『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2015年から2025年にかけて連載された人気サッカー漫画『アオアシ』。W杯によるサッカー熱の高まり合わせて改めて読み直している人も多いだろう。『アオアシ』はプロから見ても共感と驚きに満ちた作品だという。
作品づくりのための取材に協力するなど『アオアシ』に関わってきた中村憲剛さん。物語と共通する現役時代の体験や、コーチとして得られることなどを伺った。
※本稿は『DIME 8月号』(2026年6月16日発売)掲載の「【完全保存版】日本サッカー躍進の軌跡」から一部を抜粋・再編したものです

ボールを止めて蹴ることは憲剛さんも注力していたこと
「福田達也監督が初めて出会った時に感じ取る葦人の 〝俯瞰の目(イーグルアイ)〟と同じような能力が、僕に備わっているということを、現役時代に言われていたんです。『そんなところまで漫画として描くのか』と興味を持ち、さらに読み進めていくと、葦人がSB(サイドバック)にコンバートされる展開に衝撃を受けました」
憲剛さんが抱く想像の斜め上を行く展開を見せる『アオアシ』では〝ボールを止めて蹴る〞技術も深掘りして描かれる。憲剛さんが現役時代に持っていた同技術の高さは、誰もが認めるものだった。

「僕はボールをコントロールする技術を身に付けられたから、ピッチを俯瞰できるようになりました。つまり、葦人とは順序が逆なんです。葦人がなぜ最初から〝俯瞰の目〞があったのか? 後に描かれる理由に疑問を持ったことも『アオアシ』に惹かれた理由です」
作中では葦人がピッチ外でも積極的にチームメイトとコミュニケーションを取り、相手の意図を知ろうとするシーンが描かれている。それは憲剛さんが現役時代に日頃から気を配っていたことだった。
「相手が『何を考えていて、どうしたいか』みたいなことを聞いたうえで、自分はどんなプレーをすればいいかと考えることを、常にしていました。自分はパスを出す側で、FWは受ける側。互いのコミュニケーションがスムーズなら、得点チャンスも増える。葦人は当初、チームメイトの意図を読み取らずに好き勝手やって、黒田や朝利を怒らせましたよね。でもコミュニケーションを取ると、3人ですごい崩しができるようになっていく。自分のプレーの引き出しがどんどん増えていく感覚が葦人にもあったのかなと想像します」

ちなみに憲剛さんが「どうしたいのか手に取るようにわかった」のは大久保嘉人さんだったとか。『アオアシ』ではエスペリオン一筋で現役時代を過ごした司馬明考という選手が登場する。実は、川崎フロンターレ一筋で40歳まで現役を続けた憲剛さんをイメージして誕生したキャラクターなのだ。
「僕のようなキャラクターを作品内で描きたいと小林先生から直接言われたので、引退直前の経験をすべて話しました。そのことが司馬の描写にしっかり反映されています。例えば、高校1年生の葦人がトップの練習に参加したことで、司馬の目に光が甦る……というシーン。実は似た経験が自分にもあります。教え甲斐のある選手を育てるってすごく楽しいです。伸ばして競争相手になったら、俺がたたき潰すんだって(笑)。だからこそ、葦人が司馬の引退を翻意させるシーンはジーンと来ました」

コーチとして選手を指導する現在の立場になり、『アオアシ』を改めて読み返すと、現役時代とは異なった発見があるという。
「指導者として心がけているのは『選手に答えを言わない』こと。これは、福田達也監督だけではなく伊達望コーチも徹底していますよね。葦人に選択肢をいくつか提示し、正解を考えさせる。遠回りだけど、悪戦苦闘して考えてたどり着いた答えだからこそ、しっかり自分のものにできるんです。

『アオアシ』は現役サッカー選手や指導者はもちろん、チーム関係者や保護者を含めてサッカーに関わるすべての人がそれぞれの立場で楽しめて、自分たちの役割や立ち位置の整合性が確認できる。そういった意味でも、日本サッカーの育成や発展にすごく寄与している作品だと思います。だからこそ、葦人がプロになって活躍する続編をいつか読みたい! 小林先生にもお願いしているんですけどね」
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わずか30年でここまで代表チームが成長し、日本のサッカー文化自体も発展を遂げられたのはなぜか? その足跡をサッカー協会、Jリーグ、外国人監督、元日本代表のレジェンドたち、スポンサー企業など様々な視点で読み解く。
さらに『アオアシ』をはじめ、サッカー漫画がいかに日本サッカーの躍進に貢献したのか、元日本代表レジェンドたちにも取材もしました。
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取材・文/高山惠、撮影/藤岡雅樹、編集/田尻健二郎、web構成/峯亮佑
©小林有吾/小学館







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