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その励ましが相手を追い詰める?メンタル不調の人に絶対に言ってはいけない言葉とは

2026.06.26

大切な人の様子がおかしい――そう感じたとき、何をすべきか迷っていませんか?

元サラリーマンの現役産業医・精神科医尾林誉史さんの著書『家族が「うつかも?」と思ったら 最初の“どうしよう”に答える一番優しいうつガイド』は、メンタルダウンの症状や治療の流れ、病院の選び方から正しい声かけ、NG対応までを具体例で解説。「支える側」に寄り添い、自分の心を守る方法も伝えています。現役精神科医による実践的なロードマップで、迷いを安心へと変える一冊です。

本記事ではその内容の一部を再編集してお届けします。

あるがままを受け入れる

■何よりも大事なことは「共感」

 メンタル不調で弱っているときには、つらさをわかってほしい、優しい言葉をかけてほしいという心理があります。

 つらい気持ちを吐露したとしても、解決のための相談をしたいわけではないのです。

患者さん「今日、会社でこんなひどい目にあったんです」
あなた「でもそれはあなたにも問題があったんじゃないの?」

患者さん「こんなミスをしてしまいました」
あなた「じゃあ、こんな対策をしてみたら?」

 何気ない会話ですが、これらはこの時期にやってはいけません。

 何よりも大事なことは「共感」です。

 あるがまま受け入れてあげる。

「そうだよね」「大変だったよね」「つらいよね」と共感を示して、否定的な言葉を使わないのが絶対的な大前提です。

 いつもより多少優しく答えてあげるのがいいでしょう。

 ただし、特に真面目な気質のかたには、少し気をつける必要があります。

 そういうタイプの人は、頑張れない自分を許せない気持ちが強くて、自信喪失に陥り、存在価値がないと思いつめてしまいます。あんまり弱音を吐けないでいることも多いでしょう。

「大変だね」「わかるよ」と言われても、そのまま受け取れない。

 わかったふりをされていると感じたら、落ち込んでしまう。自分はこんなに励まされるぐらいだめなのだと、傷ついてしまったりするのです。

 そんなこと言ってるけど、どうせ私の気持ちなんてわかってもらえてないのにと、気持ちを逆なでされたように感じることもありえます。

 ですから、相手の話に無理に言葉で共感をあらわそうとするより、心理的に寄り添ってあげるのがいい。言葉は少なく、真剣に話を聞いてうなずいてあげるイメージでしょうか。

■「死にたい」と言われたら?

 共感しても、励ましてもダメ。ではどうするのかといえば、こうしたときの会話は、8割がたオウム返しが基本、と覚えておいていただければと思います。

「そうだよね」「そういうときは、そりゃあしんどいよね」と返すのです。

 周囲のかたが一番困り、精神科医に聞くことが多いのが、死にたいと言われたときにどう答えればいいですか、ということです。

 無難なのは「死にたいって思うぐらいつらいんだね」です。

 これもひとつのオウム返しです。

 死んだらだめだと断言してはいないし、でも言っているような気もするし……あいまいさを残して、結論に持っていかないことです。

 そうだよね、悲しいなあ、わかるなあとあいまいなままにする。こちらのアドバイスは伝えないほうがいいのです。

■アドバイスしない、調子はどうか聞かない、叱咤激励しない

「頑張って」は禁句ですね。それ以上頑張れないところまでメンタルダウンした人に、この言葉は大変厳しいものです。

 では励ましはどうでしょうか。

「あなたなら、できるよ」
「絶対に元に戻れるよ」
「負けず嫌いなんだから、これくらいできるはず」

 大事な人を勇気づけたい、元気を取り戻してほしい。そんな思いから、その人に届くであろう言葉を尽くしてエールを送ってしまうでしょう。

 かつての元気だった状態をイメージして言葉や声かけをしてしまうのですが、目の前にいるのは、「かつてのその人」ではないのです。ですから、これらの言葉はまったく届きません。

 メンタルダウンしているときは、「オール・ネガティブ」なんです。メンタルダウンした状態では、相手の話を言葉通りに受け取ることができません。こちらの気持ちをくみ取る力がないので、ネガティブな方向に考えていくことが多くなります。

「そんなことはできっこない」「自分はそんなことを言われるほどだめなのか」と。

 この時期には、いくら正論を説いても、有益な情報を入れてあげても意味がありません。たとえどんなに頑張って話してみたところで、しみ込まないし、ねじ曲げられて受け取られてしまいます。どんなにポジティブな言葉をかけてもらってもそのまま受け取れません。だからこちらは、なにも言わないで聞き役に徹するのがいいのです。

