1986年に誕生した「がんばれゴエモン」シリーズが、今年で40周年を迎えた。
江戸情緒あふれる和風世界を舞台にしながら、巨大ロボットやSF要素、コミカルなギャグまでを自由自在に盛り込み、唯一無二のゲームシリーズとして愛され続けてきた本シリーズ。特にスーパーファミコン時代の『がんばれゴエモン〜ゆき姫救出絵巻〜』(以下、『ゆき姫救出絵巻』)や『がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス』(以下、『奇天烈将軍マッギネス』)、『がんばれゴエモン3 獅子重禄兵衛のからくり卍固め』(以下、『獅子重禄兵衛のからくり卍固め』)は、今なお多くのファンから支持を集めている。
そんな「がんばれゴエモン」シリーズの40周年を記念し、歴代作品を収録したコレクションタイトル『がんばれゴエモン大集合!』が7月2日に発売される。近年、レトロゲームや90年代カルチャーの再評価が進むなか、なぜ今あらためて『ゴエモン』なのか。そして、なぜ〝新作〟ではなく〝コレクション〟という形が選ばれたのだろうか。
今回は、40周年企画の狙いをはじめ、「がんばれゴエモン」シリーズならではの魅力や世界観、収録タイトルの選定基準について『がんばれゴエモン大集合!』のプロデューサーを務める上野亮作氏に話を伺った。

なぜ今『ゴエモン』なのか? 40周年で実現した復活プロジェクト
レトロゲームの名作として今なお高い人気を誇る「がんばれゴエモン」シリーズ。中でもスーパーファミコン版に初めて触れた時、ファミコン版からスーパーファミコン版へと移行したことで、グラフィックや演出だけではなく、遊びの幅も大きく広がった。筆者と同じように、スーパーファミコン版をきっかけにシリーズの魅力に引き込まれたファンも多いのではないだろうか。
今年はシリーズ40周年という節目の年を迎える。今回の『がんばれゴエモン大集合!』は、どのような経緯で企画されたのだろうか。
「『がんばれゴエモン』シリーズは、KONAMI作品の中でも移植や復刻の機会が比較的少ないタイトルでした。これまで多くの過去作品がさまざまなハードで遊べるようになってきた一方で、ゴエモンはファミコン版やスーパーファミコン版を含め、なかなかそうした機会に恵まれなかったんです。
社内でも以前から『ゴエモンを何とかしたいよね』という話は何度も出ていたのですが、なかなか実現には至りませんでした。
また、これまでは任天堂さんのバーチャルコンソールで遊ぶことができましたが、そのサービスも終了し、現行機でプレイできる環境がなくなってしまいました。
そうした状況もあり、『何とかして再び遊べるようにしたいな。自分も遊びたいな』という思いはずっと持ち続けていたんです。そんな中でシリーズ40周年という節目が見えてきて、〝今こそやるべきタイミングではないか〟と考え、今回の企画を立ち上げました」

今回のコレクションでは、なんと13タイトルのゲームが入っており、初代のファミコン版『がんばれゴエモン! からくり道中』をはじめとして、人気を博した『ゆき姫救出絵巻』や『奇天烈将軍マッギネス』、『獅子重禄兵衛のからくり卍固め』、ゲームボーイ版やゲームボーイカラー版の作品の収録など実に豪華で幅広いラインナップだ。
「13本収録と聞くと多く感じるかもしれませんが、実は最初から本数を決めていたわけではありません。『あれも入れたい』『これも入れたい』と選んでいった結果、気が付けば13本になっていたんです。
コレクション作品は6~8本程度の収録が一般的ですが、『じゃあどれか削る?』となると『いや、それはちょっと……』となってしまって(笑)。結果として13本収録という、かなりボリュームのある内容になりました」
時代を超えて愛される『ゴエモン』らしさとは
30代後半~40代以降にとっては、タイトル名を聞くだけで懐かしさが込み上げてくる「がんばれゴエモン」シリーズ。しかし、ひと口にゴエモン世代といっても、思い出の作品は意外と世代によって異なるのが面白いところだ。

