モデルハウスの見学といえば、営業担当者の案内を受けながら巡るのが一般的だ。そのスタイルを変えるサービスを、ou2株式会社が2026年5月1日に正式スタートさせた。
スタッフの同行はなく、利用者はスマホで玄関を解錠して、自分のペースで自由に見学できる。「セルフモデルハウス」と名付けられたこの新サービスを、筆者が予約から実際に体験してきた。あわせて、同社専務取締役 設計統括部長の高坂昇氏に伺った立ち上げの狙いや今後の展望も紹介する。
営業担当者が同行しない見学サービス「セルフモデルハウス」とは
セルフモデルハウスは、東京都新宿区の総合住宅展示場「ハウジングステージ新宿」内にあるクレバリーホーム新宿モデルハウスで利用できる見学サービスだ。公式サイトから1時間単位で予約でき、利用は無料。当日は専用アプリで玄関を解錠して入館する。
運営するou2(オーツー)は、クレバリーホーム城東店・新宿店を展開し、東京23区の狭小地や変形地に特化した家づくりを手がける住宅会社である。コンセプトは「10cmも無駄にしない®」家づくりで、限られた敷地を最大限に活かす設計を強みとしている。モデルハウスも建築面積15坪以下で、都心の限られた敷地に建つ住宅の広さを等身大で体感できる。
サービスの根幹にあるのは、より多くの人に気兼ねなくモデルハウスを見てもらいたいという考えだ。営業を受ける前に、まず自分たちのペースでじっくり見たいというニーズは、年々高まっているという。
あわせて同社が目を向けるのが、見学の時間そのものを確保しづらい人たちの存在だ。都心部に多い共働き世帯は、夫婦そろって見学に行ける日時が限られる。高坂氏が挙げるのは、働き方による制約である。
「住宅業界や不動産業界は火曜日と水曜日が休みのことが多く、サービス業の方なども、土日には見学に行けないという方が一定数いらっしゃいます。そうした方々の受け皿になれるのではないかと考えました」
このほか、夫婦で休みが合わない家庭が、時間を分けて個々に見学するといった使い方も想定している。
実施を後押ししたのは、若い世代の行動様式だったという。
「今は若い方はもちろん、中高年世代も、まずスマホで情報を集めてから物事を決める人が多くなりました。住宅の見学でも、知りたいことはある程度調べた上でいらっしゃいます。そうなると現地の役割は、説明よりも実物を確かめていただくことになります。それなら、スタッフのいないセルフモデルハウスが合っているという結論に至りました」
こうして昨年からトライアル運用が始まり、正式公開に至った。
予約から入室まで。スマホ1つで無人のモデルハウスへ
予約は公式サイトから、希望の日時を1時間単位で選ぶ。登録すると案内メールが届くので、記載に沿って当日使う専用アプリ「SpaceCore」をダウンロードし、添付の「アプリ利用コード」を入力。事前の準備はこれで完了となり、当日は予約した時間に現地へ向かうだけとなる。

筆者が見学したのは水曜日の16時から。JR新大久保駅から3分ほど歩くと、会場のハウジングステージ新宿に着いた。複数のモデルハウスが立ち並ぶ総合住宅展示場のため、その中から目当ての建物を探す必要がある。
筆者は単独で建っているものと思い込んでいたため少し手間取ったが、クレバリーホーム新宿モデルハウスは展示場の中心部にあり、すぐに見つけられた。
なお、平日の夕方でも駅周辺は人通りが多かった。土日に訪れるなら、移動時間に余裕を持っておきたい。
モデルハウスの入り口は自動ドアで、アプリを操作して解錠する。

当然スタッフの出迎えはなく、館内には誰もいない。誰の目もない気楽さがあり、入った直後から落ち着いて見学を始められた。
※他の顧客の接客や清掃のため、スタッフが滞在している場合もあるが、内見自体はセルフで自由に行える
入室したら、まず入り口のアレクサに挨拶をしておきたい。声をかけておくと、見学の終了時間が近づいた時に音声で知らせてくれる。

挨拶を済ませたら、準備はすべて完了。ここから1時間の見学が始まる。
人目を気にせず細部まで。床に寝転がることもできる見学体験

順路が用意されており、要所に解説パネルが設置されている。順路の番号は解説動画と対応していて、アプリで同じ番号の動画を再生すると、その場所の特徴や設計の意図を知ることができる。

