「御札も、お清めの塩も、パワーストーンも、全部まとめて捨ててやりました。『なんだこれ、意味ないじゃん』って、気づいちゃったんです。そうしたら不思議なもので、目の前の仕事を必死で頑張っているうちに、お金も幸せも、向こうから勝手にやってきました」
そう笑うのは、タロット講師として年商2.8億円を稼ぐというゆうこ学長だ。だが数年前まで、彼女は占いに数百万円を注ぎ込むスピリチュアル依存の沼の底にいた。母からのネグレクト、浮気され婚約破棄……。次々と幸せを取りこぼした先で行き着いたのが、占い師に救いを求める日々だった。その彼女が、なぜカモられるだけの”スピ沼”を抜け出せたのか。さらに、そこからどうやって年商2.8億円を稼げるようになったのか――。激動の半生を聞いた。
ゆうこ学長が育ったのは、北海道の海と山に挟まれた集落だったという。
「目の前が海で、後ろが山で、クマの足跡が普通についているような限界集落。父は長距離トラックの運転手でほぼ家にいなくて、母はそんな場所に嫁いできて一人ぼっち。今思えば、母も鬱だったんだと思います」
ゆうこ学長が小学六年生の時に同居していた祖父母が相次いで亡くなると、母はほとんど家に帰らなくなった。食べるものもなく、風呂もない家。そんな毒親のもとで育った愛情の欠落は、やがて恋愛の歪みとなって表れる。「自分には取り柄がない。男性に幸せにしてもらうしかない」と借金してまで服や美容につぎ込むようになったのだ。ようやく婚約までこぎつけた相手には浮気され、結納目前で破談した。
「やっと手にした、自分だけの幸せだと思っていたんです。いっぱい課金してきたゲームが、ゴール目前でリセットされる感覚で。もう一からやり直す気力なんてない。死のうかな、くらいに思っていました」
「めっちゃカモられていた」最高峰の御札は30万円
誰にも相談できない孤独の中で、最後に縋ったのが占いだった。
「今までエンタメとして占いに行くことはあったけど、はじめて本気で占い師に相談しに行きました。先生にめちゃくちゃ話を聞いてもらって、もうメンタルケアですよね。欲しい答えをくれる、 “自分にとって都合のいい先生”を転々とする日々。今思えば、めっちゃカモられていました」
会社員の月給20万円に加え、キャバクラやスナック、警備員の掛け持ちで稼いだ金は、そのまま占いに消えた。
「昼は会社員、夜はキャバクラっていうバカみたいな生活で。稼いだ分はほぼ全部、占いにフルベットしていました。月20~30万円は余裕で使っていたと思います」
使った総額は数百万円。なかでも高額だったのが、部屋に貼る「御札」だった。
「先生曰く、一番すごいやつ。『このままだと人生が終わる』『呪われている』『いろんな人の念をもらいすぎている』って言われて。メンタルがボロボロだから、思い当たる節がありまくるんですよ。心が荒れていると現実も荒れる。だから『すごい、当たってる』って信じちゃうんです」
御札や塩、パワーストーン……。買わされたのはそれだけではない。
「『あなたに龍を授けます』って、何万円もする儀式みたいなのがあって。みんなで集まって先生のエネルギーを受け取る、半分宗教みたいなセミナーにも行きました。先生が背中をスッとさすると、みんなバタバタと倒れていくんです。まんまと『すごい。これは本物だ』って思わされました。まあ、全部サクラだったと思いますけど。最終的には300万円の水晶を勧められて、さすがに買えなかった。でも、お金があったら絶対買っていたと思います」
現実逃避は、二次元にも向かった。
「人間の男性も信じられなくなって、アニメのキャラと結婚するって。腕にそのキャラの顔と名前のタトゥーを入れて、ウエディングドレスを着て結婚式まで挙げたんです。誕生日にはアニメの聖地でお祝い。だから私、ある意味バツイチなんですよ(笑)」
お札を捨てたら、人生が動き出した
そんなどん底のゆうこ学長がスピ沼から這い上がるきっかけも、皮肉にも占いだった。偶然出会ったタロット講師に「カード、習わない?」と誘われたのだ。
「タロットって、未来を当てる道具だと思われがちですけど、実はメタ認知のツールなんです。問題を抱えると、昔の私みたいに視野がどんどん狭くなる。でもタロットでは、出たカードをフックにして、考え方が180度変わったり、フラットに捉え直せるようになる。それに気づいた時、『この業界やばいじゃん』と思ったんです。エンタメで人の人生を狂わせる占い師が多すぎるって」
そして彼女は、壁に貼っていたお札を剥がした。
「全部捨ててやりました。『何の役にも立たない紙切れにお金を使って、人生が良くなるわけないよな』って。覚えたタロットを会社の同僚に披露したら、『すごいね』『ありがとう』って感謝される。その中で、自分に自信が積み上がっていったんです。愛情も自信も、誰かからもらうものだと思っていたけど、自分で”自家発電”できると気づきました」
受け身で答えをもらう占いから、自分でカードを引く占いへ。その転換が、いまの事業の核になっている。
「『占い師がこう言ったから動く』のは、全部受け身ですよね。それで人生の大事な選択を決めるのは、すごく危険。霊感商法なんてもってのほか。私が教えているのは、『死神のカードが出たから、不幸が訪れます』と不安を煽るのではなく、『こう出たけど、じゃあどう行動していけばいいと思う?』と傾聴し、その人自身が動けるようにすること。依存じゃなく、自立に導く。昔、私からお金を巻き上げた占い師とは、そこが決定的に違うんです」
法人一期目の売上は、なんと年商2.8億にまでのぼる。
「タロットを教えてほしい人は、めちゃめちゃいます。占う側も占われる側も、どこかで今のスピリチュアル業界に違和感を感じている。だから『自立のために占いを使う』という考え方に、共感してくれるんだと思います。人は指針を与えられると安心する。だけど、思考放棄してそれに従うだけではダメ。占いは、自立のためのちょっとしたきっかけにすぎないんです」
実際に占いで数百万円を溶かした者だけが持つ実感が、その言葉にはこもっていた。
ゆうこ学長
タロット指導者。婚約破棄を機に占いの世界へ。霊感頼みではなく心理学やコーチングを取り入れた地に足のついた占いを広め、5000名以上を指導。占いを自立の武器に変えるママ支援にも力を注ぐ。
文/桜井カズキ
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