「今回収録している作品の中で最も古いのが、1986年のファミコン版『がんばれゴエモン! からくり道中』で、最後が2000年のゲームボーイカラー版『がんばれゴエモン 星空士ダイナマイッツあらわる!!』なんです。
その15年間というのは長いようでいて短くもあるのですが、今回反応してくださっているユーザーさんを見ていると、どの作品に思い入れがあるかが世代によって本当に違うんですよね。
いただいたコメントの中には、『自分は持っていなかったけれど兄弟が遊んでいた』『友達の家で2人プレイをしていた』といった思い出話もたくさんあって。
そうした声を見ていると、実際に販売した本数以上に、多くの方が何らかの形でゴエモンに触れてくださっていたんだなと感じますし、それだけたくさんの思い出の中に残っているシリーズだと改めて実感しています」


13本を収録した今回のコレクションには、初めて触れるタイトルも少なくないだろう。
そのなかでも、スーパーファミコン版『がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~』は、多くのファンにとって特別な思い出を持つ作品ではないだろうか。
改めてプレイしてみると、初のスーパーファミコン作品とは思えないほど表現が豊かで、キャラクターの細かな表情や背景の演出など、随所に新たな発見がある。
「当時はまだ現在のように開発の分業化が進んでおらず、プログラマー、デザイナー、プランナーといった役割が明確に分かれていたわけではありませんでした。プログラマーもデザイナーも関係なくアイデアを出し合い、みんなで作品を作り上げていくような雰囲気だったんです。
デザイナーだからデザインだけを担当するのではなく、『こんなボスキャラクターはどうか』『こういう演出は面白いんじゃないか』と、それぞれが自由に意見を出していました。そして、そのアイデアをどうゲームの中で実現するかをみんなで考えていたんです。
さらに、開発チームには『どうやったらプレイヤーを笑わせられるか』という大阪らしいノリもあって、そうした発想を積み重ねながら作り上げていったのが、ゴエモンシリーズだったと思います」



また、『がんばれゴエモン』の魅力を語るうえで欠かせないのが、江戸情緒あふれる世界に近代文明やSF要素を融合させた独特の世界観だ。
コミカルで親しみやすい雰囲気のなかに、シリーズならではの自由な発想が詰め込まれており、初めて遊ぶ人でも自然とその世界に引き込まれる。一人でも、みんなでも楽しめる。その間口の広さも、本シリーズが長く愛されてきた理由のひとつだろう。
こうした〝ゴエモンらしさ〟はどのように生まれ、育まれていったのだろうか。
「使い勝手やデザインについては、「格好よさ」とか「スタイリッシュさ」を追求するというよりも、あくまで“子ども向けであること”を大切にしていたのではないかと思います。
どこまでも子どもが好きなギャグを取り入れる姿勢を貫きながら、その魅力を損なわないよう工夫していたのではないでしょうか。そういう部分を守り続けながら、常に子どもたちが楽しめるものづくりを目指していたのだと感じます。
もし途中でリアルな方向へ寄っていたら、『がんばれゴエモン』は今とはまったく違うシリーズになっていたと思います。それでも最後まで変わらなかったのは、きっと子どもたちを楽しませたいという思いですね。子どもたちが見て面白いと感じるもの、思わず笑ってしまうものを追い続けていたように感じます。
そうした中で、キャラクターの方向性も少しずつ固まっていったんでしょうね。『マッギネス』や『からくり卍固め』の頃には、いわゆる〝ゴエモンらしさ〟がかなり形になっていたと思います。また、『コミックボンボン』で連載されていた漫画版から受けた影響も大きかったのかな。
当時の開発チームのみなさんでアイデアを出し合いながら、『どうすれば面白くなるか』『どうすれば笑ってもらえるか』を考え続けて、その積み重ねが、〝ゴエモンらしさ〟につながっていったのだと思います」