実際にパネルを読み、動画を聞きながら進めていくと、見るべきところはひと通り説明してもらえている感覚があった。営業担当者に尋ねるような疑問の多くも、その場で解消できた。なお、順路はあくまで目安なので、気になる場所から自由に見て回ることもできる。
建物は、入ってすぐ左手が賃貸スペースとして仕立てられた内見エリア、右手が住居スペースという構成だ。住居側の1階には、クレバリーホームが標準仕様とする外壁タイルの実物に触れられる展示と、堅牢な耐震構法の解説展示、そして防音室がある。2階はキッチンを含むリビングダイニング、3階は寝室と浴室などの水回り、子供部屋となっている。




営業担当者が同行しない気楽さは、見学を始めるとすぐに実感できた。人目を気にせず、収納の中や設備の細部まで気が済むまで確認できる。さらに、住む姿を頭で思い描くだけでなく、身体を動かして確かめやすいのもセルフ内見の良さだ。人の目があると少し気が引けるような動きも、気兼ねなく試せる。
たとえば寝室には、ロフト状のワークスペースがあった。実際に中腰で上がって腰を下ろしてみると、頭が天井に触れそうなほど近いものの、こもって作業するにはむしろ集中しやすそうな空間だと分かった。腰を下ろしてみて初めて得られた感覚である。

その気になれば、床に寝転がることもできるくらいの自由さがある。実際、賃貸スペースにはビーズソファのヨギボーが置かれていたので、筆者もしばらく腰を下ろして部屋の雰囲気を確かめた。もっとも、あくまで展示場である。設備や内装を傷つけない節度は忘れずにいたい。
建物そのものの印象としては、無駄なスペースが見当たらないことに尽きる。収納はあちこちに設けられており、ここにもあるのかという発見が続いた。もしかすると、筆者が見つけられていない収納がまだあるのかもしれない。

見学を終える頃には、高坂氏の次の言葉が実感を伴って腑に落ちていた。
「狭小住宅は、図面だけでは広さの感覚や抜け感が伝わりにくい住宅です。天井の高さやスキップフロア、視線の抜け、収納の納まりなど、実際に体感して初めて理解できる要素が多くあります。ぜひご自身の目で確かめていただきたいですね」
中の音が外に漏れない。防音室は見学の締めくくりにも最適
今回の見学で最も印象に残ったのは防音室だ。二重扉を開けて中に入ると、迫力のある音で映画が上映されていた。扉のすぐ外で耳を澄ましても、音は全く聞こえてこなかった。それほどの遮音性である。

室内にはサブスクリプションサービスが登録されており、好きな映画や音楽を自由に楽しめる。この防音室について、高坂氏は次のように紹介している。
「特に見学していただきたいのが、都市部で隠れたニーズといわれている防音室です。ほぼ完全防音の空間で、好きな音楽や映画、楽器の演奏などを誰にも遠慮することなく身体全体で感じる体験は、なかなかできるものではありません。一度体験していただければ、きっとその空間が欲しくなると思います」
写真を撮りながら時間をかけて見学した筆者でも、所要時間は予約した1時間に収まった。通常の見学なら、時間には余裕があるはずだ。
終了後の手続きはなく、時間が来たら退室するだけでいい。そのため、早めに見学を終えて、残った時間を防音室で過ごすのもおすすめだ。ただし、防音室の中にいるとアレクサの終了案内は聞こえない。時間の管理にだけは注意したい。
「まだまだ途上」 セルフモデルハウスはこれからも進化する
ひと通り体験してみて、無人ならではの不便さを感じる場面は特になかった。困った場面といえば、展示場内で建物を探すのに少し手間取ったくらいである。それでも同社は、すでに改善に目を向けている。
「現状は、順路に沿ってパネルと動画で案内する形をとっています。ただ、それだけで全てが伝わるわけではないので、今後はQRコードをもっと細かく設置して、その場で動画や詳しい説明を確認できるようにしていきたいと考えています。その意味では、まだまだ途上ですね」
さらに、新たなモデルハウスを構える構想もあるという。
「次は当社の強みである木造4階建てか5階建てのモデルハウスを建てたいと考えています。場所の選定や人材確保の目途をつけて進めていきたいですね。」
住宅は人生で最も大きな買い物といわれる。その一方で、検討の入り口は確実に気軽になっている。スマホで予約し、スマホで鍵を開け、誰にも気兼ねなく実物を確かめられる。家づくりを考え始めたら、まずはこの新しい内見を体験してみてほしい。
施設情報 クレバリーホーム新宿モデルハウス「セルフモデルハウス」 場所:ハウジングステージ新宿内(東京都新宿区百人町2-2-32) 予約:公式サイトより(1時間単位・無料)
取材・文/宮﨑駿
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