダラスの滑り出しはまずまず」と好感触を抱きながら、練習を取材。取材仲間が車で来ていたため、便乗させてもらえることになり、郊外のアーリントンにあるダラススタジアムに真っ直ぐ向かった。ダラスのダウンタウンからは32キロ。車で30分程度だ。公共交通機関でも行けるが所要時間は倍以上かかる。時間をセーブできたのは本当に助かった。
W杯取材で初めて直面したホテルの大混乱。試合前夜に途方に暮れる事態に…
このまま物事が順調に進めばいいと思っていたが、問題が起きたのは、森保一監督の記者会見の後。早くホテルに行きたいと考え、奮発してウーバーを利用。4000円程度かかる距離を移動し、安ホテルに着いたところ、「部屋が1つしかない」と女性スタッフに言われてしまったのだ。
W杯開催地はホテルの値段高騰が常。94年アメリカ大会から過去8回W杯に行っている筆者はそれを見越して、昨年12月の抽選会直後に安いホテルを仲間の分も含めて予約していた。「予約サイトでは複数部屋を取っている」と主張するも、スタッフとは平行線。日本のカスタマーサービスに何度も電話をかける羽目になった。
結局、「差額を100ドル(1万6000円)程度まで保証する」という回答を得て、そのホテルは無料キャンセル。別の快適そうなアパートメントを即座に予約し、またもウーバーで3~4000円程度かけて移動。先方から入室コードが送られてくるのを待った。
けれども、待てども一切、連絡がない。こちらも仕事があるため、外でパソコンを叩きながら反応を待つのだが、なしのつぶて状態が続く。仕方がないので、再びカスタマーサービスに連絡。日も暮れてくる中、不安なまま2時間以上放置された。
そんな時、そのアパートに泊まっていた日本人サポーターグループが現れた。困り果てて事情を話すと「我々の部屋で待っていいですよ」と言われ、お言葉に甘えさせてもらった。パソコンの電源がギリギリだったため、その申し出は本当に有難かった。
最終的にそのアパートは無料キャンセルとなり、自ら別サイトでラブフィールド空港近くのホテルを82ドル(1万3000円)で予約し、移動。到着後、男性スタッフに「14~15日の延泊はいくらか?」と尋ねると「タックス含めて85ドル(1万3600円)という回答を得た。「疲れているでしょうから、支払いは明日でいいですよ」と言われ、安心して部屋へ移動。何とか最低限の原稿を送り、ベッドに倒れ込むことになった。
延泊料金が85ドルのはずが113ドル! メディアバスは来ず、ウーバー連発で移動費貧乏
迎えた試合当日の14日。フロントにホテルに延泊の手続きをしに行くと、女性スタッフが「113ドル(1万8000円)だ」と言う。「昨晩のスタッフは85だと言っていた」と伝えたが、「口約束は何の意味もない。今のレートは113ドル(1万8000円)だ。不服なら今すぐ出て行ってもらっていい」と強気の物言いをされ、本当に怒り心頭だった。が、この日はオランダ戦当日で迅速にスタジアムに向かう必要があったため、これ以上の押し問答はできず、高いレートを受け入れるしかなかった。あまりにも疲労困憊で「海外では口約束は効力がない」という鉄則を忘れていた筆者の落ち度だったのは確かだ。
どこかモヤモヤした精神状態のまま、メディアバスが出るダウンタウンのシェラトンホテルへ2500円程度かけてーバーで移動。バスが来るのを待ったが、看板もなければ、いつ来るのかも分からず、かなりの不安に襲われた。「ここで待つより、もうウーバーでスタジアムへ行った方がいいのではないか」という話になり、結局、ウーバーを再び呼んで、33ドル(5280円)かけてダラススタジアムへ行く羽目になり、本当に移動費だけで想定をはるかに超えるレベルになってしまった。
1ドル=160円超の超円安の今、1回1回の移動負担は本当に重い。このW杯は食事を自炊したり、スーパーの見切り品を買うなど、徹底的に節約しているが、トラブルが起きるたびに想定以上の出費がかさんでしまう。そこは本当に頭が痛い。32年前は1ドル=80円くらいだったから、まさに倍。日本の国力低下を心底、痛感させられる。
スタジアムのメディア入口で1時間待ち!この運営に怒り心頭!
キックオフ2時間前の12時半にメディア入り口に着いてみると、今度は信じがたい長蛇の列。原因はメディア用のセキュリティゲートが1つしかないことだった。隣の一般ゲートは余裕があるのに、メディアだけはなぜか数が少ない。前の方に行ってスタッフに聞くと「FIFAからの仕切りだから仕方ない」と言うだけ。こんな行列は過去のW杯では経験したことがない。目の前にいたコスタリカメディアの人たちと「ホントにひどすぎる」と一緒になって怒っていた。
中に入るまで約1時間を要し、メディアセンターに着いたのはキックオフ90分前。そうこうしているうちに先発も発表され、落ち着いて心の準備をする時間的余裕もない。こんなドタバタのW杯初戦は初めて。試合も波乱が予想された。
ダラススタジアムの記者室はアメフトやクリケット場と同じで、メインスタンド側の右コーナー付近にある。それは1年前の2025年クラブW杯で赴いたシアトルのルーメン・フィールドと一緒。その時は早く行って席を取っていたので、中寄りの場所で試合を見ることができたが、W杯は記者の数が多く、指定された場所を動けない。今回はゴール裏寄りになり、角度的には見づらかったが、テレビでライブ配信映像が流れていたり、コーヒーのサービスがあったりしたので、取材環境としては悪くなかった。ダラス入りしてからのトラブルの連続をいったん忘れて、試合に集中できた。
中村敬斗は次世代のスターになりそうな予感。次のダラスは平穏を願う!