『とらのまき』からサポート機能まで、コレクションならではの魅力
これまでの「がんばれゴエモン」シリーズは、ゲーム本編はもちろん、BGMや演出の細部に至るまで遊び心にあふれていた。そんな当時の魅力を伝えるコンテンツとして今回用意されたのが『とらのまき』だ。『とらのまき』では、収録された13タイトルの取扱説明書を閲覧でき、ゲームを遊ぶ前からワクワクさせてくれた当時ならではの雰囲気や、ゴエモンらしいユーモアあふれる世界観を味わうことができる。
「今回収録している『とらのまき』については、かなり力を入れました。
日本地図の旧国名をゴエモンで覚えたという方もいると思いますし、当時を振り返りながら『懐かしいな』と楽しんでもらえたら嬉しいですね。
また、当時はユーザーのみなさんから敵キャラクターのアイデアを募集していて、実際にゲームへ採用していたこともあったんです。元の冊子には採用された方のお名前も掲載されていました。
今回の収録にあたっては、個人情報への配慮からお名前にはマスク処理を施していますが、そうした当時の企画や空気感も含めて伝えられるようにこだわりました。
資料として見るだけではなく、『こんなこともやっていたんだ』と発見を楽しみながら読んでもらえたら嬉しいです」


また、新たにゴエモンに触れる世代に向けて、プレイ面でもさまざまな工夫が施されており、遊びやすさを重視したサポート機能からは、幅広いユーザーに楽しんでもらいたいという思いが込められている。
「収録作品自体はゲームとしてすでに完成されていると思っています。そのため、内容そのものに手を加えるというよりは、現代でも遊びやすい環境を整えることを重視しました。
当時基準の難易度なので、今遊ぶと「かなり難しいな」と感じる部分もあります。そこで、クイックセーブ・ロードや巻き戻し機能といった、近年のレトロゲームコレクションでは定番となっているサポート機能を搭載しています。
また、当時はボタンをひたすら連打すること自体がゲーム性の一部でもありましたが、今の時代に同じことを求めるのは少し厳しいですよね。そこで連射サポート機能も用意し、当時のゲームバランスや手触りは残しながらも、より快適に遊べるよう工夫しました。
どちらかというと、新しいユーザーに向けて大きく作り変えるというよりは、当時遊んでいた人たちにもう一度気軽に楽しんでもらいたかったんです。『昔みたいに難しいゲームをまた頑張ってクリアしてください』というよりは、『サポート機能も使いながら、久しぶりにゆるく楽しんでください』という気持ちですね」
シリーズ40周年という節目に実現した『がんばれゴエモン大集合!』。長年シリーズを応援してきたファンにとっても待望の復活と言えるだろう。最後に、本作へ込めた思いを語ってもらった。
「まずは、本当にお待たせしました、という気持ちが大きいですね。
これまで『がんばれゴエモン』シリーズを遊ぼうと思うと、当時のスーパーファミコン本体やソフトを用意しなければならない状況が続いていました。しかし今回、ようやく現行の環境で気軽に遊べる形で復活させることができました。
当時を知る方には懐かしさを感じながら遊んでいただきたいですし、今回はサポート機能も搭載しているので、初めて触れる方でも遊びやすくなっています。
ぜひ当時の思い出を振り返りながら楽しんでいただきたいですし、できればお子さんやご家族とも一緒に遊んでもらえたら嬉しいですね」
長年「がんばれゴエモン」が愛され続けてきた理由は、常に子どもたちを楽しませたいという開発チームの思いと、枠にとらわれない自由な発想が作品の随所に息づいていたからだろう。だからこそ、世代を超えて多くの人の記憶に残り続けてきた。『がんばれゴエモン大集合!』は、そんな〝ゴエモンらしさ〟を改めて味わえる一作となりそうだ。
取材・文/Tajimax




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