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W杯開催中に読みたい!中村憲剛さん「『アオアシ』は日本サッカーの育成や発展にすごく寄与した漫画です」

2026.06.15

『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2015年から2025年にかけて連載された人気サッカー漫画『アオアシ』。W杯によるサッカー熱の高まり合わせて改めて読み直している人も多いだろう。『アオアシ』はプロから見ても共感と驚きに満ちた作品だという。

作品づくりのための取材に協力するなど『アオアシ』に関わってきた中村憲剛さん。物語と共通する現役時代の体験や、コーチとして得られることなどを伺った。

※本稿は『DIME 8月号』(2026年6月16日発売)掲載の「【完全保存版】日本サッカー躍進の軌跡」から一部を抜粋・再編したものです

中村憲剛さん/1980年生まれ、東京都出身。2003年に川崎フロンターレへ加入。司令塔として3度のJ1優勝に貢献してきた。日本代表として2010年南アフリカW杯へ出場。2026年より、川崎フロンターレのデベロップメントコーチに就任した。

ボールを止めて蹴ることは憲剛さんも注力していたこと

「福田達也監督が初めて出会った時に感じ取る葦人の 〝俯瞰の目(イーグルアイ)〟と同じような能力が、僕に備わっているということを、現役時代に言われていたんです。『そんなところまで漫画として描くのか』と興味を持ち、さらに読み進めていくと、葦人がSB(サイドバック)にコンバートされる展開に衝撃を受けました」

憲剛さんが抱く想像の斜め上を行く展開を見せる『アオアシ』では〝ボールを止めて蹴る〞技術も深掘りして描かれる。憲剛さんが現役時代に持っていた同技術の高さは、誰もが認めるものだった。

ボールをしっかり止めて蹴る目的は、自分が意図する位置に素早く蹴るため。Jクラブの下部組織では小学生の頃から叩き込まれるが、そのことを知らなかった葦人は必死に習得しようと励む。

「僕はボールをコントロールする技術を身に付けられたから、ピッチを俯瞰できるようになりました。つまり、葦人とは順序が逆なんです。葦人がなぜ最初から〝俯瞰の目〞があったのか? 後に描かれる理由に疑問を持ったことも『アオアシ』に惹かれた理由です」

作中では葦人がピッチ外でも積極的にチームメイトとコミュニケーションを取り、相手の意図を知ろうとするシーンが描かれている。それは憲剛さんが現役時代に日頃から気を配っていたことだった。

「相手が『何を考えていて、どうしたいか』みたいなことを聞いたうえで、自分はどんなプレーをすればいいかと考えることを、常にしていました。自分はパスを出す側で、FWは受ける側。互いのコミュニケーションがスムーズなら、得点チャンスも増える。葦人は当初、チームメイトの意図を読み取らずに好き勝手やって、黒田や朝利を怒らせましたよね。でもコミュニケーションを取ると、3人ですごい崩しができるようになっていく。自分のプレーの引き出しがどんどん増えていく感覚が葦人にもあったのかなと想像します」

当初は仲間の意図を考えられず、チームで孤立していた葦人。なぜ彼らは葦人に怒ったのか? その答えを見つけるため、ピッチ外で積極的にコミュニケーションを図り、自分の意図を伝えようとする。

ちなみに憲剛さんが「どうしたいのか手に取るようにわかった」のは大久保嘉人さんだったとか。『アオアシ』ではエスペリオン一筋で現役時代を過ごした司馬明考という選手が登場する。実は、川崎フロンターレ一筋で40歳まで現役を続けた憲剛さんをイメージして誕生したキャラクターなのだ。

「僕のようなキャラクターを作品内で描きたいと小林先生から直接言われたので、引退直前の経験をすべて話しました。そのことが司馬の描写にしっかり反映されています。例えば、高校1年生の葦人がトップの練習に参加したことで、司馬の目に光が甦る……というシーン。実は似た経験が自分にもあります。教え甲斐のある選手を育てるってすごく楽しいです。伸ばして競争相手になったら、俺がたたき潰すんだって(笑)。だからこそ、葦人が司馬の引退を翻意させるシーンはジーンと来ました」

練習生の葦人から「今が全盛期」「あなたのようになりたい」と伝えられ、司馬はもう1年の現役続行を決意する。「自分をイメージしたキャラクターだけに『憲剛さん、まだ現役をやれたと思うよ』って、小林先生に言われてるような気がしました」(憲剛さん)

コーチとして選手を指導する現在の立場になり、『アオアシ』を改めて読み返すと、現役時代とは異なった発見があるという。

「指導者として心がけているのは『選手に答えを言わない』こと。これは、福田達也監督だけではなく伊達望コーチも徹底していますよね。葦人に選択肢をいくつか提示し、正解を考えさせる。遠回りだけど、悪戦苦闘して考えてたどり着いた答えだからこそ、しっかり自分のものにできるんです。

味方へのコーチングがうまくいかず、相手に決定機を与える葦人。「なぜ失敗したと思う?」というコーチの問いかけに、葦人は自分のプレイを振り返り、考えることで失敗の要因を見つけ出す。

『アオアシ』は現役サッカー選手や指導者はもちろん、チーム関係者や保護者を含めてサッカーに関わるすべての人がそれぞれの立場で楽しめて、自分たちの役割や立ち位置の整合性が確認できる。そういった意味でも、日本サッカーの育成や発展にすごく寄与している作品だと思います。だからこそ、葦人がプロになって活躍する続編をいつか読みたい! 小林先生にもお願いしているんですけどね」

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取材・文/高山惠、撮影/藤岡雅樹、編集/田尻健二郎、web構成/峯亮佑

©小林有吾/小学館

Author
大学卒業後、『週刊ポスト』で週刊誌記者としてキャリアを始める。医療、芸能、政治、社会問題などを担当し現場取材を中心に経験を積む。2023年からは@DIMEで編集者兼ライターを務め、ビジネスからエンタメまで幅広く取材・執筆を行なう。取材・執筆した企画(一例)/「ポケモン超進化論」(「DIME 2023年9・10月合併号」)、「ガンプラ45年の軌跡」(「DIME 2025年9・10月合併号」)

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