かつてのサッカー日本代表があと一歩のところで届かなかったアメリカの地に、夢の祭典が再び帰ってきた。現在の代表チームが目指すのは、あくまで〝優勝〟。出場すらかなわなかった32年前を知る世代からすれば、考えられないほどの高い目標設定だ。その可能性はゼロではないと言われるほどまでに代表チームが成長し、日本のサッカー文化自体も発展を遂げられたのはなぜか!? その足跡を、本特集では元代表レジェンドなどの証言を中心に徹底解説! 日本サッカー協会が目指す未来の日本サッカーについてもひもとく。
日本代表が1998年フランスW杯に初参戦してから28年。劇的な進化を遂げた日本サッカーはどんな未来を描いていくのか。Jリーグのキーパーソンであるチェアマン・野々村芳和さんに話を聞いた。

Jリーグ チェアマン 野々村芳和さん
1972年、静岡県出身。清水東高から慶応大学へ進み、95年にジェフユナイテッド市原(現:同 市原・千葉)入り。2000年に北海道コンサドーレ札幌へ移籍し、01年に現役引退。解説者と同クラブのアドバイザーを務める傍ら(株)クラッキを設立。13年に北海道コンサドーレ札幌の社長となり、経営手腕を発揮。22年、元選手初のJリーグチェアマンに就任した。
2026年は大きな節目の年。恐れず前進を続けていく
「Jリーグが始まった時、自分はまだ大学生。何もないところからプロリーグが〝ゼロイチ〟で始まって33年が経ち、今はかなり成熟してきていると思います」
そう笑顔で語るのは、野々村芳和チェアマン。自身もJリーガーとしてプレーし、引退後は北海道コンサドーレ札幌社長として経営にも関与。そして2022年、現職に就任。成長を続けるJリーグを目下、力強くけん引しているのだ。
「1993年当時、日本と世界サッカーのレベル差は非常に大きく、日本代表にとってW杯優勝は夢以外の何物でもありませんでした。ただリーグの収益規模は今ほどの差はなかった。90年代はイタリアが少し先を行っていたものの、イングランドもスペインも突出してはいなかったんです。それが2000年代以降のフットボールビジネスの成長によって格差が急激に広がりました。特に大きかったのが放映権料です。24−25シーズンのプレミアリーグの総収入は約1兆4000億円。Jリーグは25年時点で2100億円ですから、いまだ大きな開きがあるのは確かです。それでも我々は『欧州5大リーグに追いつく』という目標を掲げています。これまでは国内競争にフォーカスしていればよかったのでしょうが、もはやそういう時代ではない。『隣が100億円なら、我々も100億円でいい』という感覚ではなく、『世界には1000億円クラブがあるから、そこに追いつくような経営をしないといけない』と考えるべきなんです」
10年後、Jリーグは欧州5大リーグの下2つに追いつける
リアルな目標なんです
実際に、J全体で言えば、過去5年間、年十数%で成長している。
「一方で欧州5大リーグの下2つ、イタリアのセリエAとフランスのリーグ・アンは4%前後の成長率。為替に関係なく言えば、10年後、Jリーグはその2つに追いつける。もはや、リアルなターゲットになっているのです」
その実現のためにも重要な一手が、26年夏のシーズン移行だ。8月開幕・6月閉幕という欧州と同じカレンダーになれば、選手や監督の行き来がスムーズになり、経営面のメリットも大きいはずだ。
「世界のサッカー市場において、監督と選手には約1兆2000万円の資金が投じられています。そのほとんどが7~8月に動く。今回、シーズン移行することで、日本もその市場により深く参入し、人の行き来も活発化することが期待できます。加えてクラブがより高額な移籍金を得られる可能性も上がります。昨今は多くの日本人選手が欧州5大リーグでプレーしていますが、日本には優れた選手が生まれる土壌がある。Jリーグクラブにアカデミーがあり、学校や町クラブもある。特に高校と大学の環境はすばらしい。多彩なルートから選手が育つのは強み。その努力をお金に結び付けることが大切なんです」
そのためにも、クラブ強化担当などのレベルアップは必須だ。
「私はよく『選手は世界基準になったが、フロントは成長途上』という話をしますが、GM(ゼネラルマネージャー)やSD(スポーツディレクター)含めてサッカー人材育成を進めていくことも今後の大きな課題です」
同時に普及も続けていく必要がある。25年のJリーグ総入場者数は1350万3210人で過去最高を記録。26年前半の明治安田百年構想リーグも集客に衰えは見られず、今後も伸びそうな勢いだ。この33年間でクラブ数が10から60に増え、全国各地で試合が行なわれるようになったことも大きいが、各クラブがJリーグⅠDなど顧客データをフル活用した集客策も奏功していると言っていい。
「年間1400万人という数字は名だたる巨大アミューズメント施設とほぼ同等の集客数。60のアトラクションで人々を楽しませる場になっているということです。実際に観戦に訪れる人が増えているのは喜ばしいことですが、大半は映像を通して視聴している。現在は有料配信のDAZNとの独占契約を結んでいますが、地方局でのライブやサッカー番組のテコ入れも進めています。それもあって、この4年間で地上波での露出は600%の伸びを示している。タッチポイントを増やし、Jリーグに関心を持ってもらえるように今後も努力をつづけていきます」
さらに、21年東京五輪直後に開幕したWEリーグのチェアも兼務する野々村さんとしては、女子サッカーの成長にも尽力していく構えだ。単体でのプロモーションを進める基盤がぜい弱な分、Jとコラボしながら一緒になって引き上げていければ理想的だ。
「いずれにせよ、新シーズン制に移行する26年は一つの節目。移行前には夏季キャンプもありますし、寒冷地に新たな賑わいが生まれる可能性もある。ACLとシーズンも重なるので、日本勢がより頂点に近づけると思っています。そうやって成長を続けることが肝心。現状維持は停滞と同じ。これからもアグレッシブにチャレンジしつづけていきます」
そう野々村さんは力を込めて、未来を見据えた。

