六本木ヒルズ観察中に、「新しく六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業(以下、六本木5丁目プロジェクト)の計画が進行中」と聞いた。六本木ヒルズに隣接する約10ヘクタールの土地に、緑地帯やショッピングエリア、地上約70階建ての巨大ビルが建つ、東京最大級の再開発となるらしい。今回は六本木五丁目西地区市街地再開発準備組合の事業協力者である森ビルと住友不動産が作成した「都市再生特別地区(六本木五丁目西地区)都市計画(素案)」(注1)を基に、六本木5丁目プロジェクトの概要を紹介しよう。
都市開発としては日本最大級の規模に
再開発の正式名称は「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」、通称「六本木5丁目プロジェクト」である。森ビルと住友不動産が共同で参画し、事業面積が約10ヘクタール(約10万平方メートル)、総延床面積が約100万平方メートルと、日本国内の再開発事業としては過去最大級のビックプロジェクト。
六本木5丁目プロジェクトの概要を紹介する前に、森ビルの街づくりの基本概念を抑えておこう。森ビルは創業以来、「都市を創り、都市を育む」の理念のもと、都市と向き合ってきた。理想とするのは、多様な都市機能が高度に複合したコンパクトシティで、「住む・働く・遊ぶ・学ぶ・憩う」のすべてが徒歩圏内に集約された都市をつくれば、多様な人を集める「磁力」となり、その集積のエネルギーがさらなる集積を呼んでいくと考えている。
ヴァーティカル・ガーデン・シティ(立体緑園都市)という考え方
今回の六本木5丁目プロジェクトのように、都心の真ん中でコンパクトシティを実現するためには、大きな街区を作り出す必要がある。森ビルはそれを実現する理想の都市モデルとして「ヴァーティカル・ガーデン・シティ(立体緑園都市)」という考え方を掲げている。細分化された敷地を取りまとめて大きな敷地を生み出し、空と地下の空間を活用し、建物を垂直に積み上げることで、足元に緑豊かなオープンスペースを創出する、というものだ。
ヴァーティカル・ガーデン・シティによって、「住む・働く・遊ぶ・学ぶ・憩う」等、多様な都市機能が集約した、磁力ある都市を実現することができる。さらに、都市は創るだけではなく、時間をかけて育んでいくことが大切で、森ビルではディベロップメントからタウンマネジメントまで、一貫して担える組織とノウハウを蓄えて、都市のコミュニティを育んできた。
「ビルを建てるだけでは街にはなりません。都市の力とは、そこに集う人々の力です。『アークヒルズ』『六本木ヒルズ』『虎ノ門ヒルズ』『麻布台ヒルズ』など、これまでのヒルズもそうであったように、森ビルは手塩にかけてコミュニティを育むことで、街の磁力を継続的に高めていきます」と森ビル タウンマネジメント事業部 運営企画部 六本木ヒルズ運営グループ 課長の村岡真哉さんは都市構想の中心となる概念について教えてくれた。
さらに森ビルが街づくりを行う上で一貫して大切にしている考え方について、村岡さんはわかりやすく解説してくれた。「六本木ヒルズはじめ、ヒルズは単なる施設ではなく、そこに暮らす人もいれば、働く人もいる、1つの“街”だと我々は考えています」
「物理的に施設を作って終わりではなく、むしろそこからいかに街として育てていくのかを重視しています。 例えば、六本木ヒルズでは、開発に伴い、開発エリアの複数の町会を統合した六本木ヒルズ自治会を新たに立ち上げていますが、この六本木ヒルズ自治会および森ビルの主催で、例年夏に盆踊りを開催しています」
「この盆踊りは、来街者の方々に楽しんでいただくのはもちろん、開発によりこれまでの町会の方々と、六本木ヒルズ自治会でのコミュニケーションが途絶えることのないよう、街の人々の交流の場という目的でも開催されています。文化都心として、様々な新しい取り組みを続ける一方で、古くからの街の絆も大切に街づくりを進めています」。
六本木ヒルズの成り立ちと特徴
もともと六本木ヒルズは、テレビ朝日の本社建替えをきっかけに、その周辺を含む約11ha(六本木ヒルズゲートタワー及びノースタワーを除く)の区域の再開発プロジェクトとしてスタートした。当時の開発区域は、テレビ朝日と住宅エリアに15m 以上の高低差があり、住宅地内の道路は幅員3m 前後しかなく、消防車が入れないなど、インフラや防災面での課題を抱えていた。