 こちらがどう話したからといってすぐよくなったりはしない。中長期戦で、下手したら数か月かかる。そう覚悟しないと始まりません。

 どんな言葉をかけたらいいかと悩むなら、いろいろ言葉をかけてあげなくてもいい。顔を見てゆっくりうなずくというような動作のリアクションでもいいのです。

■好物を作ってあげたりしない

 前述したように、初期にはおでかけのお誘いなどはもちろんNGです。

 僕は、初期の段階に「目を閉じてごろごろしているのが楽なんじゃない?」と聞きます。

 だいたいの患者さんはそうだと答えるので、「それでいいんですよ」と言います。その時期になにもできないことを、肯定してあげるのです。

 基本的に食欲も落ちるので、そこでちゃんと食べようと言っても無理です。

 僕は患者さんに5、6日食べなくても死なないから大丈夫ですよと言ったりします。

 ご家族なら「あんまり食欲ないんじゃない? 無理に食べなくてもいいんだよ。でも、ちょっとお腹がすいたときには言ってね」というぐらいがいいかもしれませんね。

 食欲がなさそうだから好物なら食べられるかもしれないと必死に作ってあげたりしがちなのですが、これもやめたほうがいいでしょう。

 作っても、そもそも食べ物を受けつけない状態だから食べられない。そうすると「私はあなたのことを考えてここまでやってあげているのに」と、自分が被害者のような気持ちになってしまうのです。

 真剣に心配しているのは弱っている本人に伝わらず、なんで変わらないのだろうと悪感情を持ってしまって、まったくいいことがありません。

 ともかく、中長期戦だと腹を決めてもらうしかないのです。そのためには、下手にやりすぎないほうがいいし、ご自分は出かけてしまってもいい。

 ずっとゴロゴロ寝ているのを近くで見るのは気持ちのいいものではありません。また、弱っている本人にとっても、常に家族がいると、監視されているような、自分が足かせになっているような気持ちになってしまう。

「ちょっと出かけてくるね」と言って物理的な距離を取るのは、お互いのためにいいことです。

改善していかない! どうしよう?

■家族が病院に行ってみてわかること

 しっかり休んで薬も飲んでいるのによくなっていかないと、ご家族も不安になります。

 ちゃんと先生は診てくれているんだろうか、なんと言っているんだろうかと。

 その不安を取り除くには、クリニックの診察室に患者さんとご家族やパートナーの方が一緒にいらっしゃる、これに尽きると思います。

 弱っている患者さんは、どんな先生でどんな感じだと伝える力も弱っています。ご家族が直接行ったほうが、判断できる場合があるからです。

 受付スタッフの受け答えに始まって、この先生はビジネスライクだとか、質問にちゃんと答えてくれないとか、説明がわかりにくいとか、仕入れられる情報はたくさんあります。

 前もって、病院に家族も行っていいかと電話で聞いておくといいでしょう。家族の同席を拒まれたら、理由を聞いてみます。

 本人のプライバシーの問題でだめだと言われたら、本人の了解があればいいということですねというふうに聞いていけばいいと思います。

 たいがいのクリニックでは診療情報を共有してもいいという本人が署名する同意書を用意しています。僕のクリニックでも、会社の上司やご友人などが同席する場合には出していただくことがあります。

 第一章やコラムで触れたように、家族の同席を断るクリニックの多くは、実は診察時間が長くなると売り上げが減ってしまうからというのが理由だったりしますから、ともかく頼んでみることです。

 初期の段階では、医師が病状や今後の見通しを丁寧に説明しても、本人の記憶に残らない可能性もあります。

 できるだけ早い段階で一度同席しておくのがいいと思います。

 いくら本人に聞いてもわからなくて、ドクターに問い合わせの電話をするというご家族もあるでしょう。どうしても困ったときにだめだとはいいませんが。その電話によって、平等に予約を入れているほかの患者さんの診察時間が犠牲になってしまうこともわかっていただきたいと思います。

■医師を変えるかどうかの判断

 通院しているけれども、回復しているように思えない。でも患者さん本人は医師はこのままでいいと言っている―。家族としては心配になってしまいますよね。

 この場合、医師を変えるべきかどうかについては、患者さん本人の中からよくなりたいという気持ちが出てくるかどうかが判断材料のひとつになると思います。

 例えば3か月ぐらいたってもその兆しがないようだったら、ご家族から本人に、最近調子はいいようだけど、違うお医者さんの話も聞いてみるのはどうかと相談するのもいいでしょう。

