「言語化」が重要だと言われている。「なんでも“すごいですね”で終わらせてしまう」、「考えを言葉にできない」などのもどかしさを抱えている人も少なくない。思考を適切な言葉で伝えられれば、誤解や衝突を防ぎ、意思疎通が円滑になると思いながらも、それができない。この悩みの解決方法を、新刊『言語化は「ありきたりの言葉」でうまくいく。』(小学館)が話題の荒木俊哉さんに伺った。
言語化の本質は「いいところを見つける視点」にある
――仕事では「すごい」「さすが」、プライベートでは「ヤバい」「かわいい」「おいしい」「楽しい」ばかり使っています。言語化能力を高めるためにも語彙を増やしたいです。どうすればいいのでしょうか。
まず、言語化に語彙力は不要です。今、あなたが知っている言葉で、全く問題ありません。やはり言語化という言葉が一般化するほど、語彙力が必要だと思ってしまいますよね……実は、言語化と語彙力は関係ないのです。新刊『言語化は「ありきたりの言葉」でうまくいく。』(小学館)の執筆の背景には、この誤解を晴らしたいという強い思いがありました。
私は、コピーライターとしてこれまでに数多くの企業や商品、人の魅力と向き合い続けてきました。その経験からたどり着いた言語化の本質は、いいところを見つける視点にあるということなのです。
――言われてみると、言語化の目的は、人やもの、事象との関係を、自分にとってよくすること。「うまいことを言う」ことではなく、相手を肯定し、それを伝えることが大切だと気づきました。いいところを見つける姿勢を維持すれば、いろんな人やものとの関係がよくなるような気がします。
いいところを見つけながら対象を捉えると、メリットがたくさんあります。上司、部下、クライアント、家族、友人などの様々な人間関係があると思いますが、そこでの誤解や衝突を防げるだけでなく、相手から的確なフィードバックを得たり、協力を得やすくなったりします。
対象のいいところを見つけながら自分の考えを整理すると、周囲を動かす力も自ずと生まれてくるでしょう。有効な解決策も立案できますし、意思決定もしやすくなり、物事がスムーズに進んでいく。いわゆる“シゴデキ”(仕事ができる人)になると思います。
対外的な評価が高まるだけでなく、あなた自身の幸福度が上がります。好意的な視点で対象を見ることで、気持ちもポジティブになりますから。これが言語化の本質なのです。まずは、これを理解し、実践することから始めてみてください。
「普通」であるからこそ、言語化でバズることも
――「こうすれば言語化できる」「こういう技術を使えば伝わる」というコツやテクニックは、その上にあるものなのですね。
その通りです。私は20年以上、コピーライターとして、商品のキャッチコピーを書いたり企業のメッセージを発信し続けてきました。その目的は、企業が提供する商品やサービスを言葉にして広め、多くの人が便利になったり、幸せになったりすることです。
そのためには、まず書き手である私たちが、いいところを徹底的に探さなくてはなりません。でも、そのなかにはいいところが見つけにくいものがあるのも事実。普通だったり、一見ネガティブに見えてしまったり……ただ、そういうところは独自の魅力になりやすいのです。そしてこれを言葉にしたときに、多くの人に伝わって“バズる”こともあります。その要素を引き出して言葉にするのが言語化の本質だと結論づけたのです。
長年、これを続けてきて、「これは広告の世界だけでなく、日常のコミュニケーションや、個人の人間関係においても全く同じではないか」と気づきました。
――多くの人にとって、言語化が必要だと感じるシーンは、職場や家庭で「あの人とコミュニケーションがうまくいかない」とか「あの人の言い方にイラッとする」ともやもやしたときが多いと思います。言語化のやり方を教えてください。
まずは、問題の本質を見ることが大切です。例えば、相手に対してネガティブな感情を抱いたとしましょう。それをそのまま言語化してしまえば、ケンカやグチになり、人間関係をさらに悪化させてしまいます。
そんなときは、自分自身に「逆に言うと?」とか「そもそも?」と投げかけてみるのです。 すると、「この人はこの背景があるから焦っており、この言い方になっているんだな」とか、「上司の細かい指摘の背景には、仕事が丁寧で責任感があるってことだな」と事象の本質が見えてくるようになります。
その糸口は、本当にささやかなものでいいのです。小さな突破口を探して、自分の中で肯定的な理解を広げていってください。これだけで自分の中に納得が生まれ、いい人間関係につながっていきます。
『言語化は「ありきたりの言葉」でうまくいく。』には、さらにこれをブラッシュアップする方法を紹介していますが、まずはここから始めるといいと思いますよ。
――とはいえ、世の中には受け入れられない人、悪意や怠惰の塊のような人もいますよね。
そうですね。 私も本を書きながら、「どうしても無理な人はいるよな」と思っていました(笑)。そんな人に対しては、無理に理解しようとしなくてもいいと思います。
ただ、そこまで深刻ではない、日常の本当に小さな「あれ?」と思った違和感や、ちょっとしたすれ違いの瞬間に「いいところ」に着目してほしいのです。
その視点と言葉の選び方を変えることで、あなた自身のストレスを大幅に減らすことができますから。
――それは思考と自己理解の深まりにもつながっていく。
モヤモヤした感情を好意的な視点から言葉にすることで、相手との関係性が見えてきます。そして、自分自身がどのように考える傾向があるのか、客観視できます。これは自分自身のトリセツ(取扱説明書)を作ることにもつながりますし、問題の本質を捉えやすくなる。ぜひ実践してみてください。
コピーライター 荒木俊哉(あらきしゅんや)
1980年宮崎県生まれ。一橋大学卒業後、2005年に電通に入社。営業局を経てクリエーティブ局に配属される。コピーライターとして活躍。これまで手がけたプロジェクトの数は100以上、20か国以上にのぼる。世界三大広告賞のダブル入賞をはじめ、国内外で20以上のアワードを獲得。著書に『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)や『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)などベストセラー多数。
『言語化は「ありきたりの言葉」でうまくいく。』
荒木俊哉/著 小学館
言語化”という言葉が一般化するほど「言いたいことがうまく言葉にできない」「ちゃんと伝えているはずなのに、なぜか伝わらない」などの悩みを多くの人が抱えている。これを、広告の第一線で20年以上活躍してきたコピーラーターが、読者に伴奏しながら解決に導く。
Amazon取材・文/前川亜紀







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