六本木ヒルズはそれらインフラの整備を含め、オフィス・住宅・商業施設・文化施設・ホテル・シネマコンプレックス・放送センターなど「住む、働く、遊ぶ、憩う、学ぶ、創る」 といった多様な機能が複合した「コンパクトシティ」として開発された。

コンセプトは「文化都心」で、「経済だけで文化がない都市では、世界の人々を魅了できない」との強い考えから、その象徴として、街の中心に位置する森タワーの最上層に美術館やギャラリー、会員制クラブなどを集積した文化拠点を設けている。また、映画館や放送センターなど多様な文化施設に加え、暮らしや仕事、買い物の合間に気軽に世界のアートに触れられるよう、街中にはパブリックアートやストリートファニチャーが点在している。開業から20 年以上経た今でも一年を通じて数多くの文化イベントを開催し、常に新しい何かが起きている文化の発信基地となっている。
六本木5丁目プロジェクトの4つの注目ポイント
当プロジェクトの内容については、まだほとんど公式発表はされていないが、前出の「都市再生特別地区(六本木五丁目西地区)都市計画(素案)」を手掛かりに、プロジェクトのポイントを紐解いた。
1)歩きやすい、交通便利な街に
新しい六本木5丁目プロジェクトの都市整備では、特に六本木駅周辺の交通施設等の都市基盤の整備・充実を目指して、交通結節点としての機能を向上・強化させることを目指している。確かに、六本木はいつ行っても人が多く、歩きづらい印象がある。そのため、快適で安全な歩行者環境・ネットワークの整備を具体的な課題にあげている。
地下鉄駅接続通路や交通結節広場を整備し、さらに立体道路制度を活用し、交通結節点の創出と道路ネットワーク・歩行者ネットワークを併せて実現させる計画である。
2)人々が自由に集える広場の創設
六本木5丁目プロジェクトの注目点のひとつが「駅まち広場」の整備である。六本木駅とまち、バスやタクシーの乗降場を集約した交通結節広場をつなぎ、駅前の賑わいを創出する広場で、広さは約4,600m²と広大なオープンスペースとした。地下鉄六本木駅からの移動と、外苑東通りなどにもつながる、3層にわたった開放性の高いものになっている。
3)緑豊かな森の誕生
森ビルがこれまでのヒルズでも広大な緑地を創出してきたように、六本木5丁目プロジェクトにも新たに「都心の森」が誕生する。広大な敷地を一体的に緑で覆う立体的な屋上庭園(約16,000m²)が整備され、国際文化会館の庭園(旧岩崎邸庭園)に続く、まるで森のような緑豊かな場所が出現する。
他にも東西貫通通路は木々で囲まれた緑豊かな歩行者空間を創設する。これらの森や広場は都市の防災機能も備えており、多くの帰宅困難者を受け入れるための場所としても利用できる。
災害面では、六本木交差点に面する部分に大規模な駅まち広場など合計約5,000m²を整備することにより、帰宅困難者の一時滞在施設として活用。
災害時、駅まち広場に設置されるサイネージ等を活用し、帰宅困難者に対して災害情報等を発信している。
また安定的なエネルギー供給を行うため、コジェネレーションシステム(CGS)と非常用発電機を設置したほか、非常用発電機は中圧ガス・オイルによるデュアルフューエル型を設置(オイルによる場合は、72時間対応)している。
4)MICE需要に対応した進化
さらに日本ではまだ十分ではないMICE(Meeting:会議・研修、Incentive Travel:報奨・研修旅行、Convention:国際会議・学会、ExhibitionまたはEvent:展示会・見本市・イベント)に対応していく。
都心型ビジネスイベンツの競争力を強化させるため、イベントホール・カンファレンス施設(11,000m²)を新設するほか、魅力あるアフターコンベンションのための都市観光施設・エンターテイメント施設(16,000m²)や、国際水準の宿泊滞在施設(48,000m²)も整備していく。
すでに活用されている国際文化会館等の既存施設と合わせて、六本木地域全体で複合MICE拠点を形成していく計画である。
六本木の街が新しく生まれ変わる。歩きやすく、自然豊かで、仲間と気軽に集えて、ビジネスに欠かせない街を、六本木5丁目プロジェクトが提案してくれる。完成が今から待ち遠しい。
文/柿川鮎子
注1)六本木5丁目プロジェクトに関する文中のイラストとそれに関連する写真は「都市再生特別地区(六本木五丁目西地区)都市計画(素案)」から出典
※計画内容は今後の詳細検討及び関係機関協議により変更となる場合があります







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