『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2015年から2025年にかけて連載された人気サッカー漫画『アオアシ』。W杯によるサッカー熱の高まり合わせて改めて読み直している人も多いだろう。『アオアシ』はプロから見ても共感と驚きに満ちた作品だという。
『アオアシ』の主人公・葦人と同様に愛媛県で生まれ、その後、プロ選手として活躍した福西崇史さん。葦人に似た境遇を経験した立場から、作品に対する思いを話してもらった。
※本稿は『DIME 8月号』(2026年6月16日発売)掲載の「【完全保存版】日本サッカー躍進の軌跡」から一部を抜粋・再編したものです

葦人と同様に痛感したトップレベルの高さ

「昔からサッカー漫画には興味があって、最初は『どれどれ、ちょっとチェックしてみようか?』みたいな感じで『アオアシ』を手に取ったんです。読んでみたら、とにかく驚くことばかり。最初にビックリしたのは、自分がプロ入りする当時と同じような光景が描かれていたこと。僕は高校生まで四国の外に出たことがなかった人間で、ジュビロ磐田のチームがある浜松へ向かう新幹線の車窓から見た外の風景を今も鮮明に覚えています」
そう話す福西さんが加入した1995年のジュビロ磐田は、日本代表も率いたハンス・オフトが監督を務め、後にチームの司令塔として活躍することになる名波浩と、W杯で世界一になったブラジル代表の主将ドゥンガもチームの一員に。いわば〝ジュビロの黄金期前夜〞といえるチームだった。
「最初に配属されたサテライト(二軍)の選手でも別次元のようにサッカーがうまいし、その後に昇格したトップチーム(一軍)は本当に別世界のレベル! スピードひとつとっても、体を動かすのも考えるのも早い。練習についていけずに〝打ちのめされた〟ところまで、エスペリオンユースに入った時の葦人と一緒の境遇でしたね」

『アオアシ』では葦人がエスペリオンユースに入った後、FW(フォワード)からSB(サイドバック)にコンバートさせられる。福西さんも加入したその年にFWからボランチへのコンバートが決まり、一緒に組むのは〝闘将〞と恐れられたドゥンガ。福西さんには、かなり強烈な経験だっただろう。
「コンバートを打診された時、葦人のようにショックを受けることはなく、僕は二つ返事で『はい』と答えました。FWとしては下手で試合に出られていなかったし、コンバートを受け入れるしか生きる道はなかったから。そんな経緯で始めたボランチって、攻撃もするし、守備もする。しかも(ボールを)つながなきゃいけない。それに世界一のボランチ(=ドゥンガ)には怒られる(苦笑)。本当に毎日しんどくて。疲労のあまり、食事もなかなか取れませんでした」
コンバートされた理由を福西さんは引退後に知ったそうだ。
「サッカーを始める前に器械体操をしていたことから体が柔らかく、プレイングエリア(周囲にあるボールを扱える範囲)がほかの人に比べて広かったんです。そのことをチームから高く評価され、オフト監督が『福西はボランチが合う』と思ったと聞きました。ちなみに姿勢が良くて常に目線を高くできていたのも、器械体操のおかげです。プロって、サッカーが上手なだけでなく、技術以外の能力も必要かなと。それは僕にとってのプレイングエリアであり、技術は高くない葦人にとっての〝俯瞰の目〞なんだろうと思います」

福西さんはその後、絶対的なボランチとしてジュビロ磐田を支えた。当時の黄金期を語るうえで欠かせないのが、名波浩がゲームをコントロールすることで攻撃の全権を担う、通称「N-BOX」。『アオアシ』でも同戦術が登場し、エスペリオンユースを苦しめる。
「今の日本代表でも『N-BOX』に近いことをやっていますよ。僕らの時と異なるのは、SBも含めて組織化している点。現代サッカーはSBが重要なポジションのひとつになっていて『アオアシ』でもテーマにしているのは『なるほど!』と思いますね。そういった戦術面はもちろん、サッカー界全体を『アオアシ』は描いている。『作者はどれだけサッカーが好きなの!?』って感心させられますし、そんな作品を生んだ小林先生のすごさを、もっと知ってほしいです」

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さらに『アオアシ』をはじめ、サッカー漫画がいかに日本サッカーの躍進に貢献したのか、元日本代表レジェンドたちにも取材もしました。
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取材・文/高山惠、撮影/藤岡雅樹、編集/田尻健二郎、web構成/峯亮佑
©小林有吾/小学館







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