〝第2のJリーグ元年〟2026年以降のJリーグはこう変わる!
93年の開幕時から2月開幕を取ってきたJリーグが26年夏から欧州基準の8月開幕へ移行。欧州主要リーグ、ACLとのシーズンが統一され、移籍環境やチーム編成の問題が解消される。気温が高くなる夏の試合が減り、選手の負担軽減や観戦環境の向上も期待される。

※Jリーグの2月を0とした際の割合比較
これまでのJリーグは夏場の走行距離や高強度走行距離が低下するという課題があったが、シーズン移行によって終盤に向けてパフォーマンスが徐々に上がることが期待される。

今夏から8月1週目に開幕し、6月1週に閉幕予定。ただし降雪時期はウインターブレークに突入するため、現行のカレンダーと大きくは変わらない。

百年構想リーグもヒートアップ
シーズン移行前の明治安田百年構想リーグは鹿島と神戸が優勝を懸けて激突。J2・J3の直接対決も盛り上がりを見せた。
図版資料・写真提供/J.LEAGUE
取材・文/元川悦子 撮影/タナカヨシトモ 編集/原口りう子
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かつてのサッカー日本代表があと一歩のところで届かなかったアメリカの地に、夢の祭典が再び帰ってきた。現在の代表チームが目指すのは、あくまで〝優勝〟。出場すらかなわなかった32年前を知る世代からすれば、考えられないほどの高い目標設定だ。
わずか30年でここまで代表チームが成長し、日本のサッカー文化自体も発展を遂げられたのはなぜか? その足跡をサッカー協会、Jリーグ、外国人監督、元日本代表のレジェンドたち、スポンサー企業など様々な視点で読み解く。
さらに『アオアシ』をはじめ、サッカー漫画がいかに日本サッカーの躍進に貢献したのか、元日本代表レジェンドたちにも取材もしました。
日本サッカー協会会長 宮本恒靖
日本サッカー協会名誉会長 田嶋幸三
Jリーグ チェアマン 野々村芳和
名古屋グランパス監督 ミハイロ・ペトロヴィッチ
ガンバ大阪 代表取締役社長 水谷尚人
元サッカー日本代表 戸田和幸
元サッカー日本代表 遠藤保仁
元サッカー日本代表 福西崇史
元サッカー日本代表 中村憲剛
『アオアシ』作者 小林有吾先生
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