 通院するごとに、患者さん本人に「今の自分の状態は10点満点中、何点だと思う?」と聞いておくのも有効です。点数は病院への評価ではなく、あくまで本人の状態や気分です。

 数値化することで「ちょっとずつ上向いているんだな」とか「ずっと低空飛行のままだぞ、なんならマイナスだ」とか見えるわけです。上向いているならこのままでも大丈夫という安心材料になりますし、逆にずっと低い状態が続くようなら一緒に病院に行ってみる、という目安になりますね。

 ただし、繰り返しになりますが、その前に今の医師のところに一緒に行くことをおすすめします。

 例えば、親御さんから見ると、「起きたと思ったらずっとスマホをいじってるばっかりで治ろうとしてない」と不安だったりしますが、医師の立場から言うと、それは以前ならできたYouTubeやTikTokなどの動画配信サイトを見ることをなぞっている。当初は頭に入らないしすぐ疲れてしまうから、置いては見て、置いては見てを繰り返している。いじろうとするのだってひとつの回復への兆しだからいいんですよ、とご説明しています。

 こうした外からの見え方と本人の状態のギャップといったことも、患者さん本人の口からは説明できませんから、ご家族が一緒に病院に行って医師に聞くのは有効だと思います。

■サプリや民間療法の注意点

 病院に通っていてもよくならないと、サプリや民間療法の方向に向かう患者さんやご家族もいます。

 医師としては、そういうものにはエビデンスがないし気休めだとわかっていても、止めるわけにもいかないので難しいところです。

 早くよくなりたいから、手っ取り早い手段があるのだったらと、わらにもすがる思いになるのはわかります。

 結論からいうと、そんな手段はないんです。でもそう言っても納得いただけないと思いますので……。

 薬だと思い込んで飲むと小麦粉でも改善効果が出るプラセボ効果というのもあるぐらいですから、このサプリが自分にいいことがあるかもしれないと思って飲むのはいいとお話ししています。

 ただし、このサプリを飲んだから必ずよくなると思わないように、ということは明確に伝えています。

 不安な時期だからこそ、この時期は「原理主義」に陥りがちです。

「これを飲めば治るかも」
「このサプリは効果があるかも」

 そんな気持ちで始めたのに、いつの間にか「かも」が取れてしまって、「これを飲めば必ず治る」

「このサプリはきっと効果がある」

 に変わってしまう。この思考はやめていただきたいです。

 また、例えば、患者さんが配偶者を強く信頼している場合に、配偶者から「私が探してきたこれを飲んだら絶対効くから飲んで」と言われるのはうれしいでしょうし、プラセボ効果で少しよくなるかもしれません。

 ただし、絶対効くと言われたのに飲んでみて効かなかったときには、ダメージが大きく、勧めた人との信頼関係がゆらぐ場合もあります。

 知り合いの体験談や、ネットの情報にすがりたくなるかもしれません。どちらも「すごく回復した」「絶対によくなる」という極端なものでありがちです。そして調べれば調べるほど情報の森に迷い込んでしまいます。

 試してはいけないとは言いませんが、鵜呑みにしないことはとても大事です。

 信ぴょう性があるかどうか確かめられないのですから、少なくともご家族は、「絶対よくなる」なんていうものは「絶対」ないと踏みとどまっていただかなくてはなりません。

☆ ☆ ☆

パートナー、家族、友人、部下…大事な人の様子がおかしい。そう思っても、じゃあどうすればいいのかがわからない。そもそもメンタルダウンとはどういう状態なのか?どんな症状が現れるのか?どうやって病院を選べばいいのか?治療の過程とは?家族・友人としてどう接するべきなのか?
NGワード、行ってはいけない病院、薬との付き合い方、公的補助、そして“支える側”も心が折れてしまわないよう、どうすればいのかなど、家族や友人がどうすればいいのか。「支える側」の負担が大きいからこそ、正しい対処法を学んで、自分の心も守りましょう!

家族が「うつかも?」と思ったら
―最初の“どうしよう”に答える一番優しいうつガイド―
著/尾林誉史 小学館

尾林誉史
精神科医・産業医・公認心理師 VISION PARTNERメンタルクリニック四谷院長
1975年、東京生まれ。東京大学理学部化学科卒業後、株式会社リクルートに入社。2006年、産業医を志し、退職。その後弘前大学医学部医学科に学士編入。東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。
現在、note、面白法人カヤック、ジモティーなど20社強の企業にて産業医およびカウンセリング業務を務めるほか、メディアでも積極的に発信をおこなっている。

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