日本の戦いぶりは勇敢だった。開始早々の3分にマレン(ローマ)の強引なシュートを鈴木彩艶(パルマ)がビッグセーブ。ここからが死闘の始まりだった。前半は相手に主導権を握られ、内容的にも劣勢を強いられたが、中村敬斗を筆頭に攻撃陣がいい仕掛けを披露。チャンスも作った。そして0-0で突入した後半。日本はオランダに先手を取られたが、中村敬斗の同点弾が生まれ、2-1にされた後もジョーカーとしてベンチに陣取っていた伊東純也(ゲンク)や小川航基(NECナイメンヘン)、菅原由勢(ブレーメン)がギアを上げ、ミラクルドロー劇を演出した。
試合後の取材ゾーンはまさに戦場。今回からテレビとペン記者が合同で聞ける代表取材というのが設けられ、そこに鎌田と中村が登場。いったん質疑応答が行われた後、ペン記者ゾーンに選手たちが次々とやってきて話をする機会に恵まれた。この試合のMVP左サイドで奮闘した中村だろう。
彼のことはU-16日本代表だった10年前から見ていて、初の欧州挑戦に踏み切った2019年10月には当時所属していたオランダ1部・トゥテェンテにも取材に行ったことがあるだけに、その活躍ぶりは感慨深かった。こういった新たまスターが登場するのがW杯という舞台でもある。これまでにも2002年日韓W杯の稲本潤一(川崎FRO)、2010年南アフリカW杯の本田圭佑(FCジュロン)、2018年ロシアW杯の乾貴士(神戸)、2022年カタールW杯の堂安律(フランクフルト)といった選手たちがブレイクしてきたが、中村敬斗はその系譜を継いでいきそうだ。
試合後はメディアバスに乗れて、町中までスムーズに移動でき、そこで少し作業してからホテルへ帰宅。翌朝も空港からナッシュビルに戻れた。ダラスの街中で見たのはDARTと公園、カトリック大聖堂くらいだったが、第3戦・スウェーデン戦で再度赴く24~26日はもう少し余裕を持った行動をしたいところだ。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。
DIME最新号は躍進する日本サッカーの大特集、特別付録「アオアシ」ナップサック付き!!
Amazonで購入 楽天ブックスで購入 7netで購入ドーハの悲劇から33年、日本サッカーの躍進は世界を驚かせています。いよいよ北中米ワールドカップが開幕を迎え、盛り上がりは最高潮へ…。
今月のDIMEでは、日本サッカー協会、Jリーグ、育成世代だけでなく、スポンサー企業の貢献など進化の舞台裏、立役者を独自の視点から徹底取材。驚きの事実が明らかに…!

かつてのサッカー日本代表があと一歩のところで届かなかったアメリカの地に、夢の祭典が再び帰ってきた。現在の代表チームが目指すのは、あくまで〝優勝〟。出場すらかなわなかった32年前を知る世代からすれば、考えられないほどの高い目標設定だ。
わずか30年でここまで代表チームが成長し、日本のサッカー文化自体も発展を遂げられたのはなぜか? その足跡をサッカー協会、Jリーグ、外国人監督、元日本代表のレジェンドたち、スポンサー企業など様々な視点で読み解く。
さらに『アオアシ』をはじめ、サッカー漫画がいかに日本サッカーの躍進に貢献したのか、元日本代表レジェンドたちにも取材もしました。
日本サッカー協会会長 宮本恒靖
日本サッカー協会名誉会長 田嶋幸三
Jリーグ チェアマン 野々村芳和
名古屋グランパス監督 ミハイロ・ペトロヴィッチ
ガンバ大阪 代表取締役社長 水谷尚人
元サッカー日本代表 戸田和幸
元サッカー日本代表 遠藤保仁
元サッカー日本代表 福西崇史
元サッカー日本代表 中村憲剛
『アオアシ』作者 小林有吾先生
お笑い界のサッカー通 カカロニ など豪華インタビューも!
サッカーという時代を彩り、人々を熱狂させてきたトレンドの背景を読み解く、一大特集になっていますのでご期待ください!
【特別付録】「アオアシBlueナップサック」
約50×39.5cmのビッグサイズ!
若い世代を中心に人気のナップサックは軽くて使い勝手がよく、ラフに荷物を詰め込めるためカジュアルコーデとも相性抜群。さらに、日本代表をイメージした鮮やかな「青」は、サッカー観戦を盛り上げてくれます。
日常使いからスタジアムまで、フットワーク軽く使えファン必携の万能アイテムです!







DIME MAGAZINE



















